人妻っぽい外見ってどんなんだよ
家から走って出ていった修也。その後を追っかけまわす。
「待てよー、修也ー。兄弟同士、もやしについて熱く語り合おうじゃないか」
「なんでもやしなんだよ!」
「カイワレダイコンの方が好みか?」
「だからなんで野菜!?」
分からんが思いついたので、なんとなく。
「で、修也。どこに行くんだ?」
「河川敷だよ。そっちで朝練やってるんだ。ランニングしてる人もたくさんいるし」
「ふーん」
そう言えばうちのカーチャンも朝の家事を終えたらランニングしに行ってるしな。
さーて、んじゃ河川敷までぼちぼち行くかー。
「はぁ、はぁ……げほっ、ごほっ……おええ……」
「修也、なんでおまえそんなへばってんだ」
「アンタらが速過ぎるんだよ!」
「うん、わざと」
修也が自分のペースで走ろうと思わない程度に遅く、でも疲れるくらい速く。
そんくらいの速度で走って、修也をわざとへばらせた。意味は特にない。
とりあえず、近くに自販機があるので、そこでスポーツドリンクを買ってくる。
ここらへん野球場もあるし、部活の練習場にも利用されるからか、自販機結構あるんだよな。
「ほれ、修也」
「あ、ありがとう」
「気になさんな。他の陸上部員はいつごろ来るんだ?」
「もうちょっとしたら来るよ」
その言葉通り、数分と経たずに修也と同じジャージを着た女の子がやってきた。
「おはよー、一文字」
「おはようございます、先輩」
「今日も早いね、感心感心」
先輩か。さて、ここは一発バシッと兄として自己紹介を……。
「孝也、変なことするのはやめてね」
失礼な奴だこいつは。
「えっと、そっちの人は?」
「うちの兄です」
「あ、お兄さん? えーと、はじめまして」
「始めまして。オレの名はチャトラパティ・シヴァージーです」
「ちゃとらぱ……え? あの、お兄さんじゃ……」
「チャトラパティ・シヴァージーです。シャーハジー・ボーンスレーの息子だ」
「そ、そうなんですか……」
と、話した所で修也にどつかれた。
「真面目に喋れ!」
「分かった分かった……一文字孝也です。たしなむ程度に勇者やってます」
「はぁ、たしなむ程度に勇者を……」
「はい、たしなむ程度に」
勇者をたしなむ程度にやるってどういう事なんだろう……。
「そっちの子は妹?」
「えーと……ボクもよく分かってないんですけど、二人ともボクの姉らしくて……」
「え、なにそれ、どういう事?」
「さぁ……」
実際に姉なんだけどな。
「あたしは安久都高音だよ。修也の姉さ」
「……苗字違うけど?」
「ああ、あたし結婚してるから苗字違うんだよ」
「結婚!?」
「うん。人妻っぽく見えない?」
むしろ人妻っぽい外見ってどんなんだ。
ただ一つ言わせてもらうなら、ゴシック・アンド・ロリータスタイルのドレスを着た人妻は早々居らん。
あと、見た目が8歳くらいなのもな。
「……あの、おいくつですか?」
「18だよ」
「18ですか……速い結婚なんですね」
「まーね」
でもうちのカーチャン16の誕生日に結婚したから、速いって自覚ないんだろうな……。
「結婚生活ってどんな感じですか? 旦那さんどんな人です?」
「結婚生活はいいぜー。つっても、旦那様がいい人だからこそなんだけどさー。うちの旦那様は美形だし、家事出来るしで凄い人。あたし料理得意じゃないから申し訳ねーとは思うんだけど、やっぱ敵わなくてさー……」
「料理得意じゃないんですか?」
「うん。レシピ通りには作れんだけどね。創作してみろって言われたらマズイもんしか作れないのよ。めんどくさがって失敗する事もあるし……」
「面倒臭がるのは確かに問題かもですね……」
「だよね……でもやっぱさー、美味しい料理とか作ってあげてーじゃん? だから練習してるんだけど、なかなかうまく行かなくってさ……」
「そうなんですか……私も料理は殆どした事ないし……」
あれ、なんか女の子同士の話になり始めたぞ?
「修也、なんか肩身狭いな」
「うん」
「お前って料理出来るの?」
「調理実習以外じゃインスタントラーメンくらいしか……」
「そっか……」
ちなみにオレもタカネと同じく、レシピさえあれば作れる。
かつて家の台所滅ぼしたのは、タカネと同じくめんどくさがったせいです。
だって薪で火調整するのむずいんだぜ?
だから、この世界の台所で料理する限りは普通に作れる。
まぁ、レシピない料理は作れないけどな。
「しかし、タカネ、乙女してんなぁ……」
最初の頃は一人称オレだったのに、いつの間にかあたしになってるし。
自分の在り方に慣れて来てるんだろうか。
あるいは、タカネって言う人間としての在り方を確立して来てる感じか。
いずれにしろ、いい傾向だろう。
「さて……二人の話が終わるまで、軽く打ち合うか?」
「む、そうだな」
レンがアイテムボックスから木刀を取り出し、オレも同じく木刀を取り出す。
「……あの、二人とも、今のどこから出したの?」
「え? ああ……魔法だよ魔法」
そう言えばアイテムボックスってこの世界にはありませんでしたよね。
修也が疑問に思うのも当然と言えば当然だった。
「魔法って……」
「細かいことは気にすんな」
さて、んじゃ、始めるとしますかね。




