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×天然  ○アホ

 朝食が終わり、ようやっと質問タイム。


「さて、で、君の名前は?」


「がるるるっ!」


 威嚇されててお話になりません。


「あたしの名前はタカネ。お嬢ちゃん、お名前は?」


「小夜!」


「さよちゃんね。いい名前だねえ」


 どうしてこうまで差がついてしまったのか。


「で、そこのボンクラが嫌いな理由は?」


「とーさんをいじめた!」


「ふむふむ。ふてえ野郎だぜ。あたしが知っていれば止めたって言うのに……」


「え? あなた一緒に居ましたよね?」


「それは錯覚」


「いや、実体ありましたよね」


「残像だ」


「なん……だと……質量を持った残像だとでもいうのか」


「フッ、分身さ」


 そりゃあんたオレの分身ですけどね。


「おまえはとーさんいじめた! だから悪い奴!」


「でも団九朗ってオレのこと兄さんとか言ってたけど」


「えっ、そうなのか? じゃあ、おまえはわたしの叔父さんか?」


 その理屈はおかしい。


「というか、一体いつどこでオレの事を聞いたんだ?」


「昨日、とーさんが家に帰って来て」


「うん」


「変な人間二人に襲われたけど、ひどい事はされなくて」


「うんうん」


「人間のお金もらって、その人間の舎弟になったって言ってた」


「うん……うん?」


「ん?」


「それでなんでオレが悪い奴になるんだ?」


 確かに襲いはしたけど、別に何もしてないし。

 多少脅しはしたけどね。でも謝罪の意味でお金あげたし。


「…………とーさんいじめた!」


 なんだ、ただのアホか。


「いいか、見方を変えてみるんだ」


「みかたをかえる?」


「団九朗はオレに襲われた。ひどい目には遭わなかった」


「うん」


「そして、そのおかげで滅多に手に入らない人間のお金が手に入った」


「うんうん」


「運がいいだろ」


「……たしかにすごく運がいい! とーさん得したな!」


「じゃあ、そのお金をやったオレは悪い奴か? それともいい奴か?」


「いいやつ! おまえ、いいやつだったんだな!」


 ちょろい。


「なんだー、おまえいいやつかー。悪いやつだと思ってごめんなー」


「ああ、うん、いいんだけどね」


 コイツ、こんなアホで大丈夫か?






 さて、小夜ことアホ……もとい、アホこと小夜。

 その小夜とも無事に和解というか、騙し込んで蟠りは解消。

 とりあえず、小夜を送り届けるために再び山へと。


「山よ、私は帰って来た……!」


 ……誰も突っ込んでくれなくて悲しい。

 なぜならタカネは腰がいてぇ、とのことで今日一日ゆっくりするそうです。

 ゆうべはお楽しみでしたね、というわけだ。


 そう言う訳なので、今日はオレ一人である。

 レンは昨日に引き続いて、ローザにオレの過去を聞きに行くらしい。


「さて、団九朗のとこ行くか」


「うん! いくぞ、たかや!」


 元気いっぱいアホ印の小夜を連れて、団九朗のところへ。

 道案内は小夜だ。オレは匂い嗅いで団九朗の居場所探るなんてできない。

 仮に出来てもやらない。オッサンの匂いを嗅いで追跡とか何の罰ゲームだよ。


 そうしてしばらく歩き、団九朗一家の棲む巣穴へとやってきた。

 すると、タヌキがこちらに顔を出す。


「ありゃ、兄さんじゃねえですか! って、小夜! お前どこいってたんだ!」


 そのタヌキは一瞬で汚いオッサンに早変わり。

 もうお前永遠にタヌキの姿で居ろよ。その方が可愛いから。


「たかやの家!」


「なんかオレに夜襲しかけて来たんで、捕まえて、風呂入れて、朝メシ食わせて来た」


「す、すんません兄さん! あっしの娘が迷惑かけたみてぇで……」


「いや、別にいいけどさ」


 土下座でもしそうな勢いの団九朗を起き上がらせて小夜を渡す。


「それよりも聞きたい事があるんだが?」


「へえ、なんでしょうか」


「コイツ、人間に変化出来てるよな? オレを謀ったのか?」


「そんなとんでもねぇ! 見て下せえ、ほれ、この通り」


「あう。とーさん、くすぐったい」


 ぴょこりと突き出している小夜の耳を団九朗がつまむ。

 うん、かわいい。


「それに尻尾も」


 もっふもふでふわっふわの尻尾。ああ、モフりてぇ。


「この有様じゃあ、変化出来てるとは到底言えやせん」


「……そう言う事か」


 確かに耳と尻尾が出てちゃあ、変化出来てるとは言えない。

 人間に化けきれてないんだから。

 つまり、オレと団九朗の間には認識の差があったのだ。


 団九朗にとって変化とは、完全に人間と同じ姿になれてようやく出来ていると言えるのだ。

 しかし、オレは耳や尻尾が出てようが人間の見た目になってりゃ変化だろうと認識してた。

 つまりはそういうこと。


「団九朗、小夜と同じくらいに変化出来る奴は居るのか?」


「へえ、そんでしたらあっしの息子はそんくらいなら出来やす」


「息子はいい。娘は?」


「娘は小夜一人しかおりやせん」


「そうか」


 小夜一人しかいないのは残念だ。

 しかし、動物は成長が速い!

 きっと、あと数か月もすりゃあ大人になるに違いない……!


「団九朗、小夜ってあとどれくらいで大人になるんだ?」


「冬にはもう親離れの時期ですぜ」


「はえーなおい。今幾つなんだよ?」


「今年の春生まれたばっかりですぜ」


「ホントにはえーなおい」


 野生動物ってみんなそうなのか?

 まぁ、成長が速いのはいいことだ。


「よし、じゃあ、オレは帰るな。ちょくちょく遊びにくる」


「おー、こいこい! あと、朝に食ったあれうまかった! また食いたい!」


「今度食わせてやるよ」


「待ってやすぜ。酒でも土産に持ってきてくれると嬉しいんですけどねぇ……」


「考えとく」


 適当に返事を返しつつ、去っていく。

 さあて、今日は何して遊ぶかなぁ。

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