とっくにご存知なんだろ?
社を出て、軽く背を伸ばす。
肩が凝ったっていうわけじゃないが、神様の発してる力はかなりのものだ。
精神的な重圧が多少なりともある。わざわざこっちが結界張るって言うのもなんだしな。
「ふぅ。んじゃ、ぼちぼち帰りますか」
神社の門を通ったところで、スーツ姿の外人のオッサンが居る事に気付いた。
観光だろうか。三大稲荷なんて自称してるが、さほど有名な社ってわけでもないのに、なんでここに?
そう思いつつも、通り過ぎようとしたところで、そのオッサンに声をかけられた。
「安久都高音くん……だね?」
「人違いです」
それだけ言って通り過ぎて……。
「いやいや待って待って。話だけでも聞いてくれないか。カッコつけようとして失敗した事は認めるから話だけは聞いてくれないかたのむ。昼ごはんを奢るから、それを食べる間だけでも聞いてくれないか」
「なんであんたそんなに必死なんだよ……」
わけわかんねえ。なんなんだこのオッサン。
「私はジョンソン・ウェーバー。とある組織の者でね。それで……君は何者か聞いてもいいかな?」
「……とっくにご存知なんだろ?」
「えっ。いや、知らないから聞いてるんだが」
「オレは異世界から就労体制を倒す為にやってきたニート……穏やかな心を持ちながら不可抗力的な休学によって目覚めた伝説の戦士……超ニート、一文字孝也だ!」
「よ、よく分からないが、君は一文字孝也なのか? しかし、調べた限りでは一文字孝也はハイスクールに通う青年のはずだが……」
「こまけぇこたぁいいんです。で、あんたは何者?」
「それについてはどこかのレストランか何かで話し合わないかな。ここらへんには詳しいかな?」
「詳しいから断言するけど、半径一キロ以内にレストランなんかないよ」
「そ、そうかね」
居酒屋とかならあるんだけどね。あと、安っぽいファミレスとか。
でも、このオッサンが考えてるのはどうもオサレなレストラン的なアレっぽいし。
あ、待てよ? 確か、ちょっと高いがレストランはあった気がするな……でもあそこいい噂聞かないし……まぁいいや。
「今思い出したけど、レストランはあったと思う。そこ行こうか」
「ああ、そうかね。では、案内してもらえるかな」
「はいよ」
というわけで、そのオッサンを先導して記憶を頼りに道をしばらく歩いていくと、確かに話に聞いていた通りのレストランがあった。
主要な道路から外れた裏道かつ半地下にあるレストランだ。
営業時間を見てみると11時からのようで、特に問題はないようだ。
さっそく入ってみると、ガラの悪い兄ちゃんがテーブルを拭いていた。
そして面食らったような顔をするが、すぐに営業スマイルに変えていらっしゃいませと言ってくる。
ちゃちゃっと席に通され、さっそくメニューを開いてみる。
うわ、たけぇ。なんでオレンジジュースが800円もするんだよ。
「好きなものを頼みたまえ。私が奢る」
「じゃあ、オレンジジュースとBLTサンド」
あんまり食べたら腹いっぱいになるし。わざわざカーチャンが昼飯作ってくれるならちゃんと食べたいしな。
「私はアールグレイを頼むよ。ああ、ミルクもたのむ」
店員の兄ちゃんにそれだけを告げて、立ち去って行ったのを確認するとオッサンがさっそく口を開く。
「単刀直入に言おう。私たちは国際的な対霊組織だ。ICPOの裏側の顔とでも言おうか」
スゲエ……! いきなり香ばしい単語が出て来た……!
「私たちは常に優秀な霊能力者を求めている。数日前の夜半、この町を尋常ではない速度で駆け抜けていたのは君だろう?」
「あー……」
夜だから誰にも見られてないと思ったのに……。
なんでバレたんだろ。
「なぜバレたのか、という顔をしているね。私たちは有力な寺社仏閣には注意を払っていてね。そこに突如として現れた君達には監視の目を向けざるを得なかったのだよ」
「なるほど」
確かに夜中に神社に来て神様とペラペラしゃべってたら不審に思われるかー……。
しかし、ICPOの裏の顔ねぇ……? この世界って魔法使いとかだけじゃなく、そんなのまであったんだな。
「そして監視する中で、君達が尋常ではない力を持っている事を知った。それ故に、こうして勧誘に来たのだよ」
「ふーん……ちなみに、組織の目的ってなに?」
「至極単純だよ。この世の陰に隠れる妖怪たちの撲滅だ。無論、無害な妖怪にまで手を出そうとはしないがね。例えば、君が接触していたタヌキの妖怪などは退治しないように」
「なるほど」
「しかし、そう言った無害な妖怪の他に強力かつ邪悪な妖怪が存在するのも事実だ。そう言った妖怪を退治するためには君のような優れた戦闘力を持ったエージェントが必須なのだよ」
「ふーん……」
と、そこまで話した所で新たな来店を告げるベルの音。
ふと目を向けてみれば、スーツ姿の男性が二人。昼飯を食いに来たって所か?
その男性たちに気付いた様子もなくオッサンは言葉をつづける。
「君の素質。捨てるには惜しい。君は大変に魅力的な存在なのだよ。分かってもらえるだろうか」
「うーん……って言ってもねぇ?」
「無論、報酬は出すよ。夜半に呼び出すような事もあるだろう。そう言った際には特別手当をつけてもいい」
「へー。遠方に出向く事とかは?」
「あるだろうね。そう言った際の交通費や宿泊費も支給するさ」
結構太っ腹だなぁと思いつつ、先に運ばれてきていたオレンジジュースをすする。
「もちろん、君の妹さんも手厚く迎えよう。私たちは仕事をこなしてくれる限りは優しいよ」
「なるほどねー」
「それで、返答を聞いてもいいかな?」
「具体的な報酬について聞いてない」
「ああ、そうだね。まぁ、少なくとも月収100万は保障しようじゃないか。活動次第ではもっと増えるさ。クライアントの懐は潤沢なのだからね」
国際組織なわけだしクライアントってのは国そのものかねぇ?
「もしも受けてくれるのならば、この携帯電話を受け取ってくれたまえ。この携帯電話は連絡用だ。GPS機能で君が行方不明になった時に見つけ出す用途もある。肌身離さず持っていてくれたまえ」
「ふむふむ」
「ああ、それと、ラブコールはいつかかってくるか分からないのだからね。電池など切らさぬように」
「あーはいはい」
さて、どうしたもんかなと思ったところで店内の隅でコーヒーを飲んでいたスーツ姿の男性たちがこちらにやってきた。
なんだ? と思ったのもつかの間、その男性の一人が懐に手を突っ込み、手帳を取り出した。
「すみません、私はこう言うものですが……少々お話を聞かせてもらえますか?」
それは警察手帳だった。
「先ほど、お金のやり取りについての話が聞こえたのですが、こちらのお嬢さんとは……親子ではないですよね?」
「え、ああ、そうだが?」
「詳しく聞きたいのですが、親の同意は得てこちらに連れてこられたのですか?」
「いや、親の同意は無いと思うが」
「ふむ……申し訳ありませんが、署で詳しい話を聞かせてもらっても? 親の管理下の無い場所に13歳未満の子供を連れ込む事は誘拐罪が適用される場合もありまして」
「なっ!? ち、違う! 彼は18歳だ!」
「はいはい、みんなそう言うんですよ。君も一緒に来てもらえるかな、ちょっとお話を聞かせてもら……居ない!?」
「あっ! 逃げたな! せめて誤解を解いていってくれぇぇぇ!」
前話で言い忘れた。50話達成です! しかし、前話で言い忘れていたために、これで51話!
ま、まぁ、プロローグ入れなけりゃこれで50話ですし……。
なにはともあれ、更新速度は落ちてしまっていますが、可能な限り早く更新は行っていきます。
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