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初恋の彩り  作者: みこえ
~出逢い~
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【悲しみの後に訪れる日常】

 テスト当日に春里と貴之は学校に行き始めた。貴之にはいっぱい迷惑をかけたと思う。だが、本当にいてくれてよかったと春里は感謝している。もし、あの家に一人取り残されていたら、不安や淋しさに押しつぶされていたかもしれない。貴之が視界の端にいる、貴之の存在が感じられる、そんなことで安心できた。貴之の温もりや優しい声が春里の心を掬いとってくれる。



 その日は珍しく、二人同時に家を出た。貴之が春里を心配してのことだった。しかも学校近くの駅までずっと手をつないでいた。いつもなら拒否をするところだが、貴之の温もりを感じるだけで安心できるため、春里はそのまま手をつないでいた。手が離れると淋しいのだ。強がりの春里は貴之には言えないけれど。



 クラスのみんなはみんな一様に心配そうな顔をしたが、春里が微笑むと、安心したように微笑み返してきた。


「春ちゃん、ノートのコピーありがとうね。きちんと手元に届いたよ」

 姫川のノートの写しは本当に役に立った。

「よかった」

「奏太さん、一見へらへらしてそうだけれど、そういうところはしっかりしているからね」

 春里の言葉に姫川は笑った。


「別にそこを心配していたわけではないんだけどね」

「でも、ごみ箱に捨てられちゃうんじゃないかって少しは心配したでしょう?」

 姫川はまたクスクスと笑う。心配されるより普段と同じように接してもらいたい。春里の思いはそれだけだった。




 帰りは当たり前のように奏太が待っていた。

「春里ちゃん、久しぶりだね」

 いつもの調子で話しかけてくる。春里はいつも通りに微笑み、奏太のもとまで歩いた。


「貴之は外で待っているよ」

「一応気を遣ってくれているんですね」

「そりゃそうでしょう」

 奏太が歩きだしたので、春里も一緒に歩きだした。


「ドーナツありがとうございました。あのドーナツおいしいですよね。しっとりしていて」

「いやいや。あのくらいはね。あのドーナツも好物で良かった。と言うより、甘いもの全般は好物だよね」

 奏太は春里をからかうように顔を覗きこむ。

「はい。わたしの舌は難しい事は言いません。いつでもお土産お待ちしていますよ」

 春里がにっこりと微笑むと、奏太は楽しそうにクツクツと笑った。


「この間、家に行った時、貴之が夕飯作っていたけど、貴之の料理って美味いの?」

「美味しいですよ。教えたのはわたしですからね」

「ああ、そうなのか。なら上達するね」

「先生がいいですからね」

 最初はどうなるかと思うくらい危なっかしかったが、今は立派に肉じゃがを作れる。この場合、味付けがどうこうではなく、じゃがいもや人参をきちんと切る事ができると言うことだ。


「俺は春里ちゃんの手料理食いたい。貴之が羨ましい」

「よく言いますよ。違う人の手料理が食べたいんでしょう?」

「うっ」

 奏太はわざとらしい反応を見せた。


「やっぱりそういうのを夢見ますか?」

「それのもっと手前をまずは想像するでしょう。手料理はハードルが高い感じがするもん」

 奏太は恥ずかしげに微笑んだ。


「たとえば?」

「告白をしてその気持ちを受けてくれる事。手をつないでデートをする事。まずはそれだよね。手をつなぐんだってハードル高いんだから」

「手はわたしともつなぎましたね。そう言えばデートもしました」

「ありゃりゃ」

 奏太はわざとらしく右手を額に当てた。


「まあ、その辺は大目に見てもらって」

「わたし的にはお友達として、だったので、あれはデートではないですよ。という事にしてあげます。まあ、奏太さんもハードルは高くなかった時点でそういう感覚だったんでしょうけど」

「そりゃどうも。春里ちゃんには敵わないね」

「で?その続きは」

「え?ああ。その後は帰り際のキス。恥ずかしげに俯く彼女、てね。キスもタイミングを考えちゃって難しいもんだよね。こういうのって気が焦るのと、気後れするのとで葛藤。そして、その後にかわいらしいお弁当ってところかな」

 確かに恋人のお弁当は嬉しいかもしれない。キッチンで恋人が作っている姿を眺めると言うことは結構難しいから、それに比べたらお弁当はハードルが低い。奏太にとってはその前に、飛び越えなければならない高いハードルがいくつもあるようだが。


「色とりどりの栄養を考えたお弁当ですね。それをお昼休みに一緒に食べる。いいですね。恋人らしい」

 春里の言葉に反応して奏太は照れていた。不器用な彼女が懸命に作ってくれた不格好なお弁当という設定もまたいいかもしれない。


「何が恋人らしい?」

 突然の声に驚いたのは春里と奏太だ。

「仲良いよな、二人は」

 少し不貞腐れている様子の貴之が姿を見せた。


「違いますよ。恋人の手作り弁当はいいねって話です」

「はあ?何でそんな話しになる?」

「うんと、奏太さんがわたしの手料理を食べられる貴之さんが羨ましいと言う話からの展開、かな?」


 突然、貴之は眼を見開き、俯いてしまった。なぜそんな反応をするのか春里には分からなかった。だけれどなぜか、奏太はそれを見て楽しそうに笑っている。奏太にはどうして貴之がそんな反応をしたのか分かっているのかもしれない。


晴れて明るく登校です。何日休んだか?という辺は気にせずに。


次回はクリスマスイブ。いいタイミングだと思っていたのですが、随分タイミングを外しましたね。

次回は3話同時更新になります。


次回もお付き合いください。

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