気になる木
公園に戻ってきた。公園には未だ誰もいない。
まぁ、時刻的にまだ昼前だしな。公園にわざわざ出向いてくる酔狂な輩はおらんようだ。
さておき、木の下に置いておいたバトミントンのラケットを拾い上げ、シャトルを手に取る。
「えーと、オレが失点して、オレが8点でレンが7点だっけ?」
「確かそうだったな。という事は、次は私が打つ番だ」
「そうだなー。まぁ、とりあえず飲み終わるまでぼちぼち休憩しよう」
「そーだな」
そう言うわけで、しばらくぼーっとする。
ふー、熱くなった体に冷えたコーラがうまい。
そんな感じでしばらくぼーっとして、試合再開である。
「よーし、やるぜー、やるぜー」
「ふっふっふ……覚悟するがいい、タカヤ」
スマッシュ。
不意打ち気味に放たれた一撃に動きが間に合わず、背後の木に着弾し、木は圧し折れた。
「あーっ! あーっ! お前何やってんだ!」
「な、なんてことだ! まずい!」
「どうすんだこれ! 見事にポッキリ行ってるじゃねーか!」
結構大きい木なのにどうすんだよこれ、おい。
「……そうだ。治癒魔法効くんじゃね?」
「それだ! さっそく試そう!」
折れた部分を持ち上げ、くっつける。そして、治癒魔法をかける。
うーん……あんまり効かねーな。一応効いては居るが……。
「樹木用の魔法じゃなきゃダメなのか?」
「さあ……? そうだ、回復薬とか効きそうではないか?」
「それだ。植物だし液体系の方が効き目いいだろ」
エリクサーを取り出してぶっかけてみた。
ちなみにこのエリクサーは体力回復しか出来ないタイプ。
エリクサーにも色々と種類があるのだ。オレが使い渋ってたのは体力も魔力も回復できるタイプ。
「おお、スゲー勢いでくっついてくぞ。ガンガン回復してる」
「本当だな。いやはや、一安心だ」
「完璧にくっついたな。……ん? おい、この木、なんか太くなってねーか?」
「……伸びてるぞ」
「……薄めたほうがよかったかな?」
考えてみれば、植物の栄養剤って薄めて使うものだったな……。
原液のエリクサーぶちまけちゃ拙いのか……。
「どんどん伸びてくなー……」
「……ああ」
「んー……ばっ!」
「なにをやってるんだお前は」
「知らんのか。あのへんな生きものはまだ日本にいるんだぞ。たぶん」
「なんだその曖昧な表現は。そもそも、あの、とは言うがあの生き物とはどれだ?」
「知らねーよそんなの」
「お前が言い出した事だろう!?」
「細かいことはいいんだよ」
しかし、この木、どこまで伸びるんだ? もう60メートル近くまで伸びてるぞ……。
しばらくぼーっと眺めてたが、考えてみたらこれ大騒ぎになるよな。
「レン、逃げるぞ」
「え? 逃げるのか? 試合の続きは?」
「コールドゲームだ。無効試合だ」
「仕方あるまい。そう言えば聞いていなかったが、何点先取で勝ちなのだ?」
「あ~……確か15、30、40でまた点とって1ゲーム……という事は55点先取で1ゲーム取って、6ゲーム先取で勝ち」
「合計で最低330点取るのか!? 過酷な遊びだな……」
あれ、でもこのルールってテニスじゃ……まぁいいや。
とにかく今は逃げよう。
慌てて逃げて来て、家へと帰りつきました。
「はー、疲れたー」
「ふぅ、暑いな」
「あー。昼になって気温上がってきたしな」
あちぃな。
「やれやれ、ただいまー! 母さんビール」
「お帰りバカ息子。ビールは冷蔵庫だ」
「あれ、これデジャブ?」
デジャブを感じつつも、冷蔵庫から麦茶を取り出して飲む。
「レンも飲むか?」
「もらおう」
コップに注いで渡してやる。
「はー、疲れた」
「お前たちどこに行っていたんだ?」
「学校近くの公園。バトミントンしてた」
「相変わらず我が息子ながら前後の繋がりが意味不明だ」
「かく言うカーチャンはなんで逆立ちしてんの?」
「ああ。腹が空いたと思ったから逆立ちをしていたんだ」
「さようで。相変わらず我が母親ながら前後の繋がりが意味不明ですね」
「……似たもの親子というわけか」
「そーだね。ところでカーチャン、昼飯は?」
「勝手に食え」
「ですよね」
カーチャンがめんどくさい時の最強の命令、勝手に食え。あるいは適当に食え。
これが発令された時、我が家の人間は適当に食う事が強制されるのだ。
「んー、レン、なんか作って」
「食材は?」
「冷蔵庫のもんを勝手に使いなさい。カーチャン、いいよね?」
「好きにしろ」
「というわけで、よろしく。あ、カーチャン、米あるの?」
「朝に全部食った」
「研ぐか……」
米研ぎは得意だ。小学3年生くらいからやらされてたし。
というわけで、ちゃっちゃと研ぐ。早炊きにすれば間に合うだろ。
米を研ぎ終えて、何とはなしにテレビをつける。
なんかニュース速報やってた。
「公園の木が突如異常成長? 既に120メートルに達し、ギネス記録を今も更新中か。何が起きているのだろうな」
「ま、まぁ、世の中には不思議な事が一杯あるから……」
「確かにな。息子が異世界に行って帰って来て、娘が二人に息子が一人増えて、息子のうち一人は若返った、か。うむ、不思議が一杯だな」
確かに明文化してみたらえらい事になってるな。
しばらくぼーっとテレビを見て、昼食が出来て、だらだら過ごす。そんな昼下がりだった。




