きのこ、たけのこ、すぎのこ戦争
カーチャンに修也の好きな人についての話を暴露した後、トモエさんの居る客間へと。
「トモエさん、具合でも悪かったんですか?」
「え? なんのこと?」
「いや、ローザんとこ行った時、すぐ帰っちゃったじゃないですか」
そう言うことはしない人だと思っていたのだが、具合でも悪かったんだろうか。
しかし、今見る限り、特に具合が悪いという感じはしないが……。
「ああ……ごめんね、ちょっと理由があってさ」
「理由って言うと?」
「ロザリンデちゃんだっけ。あの子、凄いガンコな子でしょ?」
「そーですねー。自分の考えは絶対に曲げない類の人間です」
あいつ、タケノコ派だから、キノコ派と苛烈な戦争を繰り広げてるしな。
オレ? オレはスギノコ派なんで。
「僕も自分の考えは絶対に曲げない類の人間だからね。あの子とはたぶんどこかで衝突しちゃう」
「ってことは、キノコ派なんですか?」
「僕はきりかぶ派かな」
それ作ってる会社違うじゃんか。
「僕は絶対に自分を曲げない。そして、あの子も絶対に自分を曲げない。それは何処かで衝突しちゃう。ただの衝突ならいいんだけど、あの子はまだ若い。殺し合いにまで発展しちゃうかもしれないからね」
「で、衝突を避けるために、そもそもの触れ合いを回避したと」
「うん。そう言うの嫌でしょ?」
「まぁ、そうですね」
もし殺し合いに発展したとなれば、オレはたぶんローザにつく。
そうすれば、必然的にトモエさんと殺し合いをすることになる。
そういうのはいやだ。みんな仲良く行きたいもんだ。
「苦労かけます、ほんと」
「慣れてるから大丈夫だよ。ああいう子の知り合いは多いから」
「そうなんですか?」
「朝菜くんもそう言う類の人間だしね」
「誰ですかそれ」
「ああ、本屋の店主をしてる子」
ああ、店主さんか。朝菜って名前だったんだな……。
「まぁ、あの子は自分のやりたい事さえ出来れば後はどうでもいいって類の子だから仲良く出来るんだけどね」
「マッドサイエンティストみたいな人ですね」
「あってるよ。あの子、魔法学だけじゃなく科学技術の研究者でもあるから」
あってるんだ。
「しかし、研究者ですか。ここらへん研究者もたくさん住んでるんですよね」
「そうなんだ?」
「はい。野良猫が殆ど居ないのは、その研究者たちが実験動物にしてるからって噂が……」
まぁ、さすがにウソだとは思うけど。
猫とか犬を実験動物にする奴は早々いないだろ。
「ただ、マジで凄い研究者がたくさん居るんですよね。うちの高校にロボット作る人とかも居ますし」
「へぇー。そう言う部活とかもあったの?」
「ええ。ロボット系の部活とか幾つかありましたよ。オレも所属してましたけど。……学校の部活、どうにかしないとなぁ」
正式に所属してたわけではなく、部室に入り浸ってただけなのだが。
しかしいつの間にか部員として扱われ、オレの人脈の有用性から、部活内では重宝されていた。
「タカヤくんって部活なにしてたの?」
「骨格式人工筋肉駆動独立歩行戦車開発部と、骨格式人工筋肉駆動独立歩行戦車試験部です」
「……部活?」
「部活です」
明らかに高校でやる事ではないんだけどな。
「タカヤくんもロボット作ってたの?」
「いえ、オレは先生方の説得とかその辺りの交渉役やってました。あと、作ったロボットのテストパイロット」
「乗れるロボットなの?」
「乗れますよ。普通に走れますし。造った奴、どんだけ天才なんだよって話ですよね」
どうやって作ったのかスゲー気になるよな。
作った当人たちは、シルエットが不細工だとか、機動性がクソッタレ過ぎるとかで満足してなかったけど。
「まー、いわゆるスーパーチルドレンって奴なんだと思いますけどね。多いんですよ、この町」
「スーパーチルドレン?」
「三十年くらい前から世界中で突然現れはじめた天才児たちです。色んな分野で天才性を発揮するんです」
ちなみにうちのカーチャンもその一人だったりする。
格闘技の分野でメチャクチャ強かったらしいが、うちのトーチャンに会って引退しちゃったんだってさ。
引退が十代の前半っていくらなんでも早すぎるだろ。
「なんでも、スーパーチルドレンの人達はなんらかの共通見解があって、自分からそこに集まる傾向があるらしいんです」
「それがこの町だったってこと?」
「正確に言えば県ですけどね」
カーチャンによると、この県が世界的に見ても一番安全な場所だから、らしいが。
どういう意味かは全く分からん。
山形とか岩手じゃダメなのかって聞いたら、山形は日本海に接してるからだめ。
岩手は及第点だけど、宮城の方が安心できるから……らしい。
「この町の辺りにスーパーチルドレンが多いのは、単純にこの辺りに住み始める人が多かったかららしいです。最初に住み始めた人がここら辺の人間だったらしくて」
「なるほど。仲間内で集まってたら、この町がスーパーチルドレンの町になってたってこと」
「そう言うわけです」
ここが例外的に多いだけで、他の場所にも住んでる人は居るんだけどね。
ただ、スーパーチルドレンって言うのはなにかの認定があるわけじゃない。
なので、この町に多いっていうのはオレの勝手な考えだったりする。
「それにしても、スーパーチルドレンね……」
「なんか気になる事でもあるんですか?」
「ちょっとね。この世界、変なところが多すぎる」
そんなに変なんだろうか。オレには自覚がないんだが……。
生まれてこの方、この世界で生きて来たんだし。
「まぁ、気になるとは言っても私的に気になってるだけだから気にしないで。そんなに変なことは起こらないと思うから」
「はあ」
それ逆に言えば、さほど変でない事は起こるかもしれないって事だよな?
嫌だなあ……平和に暮らしたいでござるよ……。
「そう言えば話が脱線しましたけど大体わかったんで。ローザとは無理せずやってってください」
「うん。ごめんね、なんだか迷惑かけちゃって」
「いえいえ、アイツが変なだけなんで」
タケノコ派が変って意味ではなくてな。
いずれにしろ、アイツが変人なのは確かなんだけどさ。
「そう言えば、そろそろ風呂も空くと思うんで入って来ちゃってください」
「ああ、うん。お先に失礼するね」
……トモエさんに風呂入って来ちゃって、って言うと、なんだかイケナイ気分になるのはオレだけだろうか。
そんなバカなことを考えながら、オレは自分の部屋に戻るのだった。




