ニンジャうそつかない
さて、店主さんが帰ったと同時、オレは家を出た。
なぜかって? そんなの家に居たくないからに決まってんだろ!
これ以上家に居たら精神が崩壊するわ!
だいたい、考えてみれば最初からこうすりゃよかったんだ。
タカネの声が聞こえない範囲に行けばいい。それでいいのだ。
まったく、なんでそんな事を思いつけなかったのか……。
まぁ、それはさておき、どこに行くかな。
店主さんの家に行くのはなんだしなぁ。ローザと香苗の家も、ちょっとあれだし。
幾ら幼馴染でも異性だ。それくらいの遠慮はある。
となると、行く場所は一つしかない。
「雀荘いこ」
場所はすぐそこだ。なんとオレの家の真正面。
なんの遠慮も無しにドアを開けて上がり込み、居間に入る。
すると、そこには香苗とオレの幼馴染三号が居た。
「うーっす」
「あ、タカちゃん。なにして遊ぶ?」
「雀荘だから麻雀しかないだろ」
「でも、人数足らないよ?」
うむ、確かに。香苗と幼馴染三号。そしてオレ。
麻雀は三人打ちも出来るが、やっぱり四人打ちの方が……。
「しょうがないな……早川、分裂しろ」
「おう、ちょっと待ってろ。いま頑張って細胞分裂するから」
オレの幼馴染三号、早川稔。オレと同い年の高校生だ。もちろん男。
コイツは両親が海外出張で高校卒業まで帰って来ないという、どこぞのエロゲ主人公のような奴だ。
しかも、アホやれる同性の幼馴染、異性の幼馴染が二人、更には学校の同級生まで揃えている。
なんてこった。ここはエロゲ空間だったのか。
「でもまぁ、エロゲ主人公みたいに両親が家に居なかったら、同性の友達のたまり場になるよな」
「いきなりだが、まぁ、それは確かだな……」
実際、たまり場になってるし。
雀荘行こうぜ=早川の家行こうぜって意味になるからな。
女の子連れ込む? 無理だろ。毎日誰かしら遊びに来るんだから。
「で、お前らなにやってたの?」
話を打ち切って、二人に尋ねる。
なにやら窓際でぼへーっとしていたようだが。
「ビタミンDの合成」
「マジかよ、スゲエな」
で、ビタミンDってどうやったら合成出来るんだ?
「タカヤもビタミンDの合成するか?」
「する。どうやんの?」
「ここに座るんだ。そして、じっくりと太陽に当たる。以上だ」
「なるほど」
ビタミンDってのはこうやって合成するのか。
もっと頑張れば、別のビタミンも合成できないかな?
「そう言えば、なんか似たような技があったな。えーと、たしか……【フォトシンセシス】」
技を発動させて、太陽に当たりながらぼーっとする。
確か、この技は1時間日光浴する事で必須アミノ酸を合成して、1000キロカロリーの熱量を合成できるらしい。
よく分からないが、これを使えばご飯食べなくてよくなるらしい。
「タカヤ、お前なんか肌色が緑に……」
「マジで!?」
言われて自分の手を見てみると、確かに緑色になっている。
慌てて技を解除すると、あっという間に肌の色が元に戻る。
「タカちゃん、今のなに?」
「えーと……忍法カムフラージュの術だ。これを使う事で植物と同化して隠れる」
「すごーい……ねぇねぇ、他には何が出来るの?」
「え、えーと、忍法水中呼吸の術。1時間くらい水に潜ってられる」
でも水中で呼吸できるわけではない。頑張ってたくさん息を吸って潜るだけだ。
泳ぎ回ってても1時間くらい潜ってられるので、動かなきゃ倍はいけるんじゃなかろうか。
「ホント!?」
「ホントホント。ニンジャうそつかない」
「そうなの?」
「白人うそつきニンジャうそつかない」
「ほう。では、私は嘘つきか」
背後から声が聞こえた。
そちらを見やれば、そこには制服姿のローザが居た。
コイツ、自分の学校が外出時には制服着用を義務付けてるから、休日でも制服着てるんだぜ?
「じ、人種差別の意図はございません」
「そうか。まぁ、この町は人種の坩堝だからな。下らん事に拘っていては生活出来んからな」
「まあ、そうだな」
確かにこの町は人種の坩堝だ。
しかも、そいつらの文化がまじりあって、謎文化を形成してるし。
日本らしくない町なんて言われてるしな。逆に日本らしい町とも言われるが……。
取り込んで魔改造は日本の基本だし。
「ちなみに、インディアンは別に嘘をつかないわけではないのだぞ。オランダ人に詐欺行為を働いた記録もある。レナペ族の縄張りを、他の部族が勝手に売っぱらったそうだ」
「他人の土地売るとかやべぇ」
「当時のインディアンたちに土地所有という概念自体あったか怪しいがな。レナペ族からすれば、オランダ人は勝手に土地を侵略して来た敵だ。当然、戦争になった」
「うわぁ……」
あくどい。あくどすぎるぜ。
「まあ、そう言う豆知識はさておき。麻雀でもするか」
「だな。メンツ揃ったし」
「なんで俺ん家は雀荘になってんだろうな」
「さあ?」
まぁ、この家に麻雀持ち込んだ奴が居たからだろうな。
持ち込んだの誰だっけ?
少なくともオレではない。ローザに麻雀のルール教えてもらってたし。
……持ち込んだのって、もしかしてローザか?
「なぁ、ローザ」
「なんだ」
「この家に麻雀持ち込んだのってお前?」
「そうだ」
「ドイツ人が麻雀……」
「日本暮らしが長いのだ。もう40年近く住んでいる」
「じゃあオレなんて日本に50年は住んでますし」
「俺なんか戦艦大和見たことあるぜ? スゲーだろ?」
「え? え? え? えっと、えっと……私はお侍さん見たことあるもん」
「雑魚どもが。私なぞ黒船に乗って日本に来たわ」
「オレは大化の改新に参加してたし」
「俺は遣隋使として中国行ったわ。中国マジヤバイ。文化進み過ぎ。ヤバイ」
「私はリアルタイムで卑弥呼を見たことがあるぞ」
「私は、えっと、元寇の頃に台風に遭ったよ」
それ卑弥呼より後ですやん。
とまぁ、オレ達が集まるとこんな感じ。
こいつら以外にも友達は居るが……まぁ、それは後々だな。
人種差別の意図はございません。昔のラジオドラマに、白人うそつきというセリフがあっただけです。




