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足元の海  作者: 天下響
8/12

―はじまりの日―

台風は夜中のうちに勢力をなくし、夜明けとともに大陸の海上へと抜けていったらしい。

翌日は素晴らしい晴天だった。

私は慌てて、溜まっていた洗濯物を全部洗濯機に放り込み、ボタンを押した。

妹も私も働いているので、家事はそれぞれが休みの日に、自主的にやることになっている。

洗濯機を回し、掃除機をかけ、洗い物をして、家中の窓を開ける。秋らしい、心地よい風が吹き込んでくる。

今日は特に予定のない休日だった。

のだけれど、昨日うんざりするくらい来ていた迷惑メールの中に、一件、気になるメールがあった。

出会い系サイト経由で、男性からきたものだ。


いかがわしいタイプのものではなく(と信じたいのだが)、お見合いと名のつくサイトに、私は登録している。何しろ、本当に、全く、出会いがないのだ。百貨店にはそもそも男性が少なく、いたとしても中年の、子供もいるようなおじさんばかり。休日も不定休(毎月私がメンバーの希望を元にシフトを組んでいる)で平日ばかり、とあっては、言い訳するわけではないが、出会いようがないのだ。

身分証明をできるものを提示して、始めて登録できるタイプのものなので、そのへんの出会い系よりは、真剣に、将来の相手を探している人が多い。

ありがたいことに、今までかなりの数のメールが来た。ただあまりに来すぎて、逆に誰を選べばいいのか、ということがわからなくなってくる。

結局、自分なりに返信をする基準を設けることにした。

いわく、年収が700万以上 (図々しいのはもちろん承知で、お金はあるに越したことはない、うちはずっと貧乏だったので、玉の輿が夢だったのだ)。身長175センチ以上(私が165あるため、最低10センチ差は欲しい)。アプローチメールに自分のことしか書かない人ではなく、私の何に興味を持ったのか、を書いてきてくれる人。あとはとにかく、不躾ではないこと。年齢は、40歳くらいまでならなんとか。


とまあこんな感じだ。会ってみないと人となりはわからない以上、まずはデータによる選り分けをしなければ、埒が明かない。

その男性は、大阪在住の営業マン。38歳で、年収は800万だった。私の日記やプロフィールを見て、雰囲気が穏やかそうで、お話ししてみたいと思いました、とある。

まずは条件クリアだ。私は返信することにする。

まるまるさん、はじめまして。メールありがとうございます。私もプロフィールを拝見して、素敵な

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