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分霊って奴なんだろう

 夜の街を駆け抜ける。

 屋根から屋根を飛び移り……ヤバイ、なにこれ、カッコよすぎる。


「タカヤ! これなんかすごいカッコイイ! やばいよ! これ楽し過ぎ!」


「ああ、うん。そっか。よかったな」


 でもなんかタカネの方がずっとハイテンションなせいで、オレはなんか冷静になってる。

 あれだよね。自分よりパニックになってる人を見ると、逆に冷静になるみたいな。


「やっべー! 中二になっちゃう気分がわかっちゃったよ! あーもうこれたのしすべぁっ!」


 電柱に激突したタカネが地面に落下していく。ばっかじゃねーの?

 とりあえず、タカネを拾い上げて負ぶって移動する。


「いでぇよぉ……いでぇよぉ……」


「漢らしく呻くのやめろ」


「いでぇよぉ~!」


「うるせー! 拳法殺しは黙ってろ! 投げ捨てられてーかデブ!」


「あたしはデブじゃねーよ! 体重22キロだぞ!」


「かっる!」


 確かに軽いとは思ってたが、まさかそんなに軽いとは。


「ちなみに身長は?」


「120だけど? あと1ミリ伸びりゃ121になるんだけどなー。期待薄か……」


「ちっせー……で、スリーサイズは?」


「お前そんなもん聞くなよ……上から順に、7.7、7.8、3~89700、2~89900、328万倍、57、57、40、55、5、883、847、18、18だけどさ」


「待て、謎の数字が多いぞ」


 最初から謎の数字が多いんだが。マジでなんの数字だ?


「あ、メンゴメンゴ。スリーサイズ以外も入れてたわ」


「スリーサイズどころじゃないものまで含めてるだろ、絶対に」


「気にすんなって」


 いや、気になるんだけど、割と。まぁいいや。聞いても教えてくれなさそうだし。


「ちなみにレンのスリーサイズは?」


 隣を並走しているレンに問いかけてみる。

 するとレンは首を傾げる。


「すりーさいず?」


「ああ、スリーサイズって言うのはべぶっ!」


 背後から頭叩かれて舌噛んだ。めっちゃいてぇ。


「はにふんだよ」


「あのね、あたしにそう言うセクハラ質問すんのはいいよ? セクハラって意識も殆どないし、タカヤだし。けどレンにセクハラしちゃったら拙いっしょ……?」


「……まぁ、確かに。じゃ、魔王にセクハラするか。魔王、お前スリーサイズは?」


「知らん」


 おーまいごっど。まぁいいや。あんま興味ねぇし。


 っと、神社が見えてきた。

 ……すっげぇな、とんでもない力が渦巻いてるのが見える。

 これは、信仰心のみならず、捧げられた祈り自体の持つ力か……。

 人々の祈りから力を得てるわけか。

 だから信仰心の薄れた時代でも神格が存続できてると。


「すっげーな、色々と……」


 ものの見方が変わると、こうまで変わって見えるとは……。


「確かにこれはスゲー」


 タカネと一緒にスゲースゲーと連呼。

 同じこと連呼してると、なんか頭悪くなったような気がする。


「私は神職ではないが、ここに清浄な力が渦巻いている事はよく分かる。人々がここにおわす神をよく敬っている証だな」


 レンが実に感服した、と言わんばかりに何度も頷きつつ言う。

 でも、現代社会で神様信じてる人間がどれだけいる事やら……。


「ちなみにオレは括約筋の神を信仰してるよ。特に電車の中での信仰心は本物だぜ」


「あー……あたしも括約筋の神様信仰してるわ。この姿になってから、我慢が効かなくなってさ……」


「体小さくなったからだろうな」


「うん……あと、男と女だと、女の方がガマンが効かないんだって……」


「そ、そうか……」


 ちなみにこれ尿意の話。括約筋って言うのは、尿意と便意ガマンする時にがんばってくれる筋肉の事だからな……。


「まぁ、信仰は人それぞれだ。括約筋の神が何を司っているかは知らんが……」


「えーと……水神、かな?」


 尿意的に考えて。


「水神か……うむ、水神は大事だな。生活に密接に関係した、なくてはならないものだ」


 確かに密接に関係してるわ。括約筋には必ずお世話になるし。


「まぁ、そう言う話はさておき、さっそくお参りに行こうぜぇ!」


「ひゃっほう! 狐耳美女だ!」


 そう言うわけで、本殿に侵入。

 え? そんなことしちゃあかんって?

 勇者なら入っちゃいかんって言われた場所に入るくらいやるだろ。


「神様ー! かーみーさーまー!」


「尻尾もふらせてー! もふもふもふ! もふもふさせてー! もふりもふらーもふりすとのあたしにもふらせてー!」


 そう言いながら、ご本尊の中に突入すると……そこには霊子で構成された存在が居た。

 間違いなく神格だ。だが……だが……!


「馬鹿なっ! 狐耳が無い!」


「うそだと言ってよ!」


「何故だ!? なぜ狐耳が無い!」


 ふつーに美女な人でした。なんでやねん、おかしいやろ!

 稲荷社なんだから、狐耳が居て当たり前やろ!


「あら、こんなところにお客様だなんて懐かしいわ。さあ、どうぞどうぞ」


 あれ、なんかフレンドリーに出迎えられたぞ。

 神様ってこんな感じに軽い存在だったっけ?


「えーと、あの……この神社の神格ですよね?」


「はい。ウカノミタマです」


 ウカノミタマ……知らん! オレの知ってる日本の神格なんて、有名どころくらいだ!


「ここは教えてトモエてんてー! ウカノミタマってどんな神格?」


「うん、いい質問だね、タカヤくん。ウカノミタマというのは伏見稲荷大社の主祭神としても有名な、豊穣の神の一柱だよ。生まれの経緯は記されたものによって異なるけど、豊穣伸や田畑の神であるというのは一致しているね」


 なるほど。よく分かった。やっぱり稲荷なんじゃねーか!


「せんせー、なんで狐耳がないんですかー? お稲荷様だったら狐耳があるのは当然ではー?」


「それはね、稲荷というものがまず何か? という所にあるね。稲荷って言うのはイがナルこと。つまり、稲が生る事から生まれたんだ。詳しいは話は省くけど、稲生りから転じて稲荷になったのは間違いないよ」


「……ってことは?」


「狐がよく現れるのは、稲荷神であるウカノミタマの別名であるミケツノカミに当て字をした時に三狐神になったから。古くは狐はケツと呼ばれていたんだよ」


「すいません、ケツってもう一回言ってくれます? あいえやっぱなんでもないです」


 タカネの殺気に黙らされる。こわい。


「続けるよ? つまり、元々は狐とは何の関係も無かったんだよ。とは言え、狐の字が当てられて千年以上。人々は狐と関係があるとみて、稲荷神には神使や眷属として狐が現れるようになったんだ」


「……じゃあ、狐関係ないんですか? やだー!」


「いや、やだって言われても困るんだけど……」


 それでもやだー! やだー!


「見てください! 泣いてる子だっているんですよ!」


「えぐっ、ぐすっ……あうう……あ、あたし……もっふもふのしっぽ……たのっ、たのしみにっ……ひぐっ……してたのに……」


 ガチ泣きなんだか嘘泣きなんだか判断に困るタカネを指差して言う。


「でも、人々の信仰って言うのは曖昧なものだからね。狐としての要素も持っているはずだよ。それが見えないって言うことは、本人が隠してるからじゃないかな」


「なんですと!? 神様! うちの妹は狐の尻尾をもふらないと、全身の毛穴からレーザーを発して焼死する病を患ってるんです!」


「とは言いましても……わたくしは狐ではありませんから……」


 おーまいごっど! あ、この人はマジで神でした。

 ああ、ちくしょう……なんでこんなことになってしまったんだ……。

7.7、7.8、3~89700、2~89900、328万倍、57、57、40、55、5、883、847、18、18


上から順に、右視力、左視力、右聴覚、左聴覚、嗅覚、バスト、アンダーバスト、ウェスト、ヒップ、出入り口から終端までの距離、右握力、左握力、右足、左足。


タカネの感覚器官、聴覚や嗅覚はタカヤを遥かに超えています。猫よりもちょっと上くらいです。

タカヤの感覚器官はあくまでも人間の範疇でしかありません。

ただし、身体能力自体はタカネの倍近いです。つまりタカヤの握力は1トン超。

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