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ちなみに、決定は覆りません!

 ハチロウがミサイル張りの速度でビルの最上階に着弾して、約10分。

 何も動きがないのに業を煮やしたクラリスは、ハチロウが着弾したことで空いた大穴からヤナギとともに突入しました。

 ちなみにクラーラを抱えたハチロウの木偶人形は、主人であるハチロウを追うように、クラーラを抱えたままノロノロと壁をよじ登っています。


「うっわ。最悪。何よこの部屋」

「趣味が悪いねぇ。真っ赤? 真っピンク? とにかく色がえげつないし、変なニオイもする」


 それだけで済めば、まだ目に悪そうで済んだかもしれません。

 それだけであれば、踏み潰された虫のように手足をピクピクとさせながらも、なんとか意識を保っていたハチロウに駆け寄ったかもしれません。

 二人が最悪な気分になったのは、フロア全部を使った部屋の一番奥で、真っ裸にしたマタタビを撫で回しながらふんぞり返っている男を見たからでございます。

 

「亜人を下着姿で(はべ)らせて、自分はすっぽんぽんで王様気取り?」

「あっちの方は、王様じゃなくて庶民だけどね」

「あ、本当だ。被ってないだけマシだけど、起っても大したことなさそう」


 その気分を払拭するためか、はたまた発散するためか、二人は男をこき下ろしました。

 特に、男の行動の八割を決定付ける一部分を重点的に。


「おいおい、オレみたいなイケメンにダメ出しかよ」

「どこがイケメンよ。中身の醜悪さが、全身から滲み出てるじゃない。ヤナギちゃんはどう思う?」

「無理無理無理無理。確かに顔は良いけど、逆に言えばそこしか良いところがない。見てよ、あの女を見下したような顔。生理的に無理。アイツに比べたら、そこらの浮浪者の方が絶対にマシだよ」

「散々な言いようだな。女ってのはどいつもこいつも、金と権力持ったイケメンが大好きだろう? なのになんで、お前らはオレに惚れないんだ?」

「いや、逆に聞くけど、アンタのどこに惚れろと?」

「さっきも言ったけど、顔以外に良いところなんて無いよね? 皆無だよね? 絶無だよね?」


 嫌悪感を顔に張り付けて、二人はこれでもかと拒絶していますが、私があの場にいても、同じような反応をするかもしれません。

 それくらい、男の顔は下卑て見えます。

 同じ空気を吸うのも嫌になるくらい、心の醜悪さが全身から滲み出ているのでございます。


「ヤナギちゃん、何か異常はある?」

「あるある! アイツの顔を見てたくない! 今すぐぶん殴りたい!」

「よし、異常はなしね。と、言うことは、アイツの転生特典は常時発動型じゃない。もしくは、亜人にしか効果がない」


 マタタビの身体を好き勝手に撫で回す男への怒りに身を焦がしながらも、冷静に分析しました。

 その結果を聞かされた男の顔からは、さっきまでの余裕が消え、「チッ……」と、舌打ちまでしています。


「その子を返せ。さもないと……」

「さ、さもないと何だよ! オレを殴ろうってのか!? オレを殴ったら、オレの仲間が黙っちゃいねぇぞ!」

「あら、アンタって、仲間の威光がなきゃ何もできないのね。ヤナギちゃん。こういう奴を、オオヤシマでは何て言うんだっけ」

「虎の威を借る狐。もしくは、テレビ版ス○夫」

「スネ夫って誰?」

「オオヤシマの古典文学に出てくる、お金持ちの子供だよ」

「へぇ、その子も、あんな感じなの?」

「うん、だいたい。まあ、子供向けの文学作品だから、女を侍らせたりはしてなかったけどね」

 

 ちなみにオオヤシマでは、普段は我が儘な乱暴者が、ふとした時に優しさや男気を見せることを『映画版ジャ○アン』と言い、臆病な怠け者が良いことを言ったりしたりするのを『映画版の○太』と形容したりしますが……危なそうなのでこれくらいにしておきましょう。


「で、どうすんの? マタタビちゃんを返すの? それとも、あたしに殺される?」

「こ、殺すのか!? オレを殺したら……!」

「仲間が黙っていない? それは安心して良いわ。アンタの仲間って時点で同じくらいのクズでしょうから、ついでにぶん殴る」

「頭おかしいんじゃないか!? お前、オオヤシマ政府の転生者を全員、敵に回すって言ってんだぞ!」

「だから、何よ。アンタはあたしの大事な仲間に手を出した。出すどころか、撫で回して舐め回して凌辱した! それだけで、万死に値すんのよ!」


 言い終わると同時にクラリスは魔力を解放して天井を吹き飛ばしました。

 それで慌てたのは、「ひぃぃぃぃ……!」と、情けない声をあげながら頭を抱えた男だけ。

 クラリスの行動を読んだハチロウは自分とクラーラ、さらに、操られていると思われる亜人たちを対物理、対魔力防御(アンタッチャブル)包み、ヤナギは男の手から解放されたマタタビを救助して、クラリスの元へと戻りました。


「や、やめろ! マジでやめろ! オレが死んだら、オオヤシマでまた戦争が起こるんだぞ!」

「はぁ? なんでアンタみたいな小物が死んだら、戦争が……。いや、待って。もしかして、その亜人の子たちは……」

「ああ、そうさ! オオヤシマに住む各種族の族長の娘孫だ! オレが、このアリワラ・ナリヒラ様がコイツらを|全獣属、全亜人支配能力ビーストテイマーで洗脳して人質にしてるから、オオヤシマは平和なんだぞ!」


 ナリヒラの言葉を聞いて、かろうじて千切れずに繋がっていた堪忍袋の緒が、完全に切れました。

 キレたクラリスはズカズカと歩を進めて、ナリヒラの顔を鷲掴みにしました。


「今すぐ、洗脳を解け。じゃないと、このまま頭を握り潰す」

「で、できるもんならやってみろよ! その瞬間に、お前はオオヤシマ政府から敵としてぇぇぇぇ! 痛い痛い痛い痛い! やめて! やめてください!頭が割ぁぁぁぁぁれるぅぅぅう!」

「もう一度言う。今すぐ、あの子たちの洗脳を解け」

「だから、それはできないんだよ! っつうか、オハナは何してんだ! こんな時のために、お前を拾ってやったんだろうが!」


 お花って誰? 

 と、クラリスが言うよりも早く、マタタビをハチロウから奪った上着でくるんでいたヤナギが反応して……。


「オハナ? 今、オハナって言った? それって、わっちみたいな顔してて、髪と瞳は真っ赤な人!?」

「はぁ? 何でお前、あの実験体を知って……って、言われてみれば、お前、髪と瞳の色以外はアイツにそっくりだな。じゃあ、お前も長耳族(エルフ)の末裔か?」


 ナリヒラがヤナギに投げ掛けた質問を聞いて、クラリスはしたくもない想像をしてしまいました。

 ウズメの話では、ヤナギの姉と似た特徴を持つ者はいたが、種族が魔蜘蛛族(アラクネ)でした。

 だから、ヤナギ姉とは他人のそら似だと思っていたのに、『お花』と言う名前にヤナギが反応したことと、ナリヒラが言った『実験体』という単語が、クラリスにしたくもない想像をさせてしまったのでございます。


「アンタ、もしかしてヤナギちゃんのお姉さんを、改造したの?」

「お、オレじゃねぇよ! 別の転生者が何年も前に、エルフの血を引いてたアイツを買って来て蜘蛛と掛け合わせたんだぁぁぁぁぁぁ!? 指に力を込めるな! 食い込んでる! 頭皮に食い込んでるからぁぁぁぁぁ!」


 もう、殺してしまおう。

 そう、クラリスは考えていました。

 実際、あとほんの少し力を込めれば指先はナリヒラの頭蓋骨に到達し、中身ごと砕いていました。

 ですがそれが叶う前に、ナリヒラの頭を掴んでいたクラリスの右腕に、破壊されたビルの壁をよじ登って来たかのように現れた、背中から六本の脚を生やして赤髪をショートカットにした赤い着物姿の女性の物と思われる糸が、何重にも巻き付いて待ったをかけました。


「……あなたが、オハナさん?」

「ああ、あたいがオハナ。元、ヤナギの姉さ」

「元? 今は違うの?」

「違うさ。あたいは見ての通りの化け物。少し前まで、キョウトの方でブイブイ言わせてた人喰いの絡新婦(じょろうぐも)たぁ、あたいのことだからね」

「んん? でも、ヤナギちゃんのお姉さんなんだよね?」

「だから、元だって言ってるだろ。今のあたいは……」

「アラクネなんでしょ? でも、だから何? どうしてそれで、ヤナギちゃんのお姉さんじゃなくなっちゃうの?」

「お前は阿保か? 種族が違うんだぞ? 違う種族同士で姉妹なんておかしいだろ」

「どうして?」


 クラリスは、本当にわかりませんでした。

 種族が違う? それでどうして、姉妹じゃなくなるの? あたしとお姉さまは実の姉妹じゃないけど、本当の姉のように思ってよ? それなのに、なんで種族が変わってしまったくらいで、姉妹じゃなくなるの? と、悩み続けています。

 そして悩んだ結果……。


「う~ん……。やっぱりわかんないから、あなたはヤナギちゃんのお姉さんに決定! ちなみに、決定は覆りません!」

 

 当事者であるヤナギとオハナにとどまらず、痛みに悶えていたナリヒラにすら、ポカーンとした顔をさせました。


 



 


 

 

読んでいただけるだけで光栄なのですが、もし「面白い!」「続き読みたい!」など思って頂けたらぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

ぜひよろしくお願いします!

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