憎たらしげなホットパンツ
結局、オレは抗い切れなかった。
というか、魔法関連ではトモエさんに完全に負けてるから抗いきれないのは当たり前。
「うっうっうっ……オレはもう死にたい……」
「まぁまぁ。ほら、ホットパンツなんだから短パンだと思えば平気でしょ?」
「ああ、確かに……って、そんなわけがあるかぁ!」
「わー、怒った怒った。じゃ、僕は逃げるねー」
こんな短い短パンがあってたまるか。
でも、ホットパンツなだけまだ有情かもしれない。
昔は問答無用でスカート履かされたし……というか自分から履いてたけど。
「よく似合っているではないか。あの……ほら、なんといったか……あれ、あの……」
「あれだのあのだのじゃ分かんねえよ」
「ジュニアアイドルみたいだぞ」
アイドルの名前出て来なかったんだな……コイツテレビ見ないもんな。
「懐かしいな。こうして私はお前をオモチャにして遊んでいた」
「そうですね。ところでこれもう脱いでいいですかね」
「そう言うな。髪も、あと2月程度のことだ。最後だと思って堪えてはくれないか」
その言い方に違和感を覚えた。
けれど、問い詰める事は出来なかった。
だって、ローザが、悲しそうな顔をしていたから。
「なんだよ、らしくない顔してんな」
「すまんな。自覚はしている」
「ふてぶてしいのがお前だろーが。堪えてはくれないか、じゃねえだろ」
「……そうだな。命令だ。あと2か月の間、髪を切るな。そして、私の前では女装をしていろ」
「はいはい……まったく、しょうの無い奴だな」
「すまんな、世話をかける」
「まったくだ」
笑いあって、それで終わり。
それくらいでいい。
「なあ、ローザ」
「なんだ?」
「今年の夏休み、予定開けろよ」
「ほう? デートの誘いか?」
「アホ抜かせ。遊びに行くぞ。みんなで」
「それはいいな。どこに行く?」
「海とか、山とか、どこでもいいさ。とにかく、一生忘れられないくらい強烈で、たくさんの思い出作ろうぜ」
「ああ、それはいいな」
「そんでさ……いつか、その時の事を思い出話に出来るように、なりたいな」
「それは……いや、ああ、それがいいな。それくらい、強烈な思い出をつくるとしようか」
「ああ、色々思い出を作ろうぜ」
一杯思い出を作ろう。
オレも、この世界から去ることになるから。
オレは帰って来れるけれど、そう簡単に帰って来れるわけではない。
それに、世の中には絶対というものはない。
たとえオレがどれだけ強くなったとしても、それより強い存在は居るだろう。
もしかすれば、かつての魔王よりも遥かに強大な敵が現れるかもしれない。
そうなったとき、オレはたぶん戦う。
周囲に祭り上げられる事もあるだろうが、オレはたぶんじっとしていられない人間だ。
まぁ、義憤とかじゃなくて個人的に気に入らないからぶっ飛ばすとかその辺りだけど。
魔王倒しに行ったのも気に食わないのでぶっ飛ばしに行っただけだし。
なんか大事になって最終的にオレもシリアスになったけどね。
「さて、こんな真面目な話はやめて、なんかして遊ぼうぜ」
「そうだな。とは言え、やれることは相変わらずゲームくらいなものだが」
まぁ、ローザの家に遊び道具が少ないのは知ってる。
フライトシューティング系ゲームが多いのも、戦闘機好きなの知ってるからオレが教えてようやくってくらいだし。
ちなみに一番のお気に入りは円卓の鬼神出る奴だそうです。
「新しい奴買った?」
「ああ。新しいのは買ったぞ。まあ、もうクリアしたが」
「ふーん。やらせて」
「構わんぞ」
というわけで、ローザの指導でぼちぼちゲームを始める。
……なぜかローザの膝の上で。
「いいぞ。そのまま叩き潰せ。対地攻撃の基本は掴んでいるな?」
「はい」
ローザ、フライトシューティング変態的にうまいんだよな……。
対地用の無誘導爆弾で敵戦闘機を撃墜したりとかするし。
「どうした、さっさと叩き潰せ。敵地上戦力は既に60%以上が壊滅しているぞ。後は残党を消し飛ばすだけだ」
「はい」
ローザの膝の上なので、落ち着かない。
背中にぽよんぽよんしたものが当たってくるし、ローザのシャンプーの匂いがするし、太ももがやわらかいし。
「おい、何をしている? 怖気づいたのか? 所詮はシミュレーションだぞ。さっさと全て叩き落とせ」
「はい」
落ち着いてゲームなんか出来るわけがないのですが。
いや、無理だろ、こんなの。
この状況で落ち着いてゲームできる男が居たら、オレはそいつを『悟りを開いた人』と呼ぶぞ。
「なにをしている馬鹿が! 超低高度突入は基本だぞ! 地表面から15メートルを飛べるようになって一人前……じゃなかったな」
「すみません」
うっかり地面に激突したら怒られた。
「まぁいい。ほら、さっさとリスタートだ」
「はい」
その後、オレは半ば苦行のような感じでゲームを続行していた。
何が辛いって、今のオレじゃ立つもんも立たないんだよ。
不能の呪いもかけ直したし、体も未成熟だし。
しかし、精神的には興奮するし、なんかイケナイことしてる気分になって困る。
ローザを女として見れないのって、たぶん家族に近しく思ってるから、心理的に抵抗があるのも関係してるんだろう。
だからか、ローザに興奮すると凄い悪いことをしてる気分になるのだ。
「ローザ、オレのこと抱っこすんのやめない?」
「断る。この腕にすっぽりと収まる感触が心地いい」
うおぉぉぉ……抱き付くなあぁ……!
「それと、私の事は昔のように呼べとそう言ったはずだ。お姉ちゃんでも構わんぞ?」
「嫌です」
「だろうな。お前は自分の姉もちゃん付けで呼んでいた男だ」
「そうでしたね」
その繋がりでローザの事もちゃん付けで呼んでたんだよな。
小学生くらいまでのことだけど。
ああ、なんか昔の事を思い出すなぁ……。
「おい、何をしている。さっさと航空戦力を叩き潰せ」
「あ、はい」
思い出にも浸らせてくれないローザは悪い奴だ。




