ホームラン。と、言うやつですね
「「|彼の者は剣の虜囚《He is a prisoner of the sword.》。
|彼の者は剣そのもの《 He is the sword itself.》。
|剣に魅入られ、《A sword god who was fascinated》|剣を極めた剣神《 by swords and mastered swords. 》。
|私は彼を想像する《 I imagine him.》。
|私は彼を夢想する《 I dream of him. 》。
|私は彼を創造し、再現する《I creation him and reproduce. 》。
|その名はラーサー《His name is Larser.》。
|剣聖、ラーサー・ペンテレイア《Sword Master , Larser Penterreia》」」
二人同時に詠唱が終わり、剣聖再現を発動した二人は互いに斬り結ぶ……ことにはなりませんでした。
術式は確かに組んだ。
アリシアのモノよりも多くの術式を組み込んだ。
なのに、クラーラの剣聖再現は発動しませんでした。
「そう言えば、アリシア様は神具持ちでしたね」
「ええ、そう。魔術師にとって天敵の神具、アンジェリカの指輪。効果は、今さら説明するまでもないわよね?」
「ええ、嫌と言うほど覚えていますから、結構です」
神具、アンジェリカの指輪の効果は、指輪を中心として半径200メートル以内で発動した魔術、魔法を使用者の意志でキャンルすること。
魔術を個別に指定する必要はありませんが、効果の発動は自動ではなく任意なので、相手が魔術を使用するのを察知しなければなりません。
なので、クラーラは……。
「処理しきれないほどの数で。かしら。でもそんなこと、させると思う?」
思ってはいません。
と、口にすることもできず、強化外骨格魔術すら封じられたクラーラは、無様にアリシアの斬撃をなんとか回避し続けています。
「趣味が悪いですね。ジワジワと、なぶり殺すおつもりで?」
「拷問好きのあなたがそれを言う?」
「ええ、言いますとも。魔術が使えない今のわたくしはただの雑魚。リメンバー・ラーサーを使っているあなたなら、余裕で殺せるのにそうしないじゃないですか」
「手加減しているのよ。タムマロにあなたのギフトを私に移してもらうまでは、殺す訳にはいかないもの」
「タムマロ様には、そんな能力が?」
「タムマロと言うよりは、彼が連れている子供のギフトね。何でも、奪ったギフトを譲渡するギフトを持っているらしいわ」
アリシアが得意気に話した情報で、クラーラの中でタムマロがやろうとしていること、その手段の全容が見えました。
ですが、相変わらず動機はわからないまま。
このまま、なんとか逃げ回っている間に自分が知らない情報を話してくれないかと期待しましたが……。
「やられっぱなしというのはどうも……」
性に合わない。
なのでクラーラは、無詠唱でも発動できる初級魔術、火球魔術を10発ほど撃ちましたが……。
「発動をキャンセルする必要もない……ですか。それはそうですよね」
クラーラが放ったファイア・ブレッドは全弾命中しましたが、アリシアのリメンバー・ラーサーに組み込まれた防御術式を貫けず、傷一つつけられませんでした。
「なんだか、哀れになってきたわね」
「なら、わたくしにもリメンバー・ラーサーをつかわせてください」
「拒否します。あなたのリメンバー・ラーサーと私のリメンバー・ラーサーでは、あなたのそれの方が強力ですから」
それは、同時に扱える魔術の数が違うのだから当然。と、クラーラは言おうとしましたが、悔しそうに歪んだアリシアの表情がそれを留まらせました。
「まったく、腹立たしい。私がどんな想いで、この魔術を創ったと思っているの? ペンテレイアの血筋なのに剣術の才能がまるでない私が、お兄様に認めてもらえるまでどれほど苦労したと思っているのよ!」
「知り……くぅ!」
知りませんし、興味もありません。
と、クラーラには言わせず、アリシアはクラーラの左肩を貫き、ここまで乗って来た天空飛翔魔術の足元に縫い付けました。
「この魔術だってそうよ。あなたはきっと、大した努力をしていない。見ただけ。ギフトの恩恵があったればこそ、こんなにも高度で複雑な魔術を創ることができた。ああ……羨まし過ぎて狂ってしまいそう。私にもそのギフトがあれば、お兄様を死なせずに済んだかもしれないのに……」
「痛っ……!」
アリシアが少し手首を捻ると、刺さった魔力の剣が左肩を抉りました。
その痛みに涙を流しながらも堪え、クラーラは……。
「ギフトの恩恵? 見ただけ? 大した努力をしていない? ええ、そうです。わたくしは天才。あなたのような凡人では一生努力しても到達できない極みに、わたくしはいます」
と、挑発しました。
確かにクラーラはギフトのおかげでどんな魔術、魔法でも一目で理解し、扱うことができます。
ですが、ギフトの恩恵はそこまで。
クラーラが複数の魔術を組み合わせ、新たな魔術を創り出せるのは、クラーラ自身の努力の結果です。
もっとも、それも才能ありきですが。
「さて、一応は弟子であるあなたを痛ぶるのも何なので、そろそろ終わりにしましょうか」
そう言いつつも、アリシアは天空飛翔魔術へと左手を伸ばしました。
そして左手が触れ、「ああ、早く私も、こんな魔術を創ってみたい」と溢すなり……。
「触れ……ましたね」
「ん? 今、何か……」
言った? と、アリシアが言い終えるよりも早く天空飛翔魔術は木鎖拘束魔術へと転じ、アリシアを雁字搦めにしました。
しかも、対クラリス用の魔力封印術式が付与されているため、アリシアはリメンバー・ラーサーを発動し続けることができなくなりました。
「迂闊ですね。わたくしが、何の考えも無しにこれをそのままにしておくわけがないでしょう」
「ええ、迂闊だったわ。まさか、触れた途端に別の魔術に変わるだなんて、想像すらしなかったわ。でも……」
「アンジェリカの指輪がある。ですか? それは無駄です。だってそれ、術式の発動を阻害する物であって、すでに発動し終わった術式はどうにもならないでしょう?」
「それは……」
その通り。
アンジェリカの指輪は、すでに発動してしまった術式には効果がありません。
故に、アリシアにはウッドチェインを引きちぎれる膂力がない限り、打つ手がないのでございます。
ですが、クラーラには……。
「で? あなたはここからどうするつもり? あなたに魔術は絶対に使わせないし、その肩じゃモーニングスターを振り上げることもできないでしょう?」
「ええ、確かに。なので、こういうのはどうでしょう」
言うなり、クラーラは右拳から黄金の魔力を放出し始めました。
それを目の当たりにしたアリシアの顔色はみるみる内に悪くなり……。
「や、やめなさいクラーラ! そんなモノで殴ったら……!」
殴られた自分はただでは済まない。
ですが、アリシアは自分の身ではなく……、
「操気術を学んでいる訳でもなく、体も鍛えていないあなたじゃ反動に堪えられない! 最悪、右腕が使い物にならなくなるわよ!」
クラーラの体を心配しました。
その事に、クラーラ以上に驚いたアリシアはうつむき、観念したかのように……。
「ブリタニカ王国立魔術院、副院長。アリシア・ペンテレイアの名において、あなたに二位の序列を与えます。そして……」
と、言葉をつむぎました。
そして顔を上げ、誇らしそうにクラーラを見つめながら……。
「あなたはこれより、『真理の魔女』と名乗りなさい」
新たな異名……いえ、称号を授けました。
そして新たな序列と称号を与えられたクラーラは……。
「ありがたく、拝命致します。お師匠様」
と、言って微笑みました。
ですが、右拳の魔力は放出されたまま。
これで普通の展開なら、敗北を認めたアリシアと和解して終わりなのでしょうが……。
「では、左肩の恨みと言うことで、取りあえず殴りますね」
「え? ちょ……待っ……!」
クラーラは大きく右腕を振りかぶり、素人丸出しの殴り方で、和解したので終わりだろうと思っていたアリシアの胸部に……。
「クラーラ・インパクト!」
と、咄嗟に思い付いた技名を言いながら、拳を叩き込みました。
そして、文字通り明後日の方向へ吹っ飛んだアリシアを眩しそうに眺めながら……。
「ホームラン。と、言うやつですね」
と、満足そうに言いました。
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