143 天下分け目の戦い 13日朝「BATTLE of ASHIHARA」
央暦1970年4月13日
真田藩 真田空軍基地
葦原連邦空軍第1航空団『彰義隊』第1中隊『ペンギン』
志村“Chase”良介二等空尉
良介が今回の搭乗機であるナーガにたどり着くと、その異変は一目で理解できた。
「なんか、凄いドカ盛りになってないっ⁈」
そう言いつつタラップを駆け上り、準備されていたHMDを被ってチェイスになる。
エンジンの始動を始めると、機付長がコクピットを覗き込んだ。
「良介。昨日送られてきたこいつだが、合衆国の連中が少し追加したらしい」
それはチェイスも機体に電力が送られ、MFDが機能し始めてすぐに気づいた。
ガワだけでなく、機体のシステムがしっかり搭載した兵装の量を認識しているのだ。
「ナーガの武装?」
「そうだ。相変わらず電探積んでねぇが、
代わりにバカみてぇな量の兵装が積めるようになった。
調べてみたら、このくらい積んでも行けたんだとよ」
「さすが実験機だ」
作戦の第一段階は、長坂空港周辺の敵勢力の排除が主任務の対地攻撃。
故に、自衛用SRMは主翼端部ウェポンステーションに1発ずつ。
もうこの時点で手が入っている。
今までのナーガにはハードポイント、兵装取り付けポイントは主翼内側・外側の計4か所しかなかった。
しかし今は翼端2ヶ所含め計15ヶ所もあった。
兵装同士の物理的な干渉の問題もあるためここまでの数を実際に積むのは難しいが、ナーガはいまAGM-1を6発搭載していた。
これはF-2でも不可能な搭載量である。
思えば、ナーガはドラケンと似ている機体だが───
チェイスも実物を見たわけではないが、エースコンバットで見たこの機体と比べてパネルラインの継ぎ目が非常に少なく感じていた。
ドラケンとは全く無関係な機体なので当然だが、錬金術をはじめとしたこの世界特有の技術によって機体強度が比較にならないほど高いのだ。
もちろん、エンジンはF-2のそれをリバースエンジニアリングして複製したもの。
推力だって増している。
「まったく。デルタ翼のF-16じゃないんだぞ……」
「対地誘導弾なんてシャラくせぇモンだからこれだが……
こいつが航空爆弾だともっとスゲェぞ。最大12発だとよ」
「戦艦や要塞も単独で落とせそうだ……」
エンジンが始動し、荒々しい怒声が響き渡った。
あとはチェイスの操縦次第で、この無数の牙を持つ小さな蛇は空へ飛び立てる。
「いいか。
重武装なのはいいが、これほど積んでる状態じゃキビキビ動くのは無理だ。
いつものアホみてぇな飛ばし方したきゃ、撃ち切った後か投棄しろ。いいな?」
「わかってるよ。主翼真っ二つなんて御免だからね」
機体強度が高いとはいえ、2トン近い兵装を抱えていては極端な機動は危険だ。
フル武装でドッグファイトが出来るのは、エースコンバットくらいなものなのだ。
「ペンギン1! 第一出撃ではお前が最後だぞ!」
真田空軍基地のATCが通信で催促した。
ぶっつけ本番で負荷を増した機体を飛ばせとは、合衆国も無茶を言う。
しかし、ナーガに手を加えたのはエラだ。
魔王以外剥がすな!
そう書かれ、MFDに貼り付けられた付箋を見ればそう確信出来た。
彼女が期待してくれている以上、下手は打てない。
付箋を剥がすと、チェイスは畳んでポケットに収めた。
「ペンギン1、これより離陸する」
機付長と拳を交わすと、風防を封鎖する。
タラップが下げられ、整備隊の面々が安全距離まで退避したのを確認すると、ギアブレーキを解除。
滑走路に向かって移動を始める。
その道中、チェイスの後に離陸する連邦空軍連中からの敬礼に答礼しつつも、誘導路を進む。
滑走路で離陸中なのは、ボスのP-20ドゥン。
彼が空の彼方へ消えるのを見届けるのとほぼ同時に、通信機に交信が入った。
「ペンギン1、離陸を許可する。
姫様を頼んだぞ!」
「了解。任せときなよ」
女の子からの期待ではないが、ATCからの期待を受け止めつつ───
スロットルレバーを押し倒す。
長く短かった、世界博覧会を終わらせるための戦場へ。




