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も、もうちょっと、待った方が良いかな?

 

 クラリスとタケミカヅチの二人は宿場町を破壊しないよう、ほどよく拓けた荒野……いえ、荒野と言うよりは、採石場でしょうか。

 もし、この場にタムマロがいたなら、「特撮の戦闘シーンで出てきそうなところだ」などと言っていたかもしれません。

 そんな場所で、二人はマタタビとヤナギ、そしてタヂカラオとタケミナカタに見守られて、構えも取らずに見つめ合っています。

 あ、ちなみにこの勝負は、眠り続けるクラーラと一緒に残ったハチロウがクラーラから習った魔術、『天体観測魔術(バンプ・オブ・チキン)』と『空間投影魔術(ムービックス)』を応用して、宿場町の人たちにも中継しています。


「ねえ、マタタビちゃん。あの二人は、どうして動かないの?」

「そんなの簡単ニャ。きっとクラリスお姉さまは、相手がガーッ! と来てテヤァー! ってなったところを、アチョー! からのズババババーン! で、やっつけるつもりなんだニャ」

「ごめん。わっち、オオヤシマ語しかわかんないから、オオヤシマ語でお願い」


 マタタビの、身振り手振りと擬音による説明では、格闘技どころか戦闘の経験もないヤナギでは理解できませんでした。

 もちろん、私にもわかりません。

 だってはたから見ると、ヤナギの腕の中で子猫が前足をバタつかせてニャーニャー言っているようにしか見えないのですから。

 ですが、わからなかったのは私とヤナギだけだったようです。


「その妖猫族の子供は、素質があるな。ワシも同意見だ」

「タヂカラオの旦那の言う通りだな。オレも、その子供の言う通りになると思うぜ」


 二人の龍王は、マタタビの言ったことが理解できたらしく、手放しでほめました。

 声をかけられるなり、マタタビはビクッと一度身を震わせて、頭をヤナギの腕の中に隠してしまい、代わりに尻尾を丸めたお尻は丸出しにして震え続けています。


「……どうも、嫌われているようだな」

「この子、人間に酷い目にあわされてたみたいで……」

「オレらは人間じゃねぇぞ? なのに、怖いのか?」

「シルバーバイン率いる魔獣軍と戦ったのが、ワシらだったからだろう」


 一際強く震え始めたマタタビを見るに、どうやらそのようです。

 その様子を見たタヂカラオはヤナギの前……と、言うよりはマタタビの前に移動しました。


「シルバーバインは、本当に強かった。ワシよりも強い者は世の中に腐るほどいるが、それでも、シルバーバインは別格だった。見ろ、ワシの体に刻まれた、この五本の爪痕を。ほんの一瞬だった。彼女の姿を捉えたと思った次の瞬間にワシはこの傷を刻まれ、倒された。だが、お前と同じ銀色の髪の毛を羽のようにはためかせたあの姿は、忘れようがない。憧れすら抱いている。お前は、そんな彼女を輩出した誇り高き妖猫族だ」


 タヂカラオの口から出たのは、侮蔑ではなく賞賛でした。

 それが意外だったマタタビは、恐る恐る顔を出してタヂカラオを見ました。そして……。


「う、うちを、イジメないのニャ?」

「イジメる? 馬鹿なことを言うな。お前は彼女が愛し、守った一族の者だ。庇護するならまだしも、イジメるなどありえん」

「ど、どうしてニャ? その傷だって、シルバーバイン様にやられたんニャろ? 恨んで、ないのニャ?」

「この傷は、ワシにとっては勲章だ。恨むなど、とんでもない」


 マタタビはそこで初めて、タヂカラオの瞳を正面から見ました。

 そして、人型になってヤナギの腕から降り、タヂカラオも、マタタビと視線を合わせ続けるために、片膝をつきました。


「ふむ、まるでシルバーバインが幼くなったような容姿だ。もしかして、直系の子孫なのか?」

「知らニャい。でも、シルバーバイン様は子供を産んだことがないって、お父ちゃんが言ってたから違うと思うニャ」

「だが、髪の色がそっくりだ」

「これは……少し前に怖い事があって、それで白くニャっただけだニャ」

「そうか……」


 そこで、会話は途切れました。

 ですがマタタビはもう、怯えていません。

 慈しむように頭を撫でるタヂカラオの瞳を、真っすぐ見つめています。


「ミヤギに、ワシが保護した妖猫族を匿っている島がある。機会があったら、行ってみるといい」

「わかった。行ってみるニャ」

「それと、もう一つ。体を鍛えろ。技術などなくとも、筋肉があれば大抵のことはなんとかなる。自信もつく。鍛えあげた筋肉は、決してお前を裏切らない」

「タヂカラオ様の、ようにかニャ?」

「そうだ。ワシは今でこそこんなだが、生まれたばかりの頃は、龍王の中で一番のヒョロガリだったんだ」


 そう言ってタヂカラオは、不器用なウィンクをしながら、マタタビの頭を少しだけ乱暴に撫でました。

 その様子を横目で見ていたクラリスは……。


「も、もうちょっと、待った方が良いかな?」


 と、気安くマタタビの頭を撫で続けるタヂカラオに若干嫉妬しながら、同じく雰囲気を察して動かずにいたタケミカヅチに、小声で確認しました。




 

読んでいただけるだけで光栄なのですが、もし「面白い!」「続き読みたい!」など思って頂けたらぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

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