銭湯の年齢制限は都道府県ごとに異なる
「ところで母さんや、小学校に通うなら必須のものがあるよね。ランドセル」
「千里のがあるだろう」
「10年前のものだから、合成皮革じゃ劣化してて使い物にならないんじゃねえかな……」
「では修也のだな」
「黒は可哀想だろ。昨今トランスジェンダーが囁かれて、様々な色のランドセルが登場して、女の子が黒を背負う事もあるけど……」
「そうか。とりあえず、性転換を囁く阿呆はおらんと思うぞ」
「ジェンダーフリーだった」
いやあ、うっかりうっかり。
「なに、安心しろ。ランドセルに教科書は既に手配済みだ」
「という事は、後はそのほかの諸々の道具か。リコーダーとか」
修也のおさがり使わせるのは可哀想だし、やっぱり買うしかないよな。
あれってどこで買えばいいんだろ?
「そうだな。一応言っておくが、しゃぶるなら隠れてやれよ」
「しねぇよ」
「しないのか!? 馬鹿な。私ならばしゃぶるぞ」
「なに堂々と変態宣言しちゃってんのこの人」
「使った体操着の匂いを嗅いだりもするだろう」
「しません。鼻が効くんで」
「風呂のお湯を飲んだりもするだろう」
「しません。たいてい入浴剤はいってるし」
「ああ、私も入浴剤が入って居たらさすがに飲まん」
入浴剤入れない事があるのって、もしかして……いや、深く考えないようにしておこう。
「というか、そう言う変態的な会話は置いといて、小学校の準備でしょ?」
「ああ、そうだったな。まぁ、道具類は後々ご近所の方々に聞く。あとは、小学校生活における注意点だな」
小学校の注意点、ねぇ……かれこれだいぶ前だし、あんま覚えてないな……。
給食の当たりハズレが大きいことくらいしか。
どうでもいいけど、小学生ってなんで牛乳でごはん食えるんだろ。
「その前にタカヤ、聞いてもいいか?」
「なんだ?」
「学校とは何をするところなのだ?」
「本音と建て前を学ぶところだ。勉強はオマケ」
「そう言うのは得意ではないな……」
「まぁ、ハゲの人にハゲって言っちゃいけないのと同じくらいのもんだ」
「なんだ、そう言う事か。それくらいは弁えている」
「そうか。ところでオレはイケメンだと思うか?」
「十人並み」
「……レンの、うそつきー!」
「い、いや、世間一般からして十人並みなのは事実だから……その、なんというか……わ、私は好きだぞ! そうでなければお前の嫁になどなっていない!」
「いや、うん……十人並みなのは知ってるから……」
カーチャンは美人なんだけどな……トーチャンは平々凡々なわけで。
しかし、オレはカーチャン似だったりする。顔のパーツがね。
つまり、カーチャンのパーツを受け継ぎながらも、トーチャンの平凡さでそれらを台無しにしているのである。
「クッソクッソ……オレだって、昔はなぁ……」
「昔は?」
「……まぁ、美形だったんだ」
「ああ、写真で見たから知っている。しかし、あれは美形というよりは……」
「美形は美形だ」
「いや、あれは美形というより可愛いという……」
「整ってる事は整ってんだから美形だ」
「う、うむ……」
微妙に男の娘っぽかったとかどうでもいいから。果てしなくどうでもいいから。
あと、子供はみんな女の子っぽくてかわいいとか、そう言う事実もどうでもいいから。
とにかく昔はまだ美形だったんだ、なぜあのまま成長出来なかったのか。
慢心、環境の違いなのか。
「カーチャン、昔のオレは美形だったよな?」
「まあな。将来はどこぞのアイドルグループにでも入れるのではないかと思っていたが……なぜこうなったんだ?」
「本気で不思議そうにしないで。なんか傷つくから」
「10歳くらい若返れないのか? あるいは性転換とか」
「どっちも出来るけど?」
「そうか、仕方な……出来るのか?」
「出来ます」
若返り薬も性転換薬も何個か持ってる。主にジルからもらったものだ。タカネ変身セットとして。
あと、体重を劇的に増加させる薬とか、歯が全部抜ける薬とか、恐ろしい薬も貰った。
何に使えって言うんでしょうね。
性転換薬と若返り薬は今この場で役立ちそうな勢いだけど。
「では、若返れ」
「よし来た」
さっそく若返り薬を取り出して一気。
なぜ躊躇もなくやったかって? なぜならその方が面白そうだから。
それに、タカネを見てると思うんだよね……。
ああ、子供の頃に戻りたい……って。
そう言うわけで、見た目だけでも若返ってみたかった。
決して女湯に入れるからとか、セクハラしても子供のいたずらで済むからとか、そう言う理由ではない。
決して。決して。
さて、そう言うわけで、一分足らずで子供の姿に戻ったオレ。うわーい、服がだぼだぼでござる。
「懐かしい姿だな。昔はこんなに小さかったのだな」
「カーチャン、持ち上げるのやめろください。服が脱げる」
「ほう、どれどれ。成長具合を確かめてやろう」
「おいばかやめろ」
ズボンを必死で掴んで抗う。
見た目は8歳でも、心は18歳なのです。
とりあえず、カーチャンから逃げ出し、今のサイズに合う服を着た。
幸い、修也の昔の服がぴったしだった。だっせぇけど。
しかし、若返った状態だと……うん、全てが新鮮だなぁ。
タカネの姿になったときもそう思ったけど、馴染みのある家だからなおさらに。
「はー……視点低いなぁ。家の中が広く感じる」
「む……タカヤ、私の方が背が高いぞ!」
「な、なんだってー」
確かにレンの方が目線が高い。
というか、今のオレの肉体年齢は8歳だから当たり前ではある。
子供の頃の1年ってデカいからね。それが2年ともなればなおさら。
それに、子供の頃は女の子の方が身長の伸びが速かったりする。
「まぁ、オレが8歳でレンが10歳だしなー」
「ふむ、そう言うものか。しかし、これは面白いな」
「だなぁ。ちょっと外に出て体動かしてみるわ」
「私も行こう」
というわけで、家の外に出て、軽く体を動かしてみる。
色々と試した所、身体能力はタカネになった時と比べて、さほど落ちている感じはしない。
まぁ、小さくなってる分だけ落ちては居るけど、たぶん、元の4分の3って感じかな。
「ふむ、性差かなー。どれ、この状態でも戦えるように、軽く打ち合ってみるか?」
「ああ、いいぞ。相手をしよう」
アイテムボックスから木刀を取り出し、構える。
うーん……木刀がデカい。こりゃ慣れるまで時間がかかりそうだなぁ。
そう思いつつも、オレはレンと打ち合い始めるのだった。




