(三)
こんにちは!
連続投稿です。今日中に五話まで上げようと思っています!
ほんとに前書きってどんな事をかけば?
今日は珍しく晴れ。だが店は休みだ。私は愚かなことか昨日の青年に気を取られ、事務作業を所々忘れてしまっていた。新しくアルバイトの子が入ったため、この子のシフトも書かなければならない。全く何をやっているんだか、せっかくの休みなのに。
少しの時間で終わる作業のため、一日中店にいるわけではない。仕事が終わったら何をしようかな、決めていない。
事務作業を終わらせ、店を出た。表のシャッターは閉まっているため、裏口から出て表に出た時——
「あ、こんにちは。今日はお店閉まっているんですね」
私の期待は叶ってしまった。昨日の青年が現れたのだ。
いや早すぎる。いくらなんでも早すぎるよ。なぜ店の前に?また来てくださいとは言ったけれど、こんなにすぐに現れるなんて、私何かしてしまっただろうか。昨日の最後の彼の表情から不安になるが、いや、店に忘れ物の可能性もあり得る。いやいや、忘れ物なんてそんなものなかったわ。
「こ、こんにちは、ごめんなさい、今日は店閉まってまして、……何かありましたか?」
恐る恐る聞いてみる。
「実は、少しあなたと話してみたくて」
……ん?
「こんなこと言ったら恥ずかしいのですが、美術館で見かけた時から気になっていたんです。お店が閉まっていたのでいないと思っていたのですが、休みの日でも、働いていらっしゃるのですね、お疲れ様です」
んん⁉︎
「もしよければなんですが、少しお話をしませんか? この後、空いてますでしょうか」
処理が追いつかない、まず、なんだ?美術館で、え?
すぐ返事をしなければならないと咄嗟に返事をした。
「は、はい! あ、ああ空いてます!」
昨日の青年より裏返った。なんて情けない返事なんだ。
「よかった、立ち話もあれなんで、場所移しても良いでしょうか」
「全然、構いませんよ!」
私はまともに話せるのだろうか。まあなんにせよ、この青年のことが知れる良い機会だ。いろいろ話がしたい。このチャンスを逃す訳にはいかない。
商店街を抜けてしばらく歩いた先に、静かに佇むカフェがある。ここには街に住む人以外のお客さんも多い。サンドイッチで有名らしい。入って一番右端の席に座り、そのサンドイッチとコーヒーを二人で頼む。
「まず、時間を作っていただいて、ありがとうございます。こうやって話すことが出来て、とても嬉しいです」
「いいえ、お気になさらずに!」
こうやって正面で見るとよく見えるのは、彼の目だ。少し青みがかかっていて、とっても綺麗だ。クォーターなのだろうか。そんなことも気になりつつ、話を始める。
「お会いしてから挨拶をする機会がなかったので、名前も教えていませんね。改めて、僕は、吉田拓巳と言います。よろしくお願いします」
「黒澤華です。よろしくお願いします」
やっと青年の名前を知れた。聞きたいことがありすぎて、私から口が開いてしまう。まずはあの事を確かめなければならない。
「あの、店の前で言っていたことなんですが、……美術館で私のこと見かけていたのですか?」
「はい、管理人さんに声をかけられていた時に。あの時は閉館の時間だったでしょう? 僕もその後美術館を出て、赤い自転車で走っていった華さんをまた見かけたんです。家に帰って来たら赤い自転車があったので、もしかしてここの花屋の店員さんかなと思って、確かめるためにお店に行ってみようと思ったんです。そしたら家にある花とおんなじ花があったので、見惚れてしまって」
なんと言うことだ、自転車で走る姿まで見られていたとは。あの時は店に忘れ物をして寄ったんだったか。
——ん? 家?
「え、家って、吉田さんのお住まいって」
「ええ、あのマンションに住んでいます」
「え?」
「あれ、気がつきませんでした?」
気がつかなかった、そんな近くにいたとは。なんで気づかなかったんだろう。
「ええ、すみません、視野を広く見れないもので、申し訳ない。……ん? 吉田って」
「はい、いつも母がお世話になっているようで、何も問題ありませんか?」
伊代子さんの息子さんだと⁉︎ ——驚いた。こうも気づかないものなのだろうか。そういえば最近、息子さんが帰ってくるとか言っていたな。だから気がつかなかったのか。
「そうだったのですね! いえいえ問題なんてそんな! ついこの間だって、息子さんが帰ってくるからと、お花を買っていかれたんですよ」
「はい、そのお花、家に飾ってありますよ。……そうですよね、最近帰ってきたばかりだったら、気づかないのも無理ないですよね、すみません」
「いやいや、そんな謝ることじゃないですよ。伊代子さんには、本当によくしてもらっていますし」
「それはよかったです。僕がいない間、少し心配していたのですが、黒澤さんのような人がそばにいてくれていたのなら、心配入りませんでしたね」
「いえそんな、しがない花屋というだけですよ」
「そんなことないですよ。母からは、花屋さんの話をよく聞いていたので、こうしてお会いできて本当に嬉しいんです」
「そのような事を言ってもらえて、私も嬉しいです。ありがとうございます」
こんな少しの会話でこんなにも情報が出て来るなんて、もっと聞いてみたくなる。私が一番気になっていることは——
「あの、もう一個聞いても良いですか?」
「はい、なんでも聞いてください」
「私も実は、あの美術館で拓巳さんを見かけまして、あの絵と拓巳さんのことがずと気になっていたんです。あの絵には、どんな意味があるのですか? あの絵の何を見ていたのですか?」
「……」
拓巳さんは一瞬、口を噤んだ。そしてその表情が、少し暗くなった。
まずい、これは聞いてはいけない話だっただろうか。
「あの絵は」
続けて出た言葉に、私は衝撃を受けた。
「——私の父の絵なんです」
ついにあの絵の正体が明かされました!
お父さんの絵でした。
彼は何を思ってあの絵をみていたのでしょうか?
次回をお楽しみに!