兄が兄なら弟も弟
さて、修也を助けるべく異世界への扉を開き、やってきたのは異世界。
「ふむ、割合普通なのだな」
見渡す限りの草原を眺めてローザが言う。
「並行世界っつっても、所詮は人間の生きる世界だからな。そこまで大きな違いはないぞ」
まぁ、探せば人間が生きていけないような世界もあるんだろうけど。
けど、わざわざ人間に限定して召喚するような魔法が使われていた以上、相手も恐らく人間だ。
なら、当然この世界も最初から人間の生きていける世界だろう。
「で、一文字修也はどこだ?」
「この近くにいるはず。まぁ、探すか」
ぼちぼち歩きだす。そして、数分と経たずに修也を発見した。探索魔法の力は世界一であります。
さて、現場に急行したオレはまず修也を殴ったわけだ。
「いだいっ! なにするんだよ!」
「なんかムカついた」
だって、修也の傍に女の子が三人もいるんだもん。しかも、みんなオレと同い年くらい。
おねショタハーレムかよ。ふざけんな。
ムカついて殴っても許されますよね?
「勇者様になんてことを! この無礼者!」
で、なんかそのうちの一人に怒られた。
「勇者? 修也、お前一体いつの間に勇者なんてけったいなものになったんだ」
「悪かったねけったいで! つい先週だよ!」
「ほー。まあ、勇者に関してはオレの方が先輩だ。遠慮なくなんでも聞くがいいさ」
胸を逸らしつつ言う。ふふはははは。
「えーと……孝也、いつの間に勇者になんてなってたの?」
「行方不明になってた間、異世界で勇者やってたんだよ、文句でもあるか」
「いや、ないけど……まぁ、それは置いておいてさ、聞きたい事があるんだけど……いいかな?」
「おう、なんでも言ってみろ」
「魔王とはやっぱり分かり合えないのかな……」
「常識的に考えて無理だろそんなの」
「……きっと分かり合えるさとか、そう言う事を言うべき場面なんじゃないの?」
「いいか、修也。話し合えば分かり合える、なんてのは最初の時だけだ。もう殺し合いが始まってんだろ? だったらもう話し合いなんてできない」
転がり始めた石は、もう決して止まらない。そう言う風になっている。
止めようとすれば押し潰されるか、その石に巻き込まれて、自分も戦争を加速する一因になるかだ。
「甘えた考えを持っていれば、死ぬぞ。それも、仲間を巻き込んでだ。後悔したくないのなら、甘えは捨てるんだな」
「……孝也は、後悔したの?」
「オレ? オレは最初から魔王殺すつもりで戦ってたから、気にせずに魔物と魔族の殺害行脚してたよ、あははー」
悩んでたのは魔王を倒す旅に出る前で、旅に出てからは全く迷わずに殺し回ってたな。
魔物だけを殺す機械かよ! って怒鳴られても仕方ないレベル。
「そ、そうなんだ。どれくらい戦ってたの?」
「散発的にも含めるなら半年以上戦ってたけど、実質的に3か月くらいかな」
「ふんっ、3か月で倒せる魔王なんて大したものじゃありませんわね」
なにやら横から口を挟んで来た人物を見やる。
うーん、なんか貴族っぽいな。
「修也、このねーちゃんはどなた?」
「えっと、神聖騎士のセレナさんだよ」
「ふーん」
神聖騎士とかなかなか香ばしい香りのする呼び名ですね。
なんて思いつつも口には出さない。言ったら怒られるだろ。
「さて、修也。宣言通りお前を助けに来たわけだが」
「あ、うん。もしかして……一緒に旅に行ってくれるの?」
「やだめんどくせー!」
「即決で断るな! じゃあどうやって助けるって言うんだよ!」
「魔王の居るとこ教えろ。始末してくる」
「え、ええっと……あっちの方に魔王の居城があるって……」
「よーし、任せろ。タカネ、行くぞ」
「おーともよー」
だるそうだなぁ……まぁ、タカネには魔法で支援して貰えばいいか。
魔王の力の強さからして、オレの戦った魔王の半分以下の力しかないっぽいし。
タカネでもガチれば勝てるんだから、オレなら余裕で勝てるはずだ。
まぁ、油断したら死ねる程度には強いともいえるのだが。
「んじゃ、さっそく行ってくる」
「待て、一文字孝也」
「なにさ」
「私をここに残していくのはいい。だが、私には自衛手段が殆どないのだぞ?」
「その手の中で黒光りしてるモノはなんですか?」
ローザがモデルガンだと言い張ったそれ。
何故持ってきてるのか……。
「今更隠す事でもないから言うが、P8のコピー品だ。45口径仕様のな」
なんでそんなもん持ってんだよ……。
「コイツには12発しか入っていない。マガジンも2つしかない。少々心許ないのでな、何か武器を貸してくれ」
「剣はダメだよな?」
「ナイフなら使えなくはないが、得手ではないし、実戦に使ったことがない」
「となるとやっぱ銃器かー」
あれこれとアイテムボックスから銃火器を取り出し、ついでに式神符を取り出す。
そいつに念を篭めて、オレの分身を6体創り出す。
数時間で消滅する上、身体能力も常人程度しかなく、自意識も無い低級の分身だ。
普通はかく乱用に使うものなんだが、銃火器を使った戦闘なら役に立つだろう。
「お前たちはコイツ……ローザの命令に従え。絶対服従だ。いいな?」
全員が頷いて承服の意を示す。
「よし。ローザ、こいつらはお前の命令に服従する。好きなように使ってくれ」
「何から何まですまんな。礼と言ってはなんだが、あとで何か奢ろう」
「楽しみにしとく」
ぴらぴらと手を振って、タカネを抱えて走り出す。
さあて、さっさと魔王をぶちのめすとしますかね。




