嫌だ。聞きたくない!/聞きなさい!
クォンを破ったクラリスが八合目に着くと、ちょうどクラーラが右手の傷を魔術で治し終わって、左肩の治療に移ったところでした。
クラーラが怪我をしていたこと自体は対して驚かなかったのですが……。
「ねえ、本当にアリシアさんと戦ったの?」
「ええ、戦いましたが?」
「その割には、周りへの被害が少なくない? 魔術を撃ち合わなかったの?」
「あの人は魔術を封じる神具持ちだったので、わたくしは魔術を使わせてもらえませんでした」
「なのに、勝ったの? あのアリシアさんに?」
「ええ、なんせわたくし、天才ですから」
と、得意気な顔をして言ったクラーラがどうやって勝ったのか気にはなりましたが、クラリスは取りあえず保留しました。
「腕輪の魔力、補充しとく?」
「いえ、まだ大丈夫です。それよりクラリス。一つ、確認しておきたい事があるのですが、良いですか?」
「良いよ。何?」
「タムマロ様を、殺せますか?」
「タムマロ……を?」
クラリスは、クラーラが何を言っているのか理解できませんでした。
確かにタムマロは、マタタビたちを拐った。
それは許せませんが、クラリスはタムマロを殺してでも救出しようとは考えていなかったのです。
「わたくしは男性とお付き合いした経験がないのでわかりませんが、あなたとタムマロ様は体を重ねあった関係です。だから、もう一度聞きます。タムマロ様を、殺せますか?」
「ど、どうしてタムマロを殺さなきゃいけないの? わけわかんないよ!」
「敵だからです」
クラリスはやはり、クラーラの言っていることが理解できませんでした。
クラリスにとってタムマロは味方。
それ以上に、本人はこの段に至っても認めませんが、愛する人です。
そのタムマロを、何故クラーラが敵と断じて殺そうとしているのかが、クラリスには全く理解できません。
「まあ、良いでしょう。どの道、山頂に行けば選択せざるを得なくなりますから。ですが、これだけは覚えておいてください」
「嫌だ。聞きたくない!」
「聞きなさい!」
「嫌! 絶対に嫌!」
「こんの……! 聞けと言っているでしょう!」
クラーラは、子供のように駄々をこねて聞こうとしないクラリスの胸ぐらを、治療途中の右手で掴み上げました。
その剣幕に驚いたクラリスは……。
「嫌だよ……。お姉さまが死んじゃった時、凄く悲しかったの。あたしも死んじゃおうって考えるくらい、悲しかった。なのに今度は、タムマロを殺せって言うの? あたしに? そんなの無理だよ!」
「ええ、わかっています。あなたはタムマロ様を殺せなかった。わたくしもできなかった。だから、何百回も繰り返したのですから」
「どういう……こと?」
「山頂に着けば嫌でもわかります。だから、その時までに覚悟を決めておいてください。わたくしも、決めておきますから」
そしてクラーラは、顔を絶望の色に染めて瞳から大粒の涙を溢すクラリスの手を引いて、山頂へと歩き始めました。
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