ちょ、ちょ、ちょ、うわぁぁぁぁ!/うるさいですよ、クラリス
対神用決戦大魔術をわたくしとクラリス用に改良し、調整した|抗運命用未来招致大魔術は元となったトリプルシックス同様、龍脈の力を利用しています。
ですが魔力の出力、運用効率はトリプルシックスの約10倍。地面から離れても30分は出力を維持できるだけの魔力を保有できるので空中戦も可能です。
単純な性能面で言えば、トリプルシックスを上回りますね。
なのに、タムマロ様のアクラ王は……。
「ざっと解析しましたが、性能面ではクラリス・クラーラと並んでいますね」
「そうなの?」
「ええ。しかも、龍脈から魔力を吸い上げる力はクラリス・クラーラよりも上のようです。トリプルシックスのままだったら、性能面でも負けていました」
こんな奥の手を持っていたのなら、魔王になったわたくしたちが負けたのも当然ですね。
さらにその頃のタムマロ様よりも今のタムマロ様は強いはずですし、性能以外の能力も未知数。
戦力的には五分と言いたいところですが、双方の実力差を考えるとこちらが不利です。
「ですが、それでも負ける気がしないから不思議です」
「そりゃそうよ。だって、あたしらは二人だもん。一人よりも二人方が強いのは当然でしょ?」
いや、確かに二人ですが……と、言う気にならないのはわたくしもそう思っているからでしょうか。
「そんじゃ、とりあえずぅぅぅ……!」
「ええ、ぶん殴ってください」
わたくしが合図すると、クラリスは次の瞬間にはアクラ王に右拳を打ち出していました。
それまでの過程を認識できなかったと言うことは、クラリス・クラーラの運動性能にわたくしの感覚が追い付いていない。
軽く避けられたとは言え、右拳の打点も少しズレていましたので、クラリスの感覚も追い付いていませんね。
「クラーラ!」
「承知しています。これでどうですか?」
「うん! これなら良い!」
この問題は、体感時間を延長する体感時間操作魔術で感覚を1000倍に調整することで解決。
わたくしとクラリスの視覚には通常の戦闘と大差ない早さに映っていますが、第三者にはクラリス・クラーラの姿もアクラ王の姿も早すぎて映ってはいないでしょう。
「クラリス。違和感があったらその都度報告してください」
「オッケー! じゃあさっそく。背中の羽が邪魔! 重心が少しぶれる!」
「わかりました。これででどうです?」
「お、気にならなくなった。何をしたの? まだ生えてるよね?」
「重力遮断魔術で重さを消しました。ついでに、足裏の接地面が少ないようでしたので、足首の形状をパンプスタイプからローファータイプへと変更しました」
「あ、それでか。今の方が断然良い!」
戦闘時間が伸びれば別の問題点も出てくるでしょうが、とりあえずはこれで、クラリスは問題なく戦えるようですね。
「それは良いのですが……」
アクラ王の……と、言うより神具の出鱈目さに辟易してしまいます。
クラリス・クラーラの運動性能を遺憾なく発揮して格闘戦を演じるクラリスの動きは音速を超えていますし、魔力を纏わせた拳と蹴りはかすっただけで山をえぐり、海を割ります。
なのに、タムマロ様が操るアクラ王はクラリス・クラーラの速度に遅れず、攻撃も受け止め、反撃までしてくる。
どういう仕組みになっているのかはわかりませんが、あの神具はこのクラリス・クラーラと同レベル……いえ、しのぐほど高度な技術の塊です。
「ユガダイゴンゲン、シンシシラギツネ七十五ヒキ。アッキメッサツ、キュウキュウニョリツリョウ」
今のは呪文?
いえ、詠唱が終わると同時に、アクラ王の背中の羽が何十枚にも別れてわたくしたちに殺到しようとしているので、考えている暇などありません。
「ちょ、ちょ、ちょ、うわぁぁぁぁ!」
「うるさいですよ、クラリス。空を飛んだくらいで騒がないでください」
「目ぇ~がぁ~まぁわぁるぅぅぅぅ!」
本当に騒がしい。
タムマロ様も「凄いな。板野サーカス張りの回避だ」などと訳のわからないチャチャを、わざわざ伝心魔術まで使って入れないでください。
こちらは空気抵抗も慣性も無視した動きでわたくしたちを襲うアレの対処をしなければならないのですから、少しは静かにしてください。
「もうやだぁぁぁぁ! 空を飛ぶと本っ当にろくなことがないぃぃぃ!」
「はいはい。もう少しで解析が終了しますから待ってください」
一見、あのプレート群は無秩序にクラリス・クラーラを追っているように見えますが、十数枚が後ろから追尾し、残りでそれ以外の方向から突っ込んで来ています。
強度は……以前戦ったスサノオよりも少し硬い程度ですね。
ならば、破壊は可能。
問題はその手段ですが、今は空中なので自然物も魔力も補給不可。
クラリス・クラーラに内臓してある魔力だけで、アレを迎撃する必要があります。
そして迎撃そのものが、わたくしたちの隙になりかねない。
ならば……!
「|その町は悪徳の町。《That town is a town of vice.》|不徳の町。《a town of immorality》|頽廃の町。《 Decadence Town》|故に、我は滅しましょう。《Therefore, I will destroy it.》|永遠の炎による《Eternal while receiving》|刑罰を受けながら、《 the punishment by the flame,》見せしめとなりなさい……」
「え? なんでここでソドム!? って言うか、どうして火球に突っ込むの!?」
迎撃とタムマロ様への攻撃を両立させるためです。
今回のソドムは複数の火球を召喚するのではなく、威力を増した一発を召喚するモノ。
それをクラリス・クラーラに纏わせ、突っ込んでくるプレート群を焼き付くしながらタムマロ様へと突っ込む、広域殲滅魔法と対をなす神話級魔法。
その名も……。
「限定領域破壊魔法!」
全てのモノを焼き付くす火球に包まれたクラリス・クラーラがプレート群を破壊しながらアクラ王に激突した瞬間、わたくしは火球をアクラ王に押し付けて麓の樹海へと叩きつけました。
ですが、これで終わりではありません。
クラリスは殺さずに無力化するつもりのようですが、わたくしは最初から殺す気でやっているのですから。
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