アイスはおいしい
さて、骨になってしまった魔王だが……一体どうしたらいいものやら。
世界が変わってしまったし、魔王に祈りを捧げて復活するんだろうか。
「とりあえず祈ってみようか」
「だね」
とりあえずお祈り。
「こんにちは、勇者人事部です。本日はご来訪いただきまして誠にありがとうございます。心より厚く御礼申し上げます。その選考の結果ですが、残念ながら次のステップに進んでいただくことができなくなりました。 重ねて御礼申し上げますとともに魔王様の今後のご活躍をお祈り申し上げます」
「そのお祈りと違うから」
というか魔王に活躍されちゃ困るよね?
と思ったところで、骨がカタカタと動き出した。
え、このお祈りでもいいの……?
しかし、カタカタ動くくらいでそれ以上変わらず。
どうやら戻った力は本当に僅からしい。
「魔王って割といい加減な存在なんだな」
「見た目が可変式だしね」
「まぁ、改めてちゃんと祈るか」
てきとーに魔王に祈る。
その瞬間、途轍もない力が魔王から溢れ出した。
「なっ、馬鹿な! 全盛期の魔王を遥かに超える力だと!?」
「あたしは悪くねぇ! 悪いのはタカヤだ!」
「ソッコーで責任転嫁すんな!」
醜い言い争いをしてる間に、魔王が復活する。
溢れ出す力は、やはりだが全盛期を遥かに超えた力。
以前の魔王が子供のようにすら思えてくる魔力だ……。
「う……む? わ、我にいったい何が?」
「う、うむ……魔王、お前はニンジャに暗殺されてしまった。すまない……オレの力不足だ……」
「な、なんだと!? 一体いつの間にニンジャが……」
あ、信じた。
「幾ら復活するとは言えど、次は何をされるか分かったもんじゃない。だから、オレ達は精一杯祈る事でお前の力を回復させた」
「うむ、我の全盛期を超える程の力を感じる……それほどまでに真摯に祈ってくれたのか……」
「あ、ああ。そうなんだ」
「すまぬ、勇者よ……人々に仇成した我に、これほどまでに心優しくしてくれるとは……」
なぜだろう。なんだかとっても心が痛い。
「それほどの力があれば、ニンジャと戦う事も可能だろう。だが、出来るだけ戦いは避けてくれ……」
「分かっておる。ニンジャの恐ろしさは骨身に染みた……」
「マジで骨になってたしな」
これこそホントの骨身にしみる……なんてな。
「ええと、魔王」
「なんだ?」
「その力で悪さしようとすんなよ?」
「せんわ。これほどの力を得ても、この世界は底が知れぬ……力を得た今だから分かる。ここより南西に潜む強大な力がな……」
南西っつーと……東京とかあるほうか。
それも京都か? そっちになんか凄い奴が居るんだろうか。
……ここの神社でこれなんだし、意外とありえるかも。
「それに、この世界の人間を根絶やしにしてしまえば、あの氷菓が食えなくなるではないか!」
「おい、タカネ。アイスで世界征服諦めた魔王が居んぞ」
「割とよくある」
ねーよ。
「まぁ、悪さしないって言うならいいんだけど……そうだ、帰りにコンビニ寄ってアイス買ってやるぞ」
「いいのか!?」
「あんま金持ってないから一つだけな」
カーチャンが一文無しは不味かろうってことで、三千円だけくれたのだ。
そのうちでバイトでもしないとな。
「レンにもアイス買ってやるぞ」
「アイス?」
「氷菓子だ。まぁ、百聞は一見にしかずって言うし、いってみよう」
「うむ、かたじけない」
「トモエさんは要ります? 奢りますよ」
「ううん、僕はいいよ。自分で買うから」
金持ってんの? まぁいいや。
「んで、タカネ。テメーはダメだ」
「あたしだけ酷くない!? 可愛い可愛い猫耳美少女様だぞ!? 奢ってくれもいいと思うにゃ!」
「そう言うあざとい行動し始めるからダメだ」
「ひでぇ! 差別だ差別! テメーは猫耳持ちを敵に回した!」
「早々居ねーよ、そんなもん」
むしろゴロゴロ居たりしたら困るわ。
「まぁ、三回回ってニャーと言ったら奢ってやってもいいが……」
「にゃあ!」
マジでやりやがった。……でもオレでもやるような気がするな。家族の間だし。
さすがに他人に言われたらやらねーけど。
「その潔さと、最後のにゃあだけちょっと萌えたから奢ってやろう。ガリガリさんをな」
「せこい! でもいいや。奢ってくれんなら文句ねーし」
奢り無しよりは、ショボくても奢りありの方がいいもんな。
なんて思いつつ、オレ達は帰る途中でコンビニに寄って、アイスを買った。
魔王はバニラのカップアイス。レンはスイカを模したアイスを。
タカネには宣言通りガリガリさんを奢ってやった。
「よし、んじゃ、家に帰ってゲームの続きするかー」
「よっしゃ、やろうぜ! 引き続きタカヤの財産を毟り取る!」
「おう、やめろや。泣くぞ」
「やめろと言われてやめると思うか?」
「お前なんか大嫌いだ」
「あたしは……好きだよ?」
「タカネ……愛してる……」
「タカヤ……あたしも……」
ちなみにここまで全部、顔も合わせずだらだら歩きながら言ってます。
「さて、気持ち悪いコントはさておき。トモエさん、あたしのガリガリさん一口食べまる?」
「いいよいいよ。ぜんぶ一人で食べなよ。僕はいいから」
「まぁまぁ、そう言わずに」
「じゃあ、一口だけ貰おうかな?」
くそう、なにをラブコメってんだこいつら。
「タカヤ、私のアイスを一口食べるか?」
「レン、全部食い終わってから言っても意味ないんだぞ?」
「くっ、しまった!」
ちょっと和んだ。そんな帰り道だった。




