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ロシアンルーレット

 組織について報告した後は、和やかにお昼。

 アホな会話をしつつたこ焼きを食べて、だーらだーら。

 そうしてお腹も満たされてくると、馬鹿な事を考える奴も出てくるわけで。


「というわけで、ロシアンたこ焼きをやろう」


「どういうわけだか知らんが、その意見には賛成だ」


 説明しよう。露西暗胼胝夜気……。

 中国なんたら初期に生まれた必殺の拳法である。

 ……考えるの面倒だから民明書房はいいや。


「じゃあ、さっそくヤバイものを入れようぜ!」


「むぅ? 勇者、ロシアンたこ焼きとはなんなのだ?」


「たこ焼きの中に、カラシを山ほど入れたりして、食べた瞬間に転げ回るようなものに仕立て上げて、それを喰っちゃった奴が転げ回るのを見て楽しむゲームだ」


「なるほど! では、我が入れてやろう!」


 あれよあれよという間に、5個焼かれていたたこ焼きの中に、魔王が何か怪しげな丸薬を放り込む。

 それを焼き上げた後、トモエさんがテーブルの下でシャッフルして、どれがどれだか分からなくする。

 そして、みんなでいっせーのーでで食べるわけだ。


「よし……いっせーのーで!」


 喰う。……何ともない。よかった。


 さて、じゃあ誰が当たったんだ? と思って周囲を見渡すと、血を吐いて転げ回っている魔王が居た。


「ま、魔王ー! お前一体何を入れたんだ!」


「がはっ……ごぼぼ……バ、バジリスクの毒を……」


「馬鹿かお前は! ガチで殺しに来てんじゃねーよ! オレとタカネ以外が食ったらどうなると思ってんだ!」


 トモエさんはまだしも、カーチャンは一応一般人なんだぞ!


「遅効性、だから……わ、我が解毒すればよいだろうと、思って……」


「それで自分で食ってりゃ世話ねーよ! バーカバーカ!」


 遅効性ってことは大丈夫なわけだ。そうと分かれば安心して大爆笑してやれる。

 タカネと揃って魔王を馬鹿にしてやるが、なぜか反応がない。

 どうしたのかと思って抱き上げてみると……。


「そ、そんな……嘘だろ……! 死んでる……!」


 脈拍無し。呼吸無し。瞳孔もバッチリ開いてる。でも、気配で探る感じだとまだ生きてるような……。

 あ、仮死状態か、これ。変なところで人間っぽい奴だな……。


「きれいな顔してるだろ。ウソみたいだろ。死んでるんだぜ。これ」


「どう見ても苦悶の表情なんですけど」


 どこが綺麗な顔なんだよ。

 いや、魔王が美人さんなのは間違いないんだが、これが綺麗な表情かと言われると間違いなく違う。


「まぁ、仮死状態ならしばらく大丈夫だろ。どうせ毒の周りを遅くするための手段だろうし」


 魔王の判断は間違いではない。というより、かなり頭のいい手段かもしれない。他の人の手を借りる必要はあるが、ほぼ助かるのだし。

 もしも毒を呑んだりするようなことがあったら魔王の真似をするとしよう。


「じゃ、ロシアンたこ焼き続けるか」


「待て。これは蘇生しなくていいのか?」


「大丈夫大丈夫。どうせ死んでも祈れば生き返るから」


「……コイツは本当に人間なのか? 寝てる時に翼やら角が生えていておかしいなとは思っていたのだが」


「カーチャン、今更そこに突っ込むの?」


 もしかしてカーチャンも天然入ってたりすんの?

 あと魔王、ちゃんと翼とか角は隠しとけよ。そもそもそんなのあったのかよ、初めて知ったわ。


「さて、じゃあロシアンたこ焼きを再開するわけだけど……毒物入れんなよ」


「じゃあ、このデビルソースを」


「それ口内が破壊されるレベルの辛味調味料ですね?」


 誰が食っても偉い事になるので却下する。


「トモエさんはなにかありますか?」


「うーん……ちょっとないかなぁ」


「ですよね。カーチャンは?」


「調味料くらいしかないが……貴様ら、その程度のもので効くのか?」


「2000万スコヴィルくらいなら余裕で無効化出来る」


「純粋カプサイシン結晶でも届くかどうかの値だな……我が息子ながら人外だな」


「まーね」


 結局、混入してもオレ達が平気じゃ不公平だという事でロシアンたこ焼きは魔王が仮死状態に陥っただけで終わった。

 ちなみに魔王は流水に晒してたら2時間で目を覚ました。






 平日の穏やかな昼下がりの中、オレたちはリビングに集まったまま会話する事も無くゆったりとした時間を楽しんでいた。

 とても贅沢な時間の使い方だと思う。

 何をするにしてもあくせくしがちなエコノミック・アニマルな日本人としてはちょっと落ち着かないが。


「ま、こんな昼下がりもいいやな。人生の休み時間って奴よ」


「タカヤはその休み時間の割合めっちゃ多くね? 1時間目と2時間目の授業受けたらあと全部休み時間的な」


「カーチャン……タカネがオレをいじめるんだ……」


「タカネ、家事手伝いのお前もタカヤと大して変わらん」


 かばってくれたんだか、タカネにかこつけてけなされたんだかよく分かんねえ。


「ふえーん、トモエさん、カーチャンがあたしをいじめるんだよー」


「よしよし。でもまぁ、僕もタカネちゃんも仕事してるわけじゃないから言われても仕方ないよね」


「はい……」


 仕事と言えば、トモエさんって向こうの喫茶店どうしたんだろ……?

 妹のマヤさんに託してきてあるんだろうか。まぁ、どうでもいいけど。


「さて、腹も一杯で眠くなってきたし、昼寝でもするかな」


「あたしもお昼寝しよーかな」


「猫は縁側で丸くなるもんだしな」


 タカネの耳をみょーんみょーんと引っ張りつつ言う。これまるっきり猫ですわ。


「あーうー。耳引っ張んのやめれー」


「猫耳気持ちええんじゃー」


 みんなが触りたがる気持ちがよく分かる。気持ちええー。

 そんな風にじゃれあってるうちに、いつの間にやら眠くなり、緩やかな午睡の中に落ちて行った。

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