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蒼穹の魔王 ~F-2乗りのクソバカエース、異世界にて絶望的劣勢を覆す~  作者: 穀潰之熊
第三部 世博停戦

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103 世博展示飛行「THE DEMON LORD’s CIRCUS」

央暦1970年3月17日

長坂

葦原政府空軍先進開発実験隊『神機隊』

川端“ロック”六助大尉(だいい)


 例え戦闘をせずとも、飛行するならばどのような土地か知るに越したことはない。

 これは淳之介隊長の言っていた言葉だ。


「別に、低空飛行するわけじゃないんだろ?

対地攻撃じゃあるまいし」


 だとしても、知っていた方がいい。

 フライトに関わらないとしても、何か別な事で使えるかもしれない。


 僕の副操縦士(コパイロット)として、把握はしておいて欲しい。


「ふーん。こんな真っ平らな土地でねぇ……

ボクが覚える必要あるかなぁ?」


 興味なさげに、彼女は鼻を鳴らした。


 世界博覧会のチケットは持っていないけれど、周囲を走るくらいならチケットを貰う必要はない。

 展示飛行の下見というわけだ。


 幹道を北上し、世界博覧会の会場へ向かう。

 早朝ながら、既に会場へ向かうバスは運行を開始していて、複数のバスが空港に続く道路から合流している。


 すると、一つのバスが道路の真ん中で往生していた。


「あ? どしたの?」


 傾いた車体、タイヤを転がして死角へ消える運転手。

 脱輪したらしい。


「別にいーじゃん。どうだって」


 このままだと交通の妨げになる。

 それに、放置された人々は辛い思いをしているはずだ。


 放っては置けない。


「えー……ボクらの仕事じゃないじゃん」


 別に、君が手伝う必要はない。

 僕ひとりで行く。


 ブレーキを踏んで、動けなくなったバスの後方で停車する。


「んー……は?」


 助手席の彼女は不意に、視線をバスへ向けた。

 どうでもいい、僕はやるべきをやるまでだ。


「おいっ。ロック、待て……!」


 降車すると、バスの左側……僕の死角になっている場所で乗客たちは並んでいた。

 脱輪した左後輪の周囲には運転手と車掌、それと男がひとり。


 なんだか前髪の長い男だ。


 どうやら予備のタイヤを取り付けようとしているらしいけど、ジャッキの段階で手間取っているらしい。

 乗客が手伝えば、どうにかなると思うけど……


 みんな、力に自信がないのだろうか。

 なら仕方がない。


 僕は前髪の長い男に視線をやると、彼は語り掛けてきた。


「車体を持ち上げよう。頼める?」


 僕は頷いた。

 運転手とその男、3人で車体を持ち上げて……

 車掌がジャッキを入れる。


「ありがとう、助かったよ。

さすがの俺も、あれをひとりで持ち上げるのは無理だ」


 運転手と車掌が修理を進めているのを横目に、男はそう言った。

 基地の整備隊の方がもっと苦労して色々やっている。

 この程度は苦でもなんでもなかった。


 さて、問題が解決したなら帰ろうか。

 そう思っていると、ズボンを引っ張られた。


「終わったんだろ? なら、早く行こう……」


 普段は不遜(ふそん)な彼女がしおらしい態度で言う。


 珍しいな。

 大多数の普通の人を旧人類などと呼んで、普段は舐めた態度を見せる彼女が。

 こういう時も勝手に思考を読んで、反論するのに。


 促されるまま僕は運転席に戻り、エンジンを動かした。


「ヤバいよ、あいつ……なんかヤバいって!

お前もサトリなら、感じただろ⁈」


 何をそう血相を変えて説く必要があるのだろう?

 危険そうな人物は、あの中にいなかった。


「……いいか。あの乗客には、春川親王がいたんだぞ」


「え?」


 回想する。

 乗客の中には色んな人がいて……それらしい男はいなかった。


「あのなぁ……! 葦原には姫武者って文化があるの知ってるだろ?

帝の子も、親王と呼ばれるからって男とは限らないに決まってるだろ!」


 言われてみれば。

 でも、なんでそのような方がバスの乗客に?


「知らないよ!

……ずっと、あいつのこと考えてて、細かいことわかんなかったし」


 その危険な存在が、あいつ?


「……真っ暗だ。何も見えない、何も感じない。

お前の隣にいたあいつは、知らない。なにもわからなかったんだ」


 真っ暗、見えない、感じない、知らない、何もわからない。


 その言葉で想起されるのは、あいつだ。

 夷俘海峡で遭遇した幕府の神兵、畏怖の魔王。


 あいつと交戦したあの時、僕もそんな何かを感じた。

 危険で、未知で、なにもわからない暗闇だ。


「同一人物かはわからない……でも、これだけはわかる!

あいつはヤバい、危険だって……!」


 でも、畏怖の魔王は身長200センチ体重100キロ越えの巨漢で醜男だっていう。

 あの人は、そういう感じじゃなかった。


「おっ、お前……あんなプロパガンダ真に受けてるのか⁈

そんな人間、コクピットに入らないだろ!」


 言われてみれば。

 でも、接してみればわかる。


 畏怖の魔王は絶対悪、ろくでもない人間だ。

 あの人は、やっぱりそういう感じじゃなかった。


「あーっ……やっぱ戦闘機に乗ってないと、ただのボンクラ!」


 僕はいわゆる、サトリというやつの一種らしい。

 でも、淳之介隊長や振遠隊の皆と違って癖が非常に強いそうだ。


 命の危機、つまり戦いの中でしかまともに機能しない。

 戦争以外で僕は、ただの人だとか。


「いいか。普通のサトリ(天然モノ)にしちゃ、お前は強いんだ。

それは、ハッキリさせておく」


 最初の模擬戦で、僕は君らをコテンパンに叩きのめした。

 よく覚えてるよ。


「……クソ、相変わらずむかつく奴!」


 不貞腐れた彼女は、そっぽを向いてしまった。

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