あたし、何かおかしいこと言った?/随分と変わったなと、思いまして
人が三人いれば派閥ができる。
と言う言葉が、オオヤシマには古くからございます。
クラリスとクラーラのパーティーを例に挙げますと、マタタビが加入したのを気にクラリス&マタタビ、そしてクラーラの派閥が生まれました。
争っていたわけではありませんが、クラーラは少しだけ疎外感を感じていました。
そしてハチロウがクラーラの派閥に加わったことで、クラーラの疎外感は解消されたのですが……。
クラリスと育った環境が似ているせいで話が合うヤナギが加入したことで、再び疎外感が顔を覗かせ始めていましたが……。
「ねえ、クラーラ。さっきから何してるの?」
「見てわかりませんか?」
「わかんないから聞いてるの」
「これを見てわからないとなると、他に説明のしようがないのですが……」
クラーラが何をしているかと言いますと、オハナが指先から出す糸をひたすら巻いています。
「い~と~巻き巻き♪ い~と~巻き巻き♪」と、歌まで口ずさみながらひたすら、オハナの糸を巻いていたのでございます。
「ねえ、クラーラちゃん。それって、もしかして金策?」
「ええ。オハナは後天的とは言え立派なアラクネ。そのオハナが精製する糸は、莫大な富を生みます」
オハナが仲間になり、しかもクラーラの金策に協力的な上に、人間に戻すのを条件に常識的な範囲で体を好きに調べさてくれるので、クラーラの疎外感は再び成りを潜めました。
オハナの加入がなければ、逃げるように東京を後にしてイバラキに入ったクラリスたちは行き詰っていたかもしれません。
「でもさ、売れないよね? だってクラーラ、シンジュクの一件であたし以上の賞金首に鳴っちゃったじゃない。たしか、あたしが500万でクラーラが1億だよ?」
「問題ありません。売るのは手配されていないハチロウちゃんなりヤナギのなり頼めば良いですし、賞金稼ぎは返り討ちにすれば良いだけです」
「お金と賞金稼ぎ件はそれで良いかもだけど、宿はどうするの? さすがに、全国に指名手配されたあたしたちを泊めてくれる娼館なんてないと思うよ?」
このパーティーの当面の問題はそれ。
シンジュクでの一件で賞金までつけられて全国に指名手配された二人を泊めてくれる娼館など、クラリスが言った通りないでしょう。
「この糸を売って得たお金で、普通に宿を取れば良いのでは?」
「いや、だからそれも難しいんじゃ……」
「簡単です。わたくしたちがわたくしたちだとわからなければ良いのです」
「どうやって? 変装でもするの?」
「|認識機能改変魔術《コグニティブ・ファンクション・モディフィケーション》をわたくしたち全員に施します。そうすれば、変装などしなくても他の人はわたくしたちを認識できなくなります」
「へえ、そんな魔術があるんだ」
「暗殺者やスパイ御用達の魔術なので、あまり好みではありませんがね」
逆に言えばクラーラが好みではない魔術を使わなければならないほど、このパーティーの状況は切迫しています。
100%自業自得なのですが、今さらどうしようもありません。
「次は、ミヤギに行くんだっけ?」
「ええ、そこでオガミサマと呼ばれている人たちに会おうと思っています」
「何のためのに?」
「わかりません」
「へ? わかんないの? なのに、ミヤギまで行こうとしてるの?」
「はい。そうする必要がありますので」
「ふぅ~ん。そっか。じゃあ行こう」
クラリスは、それ以上クラーラを問い詰めませんでした。
クラリスからすれば、行こうと言うクラーラ自身が何のために行くのかを知らなくても、クラーラが必要だと言った。ただそれだけで、行く理由になるのでございます。
それを雰囲気で察したクラーラは……。
「ふふっ……」
と、ついつい笑ってしまいました。
それに気を悪るくすることもなく、クラリスは……。
「どうしたの? 急に笑って。あたし、何かおかしいこと言った?」
クラーラの反応の意味がわからず、小首を傾げました。
それを見たクラーラはもう一度「ふふふ」と笑ってから……。
「いえ、随分と変わったなと、思いまして」
と、出会った頃とは比べ物にならないくらい仲良くなった自分たちを微笑ましく思いながら言いました。
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