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エリクサーは使うなよ。了解! エリクザム!

 魔王城までの道程をさっさと乗り越え、城に張ってあった結界を力づくでぶち破り、内部へと突入。

 前哨戦とか、お約束とか、ストーリーその他諸々全てを無視して魔王戦へと突入した。

 気分は二週目開始と同時にラスボスに挑む気分だ。


 そして、オレたちは魔王に苦戦していた。


「ぐあああっ!」


 魔王の一撃を受けて吹き飛ばされる。

 くっ、強い……! うちの魔王より弱いとはいえ、その半分くらいはあるか……。


「ちぃっ、さすがは魔王か! シリアス入ってないタカヤじゃ分が悪い!」


「パワーも技量もこっちが上いってるが、そもそも存在の格が違うからな……」


 相手の魔王は完璧な魔物タイプだ。

 うちの魔王みたいな人間型じゃなく、どっちかというと現象そのものに近い。

 だから、疲れないし、その意思も絶対に曲げない。そう言うタイプの存在。

 そしてだが、生命力が桁違いに高い。

 オレはメチャクチャ強いが、頭吹き飛んだら死ぬし、血液を失えば力も弱まる。

 が、相手は頭が吹き飛んでも再生するし、血液を失っても短時間で回復してしまう。


 なので、なかなか決着がつかない。フルパワーの一撃をぶち込むにしても隙がない。

 長期戦に持ち込めば不利。だが、現状では長期戦に持ち込まざるを得ない。


「タカネ、魔力はあとどれくらい残ってる?」


「もう半分切った」


「不味いな……オレも体力を相当使ってる」


 このままじゃジリ貧。となれば……手段は一つ。


「タカヤ、エリクサーだ!」


「了解! エリクザム!」


 アイテムボックスからエリクサーを取り出す。

 見た目は栄養ドリンクっぽいそれを一気に飲み干す。

 瞬間、湧き上がる活力と魔力。負っていた怪我も一瞬で回復する。


「うおっしゃあああああ! 行くぜえぇぇ!」


「あたしも続くぜ! エリクザム!」


 タカネもエリクサーを一気飲みして回復。

 喪っていた魔力も、お盛んな生活で痛めた腰も回復し、剣を取り出して並び立つ。


「行くぞ魔王!」


 答えは無い。というか、この魔王はどうやら喋れないらしい。

 ただ問いかけたかっただけだ。

 この、重課金兵に勝てるかどうかをな……!


「10本セット1000円のエリクサーの力、思い知れ!」


 10本セットを購入すれば、オマケに1本付いて来てお得だぜ?






 さて、エリクサーを使ったゴリ押しで魔王は無事撃破。

 レベルを上げて物理で殴ればいいとは至言だな。


「ただいまー、魔王倒してきたぞー」


「速っ!? ちょっ、ホントに倒してきたの!?」


「倒してきたよ」


 確かに結構強かったが、所詮はその程度よ。

 さて、周囲を見渡すと、死屍累々の山々。これは酷いもんだな。

 オレの式神も全部消滅した感覚はあったが。


「で、修也、この惨状はどうしたんだ」


「え、ああ……なんか、孝也が行ってちょっとしたら、ものすごい勢いで魔物たちが魔王城の方に走って行って……」


 ああ、魔王の救援に駆けつけたのか。そこにちょうどぶち当たってしまったと。

 運の無い奴だなぁ。まあ、オレの弟に生まれた時点で運がないが。

 いや、カーチャンの息子に生まれた時点で、か? もしくは常識人として生まれた時点でだな。


「そ、それで、ローザ姉さんがね、笑いながら……突っ込んで行ったんだ……」


「へぇー」


「へぇー……って、違うでしょ!? おかしいでしょ!? ローザ姉さんは普通の人間なんだよ!? それなのに、なんであんな事が平気で出来るのさ!?」


「さあ? オレも出来るけど、アイツのそれとは違うからな」


「なにがだよ!」


「オレは強い。お前よりずっと強い。お前も多少強くなったのかもしれんが、オレの方が何百倍も強い。だから突っ込んで行ける。勝てると分かってるから。だがローザは違う」


 そう、アイツは違う。アイツは勝てると思ったから突っ込んだんじゃない。

 突っ込んだ方が勝率が高いから突っ込んだ。恐らく、それだけだろう。

 自分の死亡率が跳ね上がると分かっていても。


「アイツは根本的なところでズレてる。あるいは壊れてる。生まれつきなのか、後天的にそうなったのかは知らんが、アレはもう治らん」


 あれはああいう風になってしまっている人間だ。

 ああなってしまえば最後、もはや矯正する事は出来ない。

 なぜならば、それが正しい形になっているから。

 骨折した指が奇妙な形で固定されて、歪に治癒してしまったように。


 普通の人から見れば可哀想とも言える有様だ。

 だが、何が正しくて何がおかしいかなんて、そんなのは主観で変わってしまう。

 ローザが戦乱の世界……例えば、オレが戦った異世界で生まれていれば。

 きっと、英雄と呼ばれるような人間になっていただろう。

 だが、あの平和な世界では精神異常者として扱われる。

 幸い、まともなフリが出来る程度には理性があったので、そう言われる事はないが。


「で、そのローザは?」


「あ、あっちに……死にそうなんだ……」


「だろうな」


 修也の頭をポンポンと撫でてから、修也の指差した先へと向かった

 速いところローザを治してやらんで、死なれでもしたら困るからな。

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