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言葉の暴力

 心頭滅却すれば火もまた涼しの精神でゲームを続行。

 そうして、日も暮れ始めた頃、オレは精も魂も尽き果てんばかりだった。


「だが、見渡してみるがいい。この死せる大地に累々と横たわる屍の山を。河の如く流れたる血潮を」


「一層気分が萎えること言うのやめてください」


「ククク……それはすまなかったな」


 うわぁ、コイツ凄いあくどい顔してるよー。


「しかし、横たわる数々の屍の山を見れば、沸々と燃え上がってくるものがあるだろう」


「無いよそんなもん」


「湧き上がってくる怒りの類などはないのか?」


「まぁ、怒りとは湧いてくるかもだけど」


 なんかローザの言ってるのは方向性が違う気がするよ。


「お前あれだよね。敵軍1万で、自軍100の状態でむしろ燃え上がってくるタイプだろ」


「その状況はなかなか素敵だな。面白いシミュレーションだ」


 ほらね。


「まあ、とりあえず今日はこれで帰るわ」


「晩飯を馳走になっていったらどうだ?」


「いや、いいよ。メニューによっちゃ、お前エイラちゃんの分オレに食わすだろ」


「一食抜いたところで死ぬわけでもないのだから問題はない」


 そう言うんだったら自分の分回せよ。妹の分取り上げんなよ。

 とはいえ、コイツの非道さは言ったところで治るもんではないので言わない。言っても意味がない。


「んじゃな、また明日遊びに来るわ」


「好きにしろ」


 ローザの家を出て、さっさと自宅へと戻る。

 そして、台所へと入ると、そこでは夕飯の支度をしているカーチャンの姿。

 レンも並び立って手伝いをしている。トモエさんも。


 いいなぁ……こういう光景。


「いいだろ、タカネ。あそこで料理作ってんのオレの嫁さんだぜ?」


 オレが来る前から二人の姿を眺めていたタカネに言ってみる。

 ちなみにタカネは台所出入り禁止は解かれてるが、料理禁止は未だにそのままだ。


「いいでしょ、タカヤ。あそこで料理作ってんの、あたしの旦那様だぜ?」


 負けじと返された。何かいい返しは、と思って適当に言ってみる。


「いいだろ、タカネ。あそこで料理作ってんのオレのカーチャンだぜ?」


「かく言う私のカーチャンもあそこで料理を作っていてね」


「まさか……君はオレの娘なのか……?」


「お父さん……なの?」


 芝居が鬱陶しいから他所に行けとカーチャンに怒られました。

 とりあえず、晩飯抜きになるのは嫌なのでリビングに移動。


「ところで疑問なんだが、オレの事についてはなんか説明受けてたの?」


「んー? ああ、タカヤが若返ってるってこと? それについては全然聞いてないけど」


「じゃあどうやってオレだって見分けたん?」


「容姿と匂い。あたしはタカヤが分身する以前の記憶共有してんだよ?」


「そーいえばそうだったな」


 だからと言って若返ったってことにすぐ結び付けられるもんではないと思うが……。

 いや、タカネも若返ってるわけだし、自分の立場になれば簡単に分かるんだろうか?


「改めて考えてみると……お前のことってよく分かんねえよなぁ」


「そりゃそうだよ。元が同一人物だったとは言え、今は別の人間なんだから。どれだけ近しい存在でも100%分かり合うなんて無理さ。そう言う事でしょ」


「まぁ、そう言う事なんだろうけどさ」


 タカネは精神性も完全に女の子になってるわけだからなぁ。

 そう考えてみれば、あくまでもオレの記憶を持ってるだけの女の子と思う方がいいんだろうね。

 例えてみるなら、生まれてからずっと一緒に育った一卵性双生児みたいな。


「つまりお前はシスター」


「あなたは神を信じますかー?」


「神ならオレの隣で寝てるよ」


「え? あたしはその神におんぶして貰ってるよ?」


「じゃあオレはその神に肩車してもらってるよ?」


「あれ? じゃあ、あたしを抱っこしてくれてる神は何者?」


 あっちこっちに猫耳美少女と女装したオレくっつけてる神様も災難だなぁ。

 その後もぼつぼつと馬鹿話をしていたところ、ふと思い出したようにタカネが言う。


「ところで、タカヤ」


「うん?」


「なんで女装してんの?」


 オレは死んだ。






 泣きながらリビングから逃げ出して、服を着替え、どこからともなく現れたトモエさんに服を奪われ……。

 次にホットパンツを脱ごうとしたらスカートを履かせるという死刑宣告に怯え、オレは今の状態を甘受する事となった。


「くっそぉ……オレの男の尊厳が……」


「いいじゃん、似合ってるんだから」


「似合ってる似合ってないの問題じゃないだろ? これはそう……オレの尊厳の問題なんだよ。名誉なんだ。そう、グロリアスレボリューションなんだよ!」


「名誉革命ってか。分かりづれーよ。いずれにせよ似合ってんだからいいじゃんか」


「うっせーばか。お前にオレの気持ちがわかるかよ」


「分かるわきゃねーだろ。あたしは女なんだから」


 タカネの言う通りだった。


「まあ、あたしも初めてブラつけた時はちょっと違和感あったから、多少は分かるけどさ」


「え? お前ブラつけてんの? 胸ないんだから要らないだろ」


「……じゃあタカヤはパンツ要らねーな」


 オレは泣いた。

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