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奇跡の確率は

 さて、家に戻って来て、レンとタカネを風呂に放り込んだ。

 レンは一緒に入ろうと言ったが、うちの風呂は狭いのでやめといた。

 いちおう入れないこと無いと思うが、せまっ苦しいのでいやだ。

 まあ、あれだ。レディーファーストって奴ですよ。オレは女性に気遣いの出来るナイスガイなんだぜ。


「ナイスガイなオレはクールに麦茶を飲むぜ……」


 コップの中身を呷り、それを飲み込む。


「……最近の麦茶はカツオ出汁の香りがするんだな」


 どう考えても麺つゆじゃん、これ。

 なんで麦茶のペットボトルに入れておくんだよ、カーチャン。

 ……絶対に面白そうだからだな。オレも同じこと考えるし。

 牛乳瓶に米の研ぎ汁を封入したりしたし。


 さておき、茶の間の座布団に座り、一息つく。

 今度はちゃんと麦茶を注いだコップを持ってだ。


「ふー……」


 ゲームをしている修也を見やる。見たことないゲームだな。

 オレが異世界に行ってる間に発売されたゲームか?


 千里に目線をやると、ノートパソコンに真剣な顔で向かってる。

 大学のレポートかなんかだろうか。邪魔しちゃ悪いし、声はかけないようにしよう。

 とすると、必然的に声をかけるのは修也になるな……。


 まずは、この一年で何か変わったかを聞くか。

 修也も中学生になったんだしな。対人関係だって変わってるだろう。

 となれば、質問は一つだな。


「修也、彼女出来たか?」


「タカヤ! あんた言っていいことと悪いことの区別もつかないの!?」


「千里さん、オレ彼女の有無聞いただけですよね?」


 質問した直後に千里に凄い剣幕で怒られた。

 その怒り方はおかしいだろう。


「……いろいろと言いたい事はあるけど、ボクに恋人は居ないよ。孝也だってそうでしょうが」


「うん、まぁ、うん……」


 恋人は居ない。居ないが……嫁が居る。

 でも、しばらく秘密にしておこう。面白そうだし。

 カーチャンも秘密にしてくれるだろう。面白そうだから。


「あ、でもさ、好きな人はいるんだよ。学校で何度かすれ違うんだけど、一目惚れって言うのかな……そう言う感じで……」


「そうか……修也、気を落とすなよ。世の中には女は星の数ほど居るんだからさ。お前と付き合ってくれる酔狂な子も居るって」


「既にフラれてるかのように話さないでくれますかね」


 だってフラれるだろ。まず間違いなく。

 小学校時代に二人に告白して見事に玉砕したの知ってんだぞ。


「ったく……姉ちゃん、孝也になんとか言ってやってよ」


「孝也、世の中には奇跡があるんだよ? その奇跡を掴み取りに行くのが人間って奴じゃないかな?」


 いいこと言ったぜ……と言わんばかりの表情だが、まったくもってフォローになってねぇぞ。


「まぁ、修也に彼女出来るのって宇宙人が攻め込んでくるのと同じくらいの確立だもんな」


「その攻め込んで来た宇宙人が修也に惚れる可能性は?」


 ラブコメなら在り得る設定かもな。だが……。


「まさにそれこそ奇跡って奴じゃね? けど、どんなに僅かでも起こる可能性があるから奇跡って言うんだぜ?」


「まぁ、起こらないから奇跡とも言うんだけどね」


 身も蓋もねえ。


「……もういいよ。二人には話さない!」


 あ、修也がキレた。

 やれやれ、これだから常識人は……。

 オレ達と同じように非常識になっちまえばいいものを。

 千里だって結構な天然ボケで、非常識人なんだし。


「まーまー、怒るなって、修也。で、その好きな人ってのはどんな人なんだ?」


「…………」


 ありゃ、喋らないつもりか。拗ねるなよなー。


「ったく、しょうがねぇな。こうなったらオレの65536ある特技で修也の好きな人の姿を知るしかないな」


「そんな特技あるの?」


「あるよ」


 65536個あるのかは自分でも知らないけど。割と適当に言ってるし。


 さて、ファックス機能つきの我が家の電話に繋がる電話線を引っこ抜く。

 そして、電話線を差し込む穴に指を突っ込む。


「はぁっ! 必殺! ヒーローソートグラフィー!」


 説明しよう! ヒーローソートグラフィーとは勇者の使える65536の特技の一つだ!

 この特技は気合いと根性で、知りたい相手の事を映し出す特技だ!

 本来はポラロイドカメラの印画紙で行うが、プリンターやファックスでも代用可能だ!


 まあ、要するに念写だ。


「出てきた出てきた。へー、美人じゃん」


 ガーッ、と出てきた紙を手に取ると、そこには確かに美少女が映っていた。

 白黒で少々荒いが、元がファックスだから仕方ない。


「うわ、ホントに画像になってる。これが修也の好きな人?」


「たぶん」


 こればっかりは修也に聞いてみないと分からない。


「修也、これお前の好きな人?」


「はぁ? って、ちょっ!? なんでそんな画像あるの!?」


「必殺ヒーローソートグラフィーで作った」


「なにその怪しい必殺技!?」


「主にお前の秘密を必殺する」


 修也の秘密はこれによってオレ達に知られ、秘密足り得なくなった。

 くっ、我ながらなんて恐ろしい必殺技だ……。


「修也の反応を見るにどうやらこの人であってるらしいな。カーチャンに見せて来よう」


「やめろ!」


 修也に奪い取られてびりびりに破かれてしまった。

 あーあ。


「まったく! ボクもう寝るからね!」


「はい、おやすみ」


「おやすみー」


 修也が立ち去ったのを見て、オレは近くの棚からプリンターを取り出す。

 正月に年賀状作る以外には滅多に使わないが、今ここで活躍の場を与えてやるぜ。


「孝也、電源もコードも無いよ?」


「なんとかなるって」


 電源コードを差すところに左手の指を突っ込んでがんばって電源を入れる。

 そして、パソコンとつなぐコードを差すところに右手の指を突っ込み、がんばる。


「はぁっ! 必殺! ナイスガイプリンター!」


 さっきと名前が違う気がするが、まぁどうでもいい。

 念写さえ出来りゃそれでいいんだから。

 さて、紙が出て来たな。……うん、ちゃんとプリントされてる。


「今度はくっきりはっきり鮮明プリントだ!」


「ひゃー、可愛い子だねぇ」


 確かに。カラーだとなおさら美少女に見えるな。

 これは修也じゃなくてもフラれるわ……。


「さて、んじゃ、カーチャンに見せに行くか」


「だね」


 それからトーチャンにも教えてやろう。

 これが修也の好きな子ですって。家族みんなで分かち合わないとね!

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