映画はデートの定番
激しい論戦の末に、オレがアイス奢ったら千里は帰ってくれると言う結論に終わった。
大いなるバスキン・ロビンスの威光の下に黙らせる作戦は成功だったと言うわけだ。
家族の分買って帰るとか言う理屈で大量に買わされてちょっと懐が寒くなったが、まぁ、許容範囲だろう。
「やれやれ……」
これでようやく落ち着いて買い物が出来る。
そう思いつつシエルちゃんに声をかけようと振り返ると、シエルちゃんとアリシアちゃんがお喋りしている最中だった。
アリシアちゃんが来る途中でイチゴミルク飲んでおいしかったとかそう言う話。
それを聞いて興味津々に頷くシエルちゃん。なんかよくわかってないけどうんうん頷いてるレン。
「ちょっと待て。なんでお前居るんだ」
さっきまで居なかったはずのレンの肩を掴んで問い質す。
ちなみに今日はさすがに着物姿ではなく、ホットパンツにシャツと活動的な恰好だ。たぶん、千里のお下がりだな。
「ああ、朝菜殿が連れて来てくれた」
「そう言う事を言ってるんじゃない。なんでいるんだ」
「いかんのか?」
「いかんでしょ」
「そうか……すまなかったな、帰る……」
「ごめん、ウソウソ。レンが帰ると淋しいから帰っちゃやーよ」
淋しそうに肩を落として帰ろうとするんだから引き止めざるを得ない。
まぁ、シエルちゃんとだけデートと思ってたけど、これも仕方ないか……。
「と言うか、シエルちゃんはみんなと一緒に遊ぶのでもいいの?」
「はい! みんな一緒に仲良くが一番です」
「そっか」
シエルちゃんがそう言うならいいんだが……。
ぶっちゃけこの三人と一緒にいると、デートしてるって言うよりただの引率のお兄さんにしか見えないんだよな。
そう言う理由もあって一人だけの方がよかったのだが……。
何より一人じゃなかったらそれデートか? って言う疑問が……。
「まぁ、しょーがない」
オレが引率するとなると、このスーパーナイスガイのオレがやさしさに溢れまくってるように見えるから、周囲に騒がれちまうんだがな……。
主に、未成年略取とかその辺りの容疑をかけられる感じで騒がれたりな……。
まぁいいや。気を付けてれば大丈夫だろ。この辺り知り合い多いだろうから、きっと弁護してくれるはず。
「で、店主さんはいつ帰るんですか?」
未だに残ってポッピングシャワーとチョコミントのアイスを食べてる店主さんに尋ねる。
子供みてーなチョイスだな。
「いえ、私は別件でここに来たのでもうちょっと居ますよ」
「へぇ、何しに来たんですか」
「アイスが食べたくなったんです。ポッピングシャワーとチョコミントのフレーバーは最高です」
「……そうですか」
顔をべちゃべちゃに汚すとかはしてないが、まるっきり子供だな。
「次はクッキーアンドクリームとバニラで攻める事にしますか……いやしかしクレープも捨てがたい」
バスキン・ロビンスの隣の店舗のクレープ屋を見つめて店主さんが悩む。
「……両方食べれば?」
「ええ、その手もあるでしょう。しかし、満腹感はどうにでも出来ますが、精神的な飽きはどうにもなりませんからね。その飽きが来る前に最大限美味しく食べたいんですよ」
「そうっすか……」
「ふむ、どうしたものですかね……」
顎に手を当てて悩みつつアイスを食べる店主さん。
体格に見合わないスーツ姿なだけに、背伸びしてる子供っぽくてなんか可愛い。
「……じゃ、オレたちはここらへんで。楽しんでってください」
「ああ、はい。お気をつけて」
店主さんに別れを告げて歩き出す。
さて、まずは水着か……いや、買い物すると手荷物が増えて面倒臭いし、その前に遊ぶか。
「ふーむ、何をして遊ぶかな。アミューズメントパークで遊ぶと言うのもありだが、ここは一つ、映画を見に行くとしよう」
うん、映画。夏休み手前だからあんまいい映画は無いけど、愉しめる映画もあるだろ、多分な。
「ねぇねぇタカヤ」
「はいはいアリシアちゃん、なんだい」
「映画ってなに?」
…………そう聞かれるとなんて答えたもんか困るな。
「えーと……こう、デカい画面で……アニメとか、見れる……」
「おっきいテレビ?」
「いや、なんかこう、違うんだ。ああでも違わないような……なんて言ったらいいんだ」
本当になんて言ったらいいんだ?
映画とはいったい……うごごご!
「とりあえず見に行けばいいと思います! そうすれば分かるんじゃないですか?」
「それだ。今シエルちゃんがいい事を言った。と言うわけで、映画を見に行こう」
なにはともあれ見ればわかる。と言うわけで、映画を見に行く。
なのでシネマのフロアに来たわけなのだが、ろくな映画が無い……時期が悪いな。
「シエルちゃんは何見たい?」
「えっと、えっと、あれ見てみたいです」
「どれ?」
「あれです!」
そう言って指差す先を追う。……しっぶい映画だな。
おもっくそ洋画の上に、どう考えても内容が子供向きじゃないって言うか……。
シエルちゃんって渋い趣味でもあるのか?
「えーと、なんで?」
「面白そうだからです!」
「そ、そっか」
この子、ちょっと感性がおかしいな。……いや、なんとなく知ってたけど。
普通の感性してたら魔王拾って来たりとかしないし。
「アリシアちゃんは何が見たい?」
「あれ!」
「ほう、中々無難なチョイスだね」
うん、普通のチョイス。子供らしいと言うか、普通にアニメ映画をチョイスした。
そう言えば、シエルちゃんと一緒にテレビにかじりついてる事も多いっけな。
それで居てシエルちゃんとアリシアちゃんの映画のチョイスがほぼ真逆なのは……やっぱ本人の気質なんだろうか。
「で、レンは?」
「あれだ」
指差した先には……なんと重っ苦しい戦争映画3本立てが! 上映時間6時間!
「……本当に見たいのか?」
「うむ。この世界の戦争に興味がある」
「そ、そうか……」
そう言えばコイツ、武人の家出身だっけ? まぁいいや。
しかし見事に意見が分かれてしまったな。渋い洋画、子供向けのアニメ映画、スプラッター描写ありの戦争映画……。
…………考えるまでもなく1個しか無いよね。
そもそも最後の戦争映画とかR-18だし。




