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そういうノリは大好き♪/さあ、いつでもどうぞ

 型式番号 SAX-01。

 通称、『スサノオ』と名付けられたその機体は、腕輪を隠すためにオオヤシマを訪れた魔王の魔力を察知して永い眠りから覚めたアシナヅチ、テナヅチ両博士が、対魔王用に建造した機体です。

 魔力を物質化するASと違い、全ての部品が古代のロストテクノロジーで造られています。そのせいで、製造、運用コストがASよりも高くなりますが、機械なので単純な馬力がASよりも強く、魔力と電力の二つをエネルギーとするハイブリッド駆動なので継戦能力も長いです。

 もしこの機体が古代の戦争で実戦投入されていたら、たった一機で無双していたでしょう。

 ただし、両博士には誤算がありました。

 スサノオは察知した魔王の魔力を基準に、クシナダの八式霊子力バッテリーに貯蔵できるだけの魔力でも勝てるよう、設計されています。

 いましたが……。


『ば、馬鹿な! 何じゃその霊子力量は!』

『推定で約20兆じゃと!? 有り得ん! 魔王の霊子力量を遥かに越えておるではないか!』


 それが、両博士の誤算の一つ、

 スサノオの性能はあくまでも、お忍びでオオヤシマに来た魔王の、漏れ出ているだけの魔力を基準にしたものなのです。

 故に、本来なら戦闘態勢に入った魔王にも及びませんし、龍脈の魔力を扱うクラリス・クラーラにはどうあがいても対抗できません。


「あらあら、随分な慌てようですね。まあ、それも仕方ありませんか。その木偶の坊がどれほど高効率で魔力を使えようが、内包している魔力量に埋められない差があるのですから」

『黙れ原始人! このスサノオは、ワシとテナヅチの知識と技術の集大成! 科学の結晶! そのスサノオが、そんな原始的な物に……!』

「負けるわけがない。ですか? それ、言っててむなしくなりません? あなた方は、この身体に使用されている素材だけを見てそう自分に言い聞かせたいのでしょうが、刻まれている術式はあなた方の木偶の坊とは比べるのもおこがましいほど高度。その道の権威だと騙ったあなたに、それがわからない訳がないですよね?」

『それは……』

「あら、もしかしてわからなかったのですか? だったら金輪際、権威だとうそぶくのはおやめなさい。代わりに、無能と名乗るべきです。無知でも可」

『『黙れと言ったろうが小娘!』』


 激昂したアシナヅチとテナヅチは、スサノオに大剣で斬りかからせました。

 その切っ先も、20メートルはあるその巨体も音速を超え、50メートルの距離を一瞬で縮めてクラリス・クラーラを大上段から切り下ろそうとしました。

 しましたが……。


『馬鹿な! 超音速の攻撃に反応するばかりか、超硬質チタニウム合金性のトツカを破壊しただと!?』

「あれ? 掴もうとしたんだけど……。ごめん。壊しちゃった」

「謝る必要はありません。単に、アレが稚拙な玩具だったというだけですから」


 超音速なのにスローモーションに見えたクラリスが、大剣を掴もうと右手を伸ばした瞬間、大剣はクラリスの動きに従ったクラリス・クラーラの右手に触れて粉々に砕け散りました。

 アレ、旧世界の兵器でも破壊は困難と言われたほど、画期的な鋼材だったんですけどね。


「ねえクラーラ。もうちょっと、力加減ができるようにしてほしいんだけど」

「少し待ってください……。これでどうです?」

「試してみる!」


 クラリスは伸ばしていた右手を腰まで引き、代わりに左手と、右足を地面を滑らせるように前に出しました。

 その動きに反応したスサノオは距離を取ろうとしましたが……。


「心意六道! 超特大穿岩拳(せんがんけん)!」


 拳に集めた魔力を前方へ放つ穿岩拳を避けきれず、左腕を肩から失くしました。

 それでもクラリス・クラーラの拳から放たれた魔力光線は勢いを失わず……。


「やっば、山に大穴が空いちゃった」


 後ろにそびえるセンツウ山の中腹に大穴を空け、それでも止まらずに、空の彼方へと伸びて霧散しました。


「う~ん……かなり加減したんだけどなぁ」

「仕方ありませんね。出力調整はわたくしが常時行いますので、いつも通り暴れてください」

「良いの? この辺が更地になっちゃうかもよ?」

「そうならないよう、使用できる魔力にも制限をかけます。まったく、せっかくの高性能なのに、相手が弱すぎるせいで台無しです」


 クラーラは挑発をかねて愚痴りましたが、そもそも、クラリス・クラーラがオーバースペックなのです。

 まあ、元は魔王が対神用に創った『対神用決戦大魔術(トリプルシックス)』ですので、オーバースペックなのは仕方がないと言えば仕方ありません。


『有り得ん。原始人がこれほど高度で精密なプログラムを組んだじゃと? 有り得ん!』

『現実を見ろアシナヅチ! あの小娘どもは、ワシらのはるか先、旧世界の天才たちですら届かなかった神の領域におるのじゃ!』

『んなこたぁわかっとる! だからと言ってどうするんじゃ! スサノオの性能では、どうあがいてもアレには……!』

『勝てる! このスサノオには、アレが搭載してあるじゃろうが!』


 アレと聞くなり、クラーラはスサノオに刻まれている術式でクラリス・クラーラに対抗できるのか思案しました。

 その結果は無理。

 スサノオでは、クラリス・クラーラの防御用術式を貫通するような攻撃はできません。

 あるとするなら、それは魔力を使わない攻撃。

 なので、熱源探知魔術(サーモグラフィ)音響探索魔術(エコーロケーション)透視魔術(レントゲン)等を使って、スサノオの内部も探りましたが、その結果も皆無。

 やはりスサノオには、クラリス・クラーラを倒せそうな攻撃手段がありません。

 ありませんが……。

 

「この……! 大馬鹿者が! 旧世界は、それが原因で滅んだのでしょう!」

「ク、クラーラ? どうしたの?」

「どうしたもこうしたもありません! あの痴呆老人どもはよりにもよって、この世界を滅ぼそうとしているのです!」


 最初、クラーラに確信はありませんでした。

 ですが、両博士たちの言葉をハッタリとも思いきれませんでした。

 なので、クラリス・クラーラに対抗する手段が他の場所にあり、スサノオに搭載されているのは誘導装置だと推察し、探査範囲を広げられるだけ、それこそ宇宙にまで広げました。

 その結果、この場所に落ちようとゆっくりと移動し始めている、資源衛星を捉えたのでございます。


『構わん構わん! ワシら以上の知識も技術も認めん!』

『そんなモノは、この衛星誘導兵器『アメノムラクモ』で世界ごと消し飛ばしてくれるわ!』


 両博士はすでに、正気を失っています。

 まあ、それも仕方がないでしょう。

 彼らはこの世界で目覚めるなり、察知した数値だけとは言え魔王という規格外の魔力と出会い、それを手に入れるために八年もの年月を費やしてスサノオを造りました。

 ですがそもそも、最初に察知した魔王の魔力量が漏れ出た程度のモノだったと知り、それをはるかに上回る魔力を操るクラリス・クラーラを目にし、オマケとばかりに、散々見下し、馬鹿にしたクラーラに馬鹿にし返されたのですから。


「クラーラ! 何を壊したら良い!?」

「あなたの左目に、直接投影します」

「え? 直接ってどういう……って、うおぉぉ!? 何これ! 目の前にでっかい岩の塊が!」

「推定で約20キロメートル。しかも侵入角が最悪。落下すれば間違いなく、この世界が滅びます」

「じゃあ、これをぶっ壊せば良いのね?」

「ええ、その通りです。ですが、ジジイどもは邪魔してくるでしょうから……」

「オッケー! じゃあ、アイツをぶっ壊してから隕石をぶっ壊す!」


 そう決めるなり、クラリスはスサノオへとクラリス・クラーラを突進させました。

 その時間は一瞬よりも短く、刹那よりもさらに短く、時間と空間を切り取ったように、スサノオの目の前に現れて慣性を無視したように停止し、右手で顔を鷲掴みにして……。


「心意六道! 爆熱神指(ばくねつじんし)!」


 五本の指先に魔力を集め、相手の頭を粉砕する爆熱神指で、両博士が搭乗していたスサノオの頭部を破壊しました。

 そして、スサノオの頭部の残骸を払いつつ右手を腰だめにして、クラリス・クラーラは上空を睨みました。


「クラーラ、照準!」

「あなたの視覚に投影します」


 クラーラがそう言うと、クラリスの視界に緑色の矢印と、赤色の丸が映し出されました。その脇には、拡大された資源衛星。表示された距離は約15万キロメートル。

 クラリスは示された目標を打ち抜くために、右拳に魔力を集め始めました。


「クラーラ、まだ溜めた方が良い?」

「もっとです。穿岩拳を使うとして、あと60秒は溜め続けてください」

「さっきのでも、穿岩拳って言うよりは穿山拳……いえ、穿空拳って感じだったのよ? なのに60秒も溜めたら……」

「穿星拳……いえ、破星拳ですね。でも、それで良いではないですか。コレはわたくしたちだからこそできる、星をも砕く空前絶後の大技。わたくしたちが、世界に刻む傷跡です」

「良いね。そういうノリは大好き♪」


 クラリス一人では、クラリス・クラーラを発動できませんし、制御もできません。

 クラーラ一人では、伝説級相当の魔力さえ用意すれば発動できますし制御もできますが、術式を通して流れ込む龍脈からの魔力に堪えられませんし、性能も生かしきれません。

 落下中の衛生を破壊するのも同じです。

 クラリスでは、魔力を溜めて放つことはできますが、正確な照準と魔力の収束ができませんし、クラーラでは魔力を溜めて放つことができません。

 故にコレは、二人だからこそできる必殺技。

 クラーラには、クラリス・クラーラの膨大な魔力を察知したであろう諸々の勢力に対する抑止力にもなるという打算もありましたが、根っこの部分ではクラリスと同じく、ノリノリでした。


「標的へのガイド、及び誘導レール接続。誘導レールに魔力拡散防止術式を付与。次いで自動追尾術式構築……完了、照準固定。魔力充填……完了。さあ、いつでもどうぞ」


 クラーラは標的へ命中させるための補助術式をいくつも構築、展開して、クラリスにゴーサインを出しました。

 標的がちょこまかと動き回るのならともかく、計算で導き出せる軌道で落下する物や、都市などの固定目標であるならばこれで必中。

 しかも威力は、広域殲滅魔法(ソドム)などの古代魔法をはるかに上回ります。

 そんな、この世界はおろか旧世界ですら実現しなかった超々高威力砲撃を放つ準備を整えた二人は……。


「石破天驚、驚天動地!

 ああ、絶景かな!

 知らざぁ言って聞かせましょう!」


 クラリスのノリは、普段のクラーラなら理解できませんし、聞けば逆に冷めてしまいます。

 ですがこの数日間の出来事で、クラーラの心境に変化がありました。

 クラーラは、クラリスがそばに居ないことに恐怖しました。クラリスが陵辱されて怒りました。クラリスの背中を見て安心しました。

 そして、クラリスと一緒に戦うことに、喜びを感じました。

 だから、なのでしょう。

 クラーラはクラリスの口上を継いで……。


「悪を倒して善を振り撒く救世の光!

 天にはためく二人の御旗! 

 二人の絆は星をも砕く!

 さあ、刮目なさい!

 これなるは豪華絢爛! 八面玲瓏! 面向不背!

 クラリス・クラーラ最大最強最高の必滅魔術!

 その名も……!」


 クラーラが言っているとは思えないハイテンションで、続きを述べました。

それをクラリスは、驚くでも呆れるでもなく、嬉しそうに背中で受け止めました。

 そして……。

 

「「必ぃぃぃぃぃぃぃっ殺! |超長距離二重螺旋破星拳スター・ブレイカー!!」」

 

 二人揃って技名を叫び、クラリス・クラーラが突き上げた拳から二つの魔力を放ち、落下する資源衛星に着弾する前に一つに混ざり合って、文字通り消滅させました。

 



 



 

読んでいただけるだけで光栄なのですが、もし「面白い!」「続き読みたい!」など思って頂けたらぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

ぜひよろしくお願いします!

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