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嫌な予感がする……

 トーキョー地方最大……いえ、オオヤシマで最大規模を誇る風俗街であるヨシワラは、男の欲望を金銭と引き換えに満たす一方で、身寄りや金のない女子供の受け入れ先という側面も持ちます。

 大半は女衒(ぜげん)を通して親に売られた者たちですが、ここ、ヨシワラでは貞操観念や倫理観と引き換えに命と金の保証がありますので、食い物にも困るような田舎で死を待つよりは、体を売るくらいなら構わないと自らここへ来る者も一定数存在します。

 そんな者たち……と、言うよりはヨシワラそのものを守り、集まる理由となっているのが、芸龍王と呼ばれるウズメ。

 彼女は龍王にしては珍しく、ヨシワラに住む者たちを人間亜人問わず愛し、その異名通り芸事も教えています。

 彼女に芸事を習い、『お墨付き』を貰った者はヨシワラでも一目置かれ、所属している遊郭や年齢を問わず『花魁(おいらん)』と呼ばれて、オオヤシマ政府のお偉いさんや転生者ですら頭を垂れてご機嫌を伺わなくてはならないほどの、超高級娼婦となります。


「そんなウズメさんに、よく会えたね」

「まあ、龍王様方の紹介状もあったし、昔取った杵柄もあるし、わっちの魔法は特技とも言えるからアッサリと会ってくれたよ」

「良かったじゃない。それで、お姉さんの行方はわかったの?」

「わかったと言えば、わかったかな。ほんの一か月ほど前に、姉さんとよく似た特徴を持つ人が、ヨシワラに来たらしいんだけど……」

「だけど?」

「わっちも、わっちの姉さんも人間なの。何代か前に長耳族がいたらしいけど、間違いなく人間よ。なのに、姉さんによく似たその人は、人間じゃなかったらしいんだよ」

「亜人だったの?」

「うん。ウズメ様は言うには、アラクネ(魔蜘蛛族)だったらしい」

「じゃあ、ヤナギちゃんのお姉さんによく似たアラクネだったって、だけじゃない?」


 クラリスは何の気なしに言ったのですが、ヤナギが落ち込んでしまったのを見て「しまった」と思いました。

 ヤナギからすれば、種族が違うとは言えようやく掴んだ姉に繋がるかもしれない情報ですから、落胆してしまうのは当然でしょう。


「とりあえず、会ってみる? 居場所も聞いたんだよね?」

「聞いたけど、どうも厄介なところにいるらしくて……」

「厄介なところ?」

「シンジュクにカブキ町って場所があるんだけど、そこを仕切ってる転生者のところにいるらしいの。で、この転生者が悪い噂の堪えない奴で、亜人の女の子を囲ってるそうなの」

「囲ってるって、それはつまり……」

「まあ、そういうこと」


 どういうことかと言いますと、要は亜人の女性を、性的な捌け口として飼い殺しにしているのでございます。

 クラリスとヤナギがハッキリとそう口にしなかったのは、口にすれば嫌悪感でどうにかなってしまいそうだったからでしょう。


「転生者なら、タムマロに聞けば何かわかりそうなものだけど、こういう時に限って来ないしなぁ」

「一応、あのあたりの事情に詳しい人も紹介してもらったよ」

「なんて人?」

「名前は知らないけど、『シンジュクの種馬』とか呼ばれてる人で、シンジュク駅の伝言板にXYZって書いたら……」

「OK、やめよう。そんな異名がついてる時点で頼るべきじゃないし、なんだか危ない気がする」

「わっちも、そんな気がする」


 ええ、頼るべきではありませんね。

 今の時点で結構アウトに近いですがここまでならパロネタとして笑って許してもらえそうな気がしますので、そこでやめましょう。


「た、大変だよクラリスお姉ちゃん! マタタビちゃんが!」

「ど、そうしたのよハチロウ君、そんなに慌てて」

「マタタビちゃんが、外に出ちゃった!」

「それ、何かの間違いじゃない? だってマタタビちゃんは……」


 人間恐怖症だから、自分がそばにいないのに人が行き交う外に出るわけがない。

 ですが、ハチロウの慌てぶりを見るに、嘘だとも思えません。

 

「何か、急に上の空になって、フラフラと外に出ちゃったんだ。止めようとしたんだけど、僕や他のお姉さんたちも何故か動けなくなって……。で、でも、なんとかマタタビちゃんに居場所特定魔術(トランズミター)をかけたから、居場所はわかるよ!」

「じゃあ、追いかけましょう。たちの悪い人間につかまりでもしたら、またマタタビちゃんが痛い思いをしちゃうわ」


 言うが早いか、クラリスはハチロウを小脇に抱えて、遊郭を飛びだしました。

 それを追うように小型化して羽を生やしたヤナギと、眠るクラーラを抱えたハチロウの木偶人形も続きました。


「ハチロウ君、方向は合ってる?」

「うん、合ってる。でも、移動速度が速すぎるよ。マタタビちゃんって、こんなに速かったの?」

「あの子だって妖猫族だし、獣化してたら人型の時より速いはずよ」


 それでも、マタタビの速度は異常です。

 ゴールデン・クラリスを発動して追うクラリスに追いつかれず、マタタビはまるで何かに引っ張られているかのように高速で、建物などの障害物を意に介さず真っ直ぐ進んでいます。


「このまま進むと、シンジュクかな」


 進路から目的地を予想したクラリスは、そこでヤナギが、シンジュクには、亜人の女を食い物にする転生者がいて、さらにアラクネがいると言っていたのを思い出しました。

 思い出してしまったがゆえに……。


「嫌な予感がする……」

 

 不安と同時に、怒りを抱きました。

 その話が確かで、そいつらにマタタビが拐われたのなら、マタタビがまた怖い思いをすることになってしまうからでございます。

 

 




 

 

読んでいただけるだけで光栄なのですが、もし「面白い!」「続き読みたい!」など思って頂けたらぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

ぜひよろしくお願いします!

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