【彩りの初恋】
穏やかな春の陽射しが見守ってくれていると信じ、貴之は身体にぎゅっと力を込めた。いざ、自分の素直な気持ちを伝えるとなると、尻ごみする。だが、今が最良のタイミングで、今を逃したらいつまたタイミングが来るか分からない。貴之は自分に言い聞かせる。結果はどう転んでも仕方ない。五分五分だと思っている。いや、成功することに七割はかけたい。それは希望だ。どうしても、春里の心が覗けない。気持ちが分からない。好かれている事は充分分かっている。だが、それはどういう意味合いなのか。春里が持っている感情が貴之と同じように恋愛感情ではないかと思ったこともあった。だが、今思うとそれは兄妹愛だったのではないか。初めてできた兄弟が嬉しくて慕ってくれていただけなのではないだろうか。そんなことの繰り返しだ。だからこそ勇気が出てこない。だけれど、最善を尽くしたと思いたい。だから今なのだ。
この鮮やかに彩られた自分らしくない感情をきちんと伝えなければこれからの道を選んだ意味がない。きっと、春里が隣にいてくれたら、こんな鮮やかさがずっと色あせずに続くのだろう。貴之は自分の甘っとろい考えに苦笑した。
貴之は一度深く呼吸をした。そして、じっと前を見て、穏やかな風に揺れている青々とした木を見つめた。自然と心が凪ぐ。不思議な感覚だ。隣には大好きな女性がいる。
「俺、春里が好きだよ。女性として好きだ。こんな感情、初めてだからきっとこれが初恋だろうな。だから家を出る。一緒の家にいたら爆発しそうだからさ」
貴之はゆっくりと視線を春里に向けた。優しい温かな眼差しがそこにあった。それと同時に戸惑いも見えた。春里の瞳が揺れる。だけれど、その視線は逸らされなかった。
「春里の気持ちは今じゃなくてもいい。きちんと考えて答えを出して、俺に会いに来て欲しい。俺は本気だから。きっと恋人同士になったら、俺、ちょっとやそっとのことじゃ手放せなくなると思う。だから相当な覚悟を持って」
貴之は微笑んだ。心配いらないと伝えたかった。そして、そっと春里の頬を撫でる。春里はいつものようにゆっくりと眼を閉じた。
「じゃあ、戻ろうか」
「――はい」
結果がどうなるのか分からない。けれどきっといいことなんだ。前に進むには通らなければならない場所だから。
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本当はここで最終回の予定でした。私はどうしてもこういう終わり方が好きなようで。でも、その後のイベントが思い浮かび、書けるかも、と過剰な自信が……。書き始めたのはいいですが、実はエンディングが思いつかないと言うなんとも大切な場所を欠落した見切り発車で。でもまあ、終わりどころがどこかで現れてくれるでしょう。それよりもなによりも、わたしは恋人同士をどう描けばいいのかが分からない……。という不安のもと、二人には甘っとろく進んでもらいたい思いです。
次回は始まり編になります。1月15日火曜日から更新開始しようと考えています。もしよかったらこちらもお付き合いください。ずっとこのページで続けていく予定です。




