表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/90

敵ってことで良いのよね?/ぶっ壊してください

 クラーラに起きた異変。

 クラリスは最初、ヤマタノオロチから出てきた少年のギフトなのではないかと疑いました。

 まあ、それは当然でしょう。

 クラーラはクラリスと違って男性しか愛しませんが、幼い頃に生きる希望を与えてくれた聖女を愛し、愛するが故に、男性へと性転換させて犯してもらうことを目的に旅をしています。

 そんなクラーラが、美少年だからと言って胸をときめかせ、欲情し、あまつさえお姉ちゃんと呼べと叫ぶなど、天地がひっくり返るほどの異常事態なのですから。


「さあ、クラリス。わたくしをボク君のところへ運んでください」

「い、一応聞くんだけどさ。ボク君って誰のこと?」

「あの子のことに決まっているでしょう? 名前を知らないから、便宜上そう呼んでいるだけです。あ、言っておきますが、ボク君にイタズラをしたらぶっ殺します。それはもう念入りに。塵一つ残さず消滅させますので、覚悟しておいてください」

「好みじゃないからしない」

「あなたの好みはデカい猿ですものね。ですが信用できませんので、縛っておいて良いですか?」

「良いわけないじゃん。それに縛られたら、クラーラを下に運べないよ? 良いの?」

「……良くありませんので、下に降りてから縛ります。さあ、早くわたくしを担いで飛び降りてくだ……ちょ、クラリス? どうしてわたくしを、両手で頭上に持ち上げたのですか? まさかとは思いますが……」

「その、まさかよ。自分で降りろこのショタコン!」


 クラーラの物言いに腹を立てたクラリスは、クラーラを持ち上げて少年へと投げつけました。

 マジカルパッケージを使っているから、風を切るような速度で地面に叩きつけても大丈夫と思ったからそうしたのですが、クラーラは地面に激突することはありませんでした。


「た、助かりました。ありがとう。ボク君」

「ど、どういたしまして……」


 クラリスに投げられたクラーラは、少年が咄嗟にクモの巣のように張り巡らせた蔦によって、地面に激突する寸前に助けられました。

 それ自体は良いのですが、その蔦はクラーラの身体に巻き付いて吊るし、豊満な身体をこれでもかと強調しています。

 私からすればボンレスハムと大差ないのですが、男性や同性愛者にとっては良いオカズ……もとい、目の保養になるのではないでしょうか。

 実際、少年は顔を真っ赤にして目をそらしてしまいましたし。


「あらあら、あらあらあらら♪ もっと見て良いのですよ? なんなら、もっと強く縛ります? 胸の鎧が邪魔なら、外しても良いのですよ? いえ、むしろ外してください! 残念ながら、ヴァージンは聖女様に捧げると決めていますのであげられませんが、逆に、それ以外ならOKです! 具体的に言うとおし……」

「それ以上言うな! どうしちゃったのよクラーラ! 今のクラーラって、あたしとキャラが被ってるよ!?」


 少年の表情が照れから恐怖に変わり、顔色が赤から青に変わった頃に、文字通り飛んできたクラリスがクラーラに待ったをかけました。

 ですが、普段とは立場が逆なせいか、クラリスは少年の前に立ってツッコむのが精一杯のようです。


「邪魔をしないでください! わたくしは今、真剣に、この子を甘やかしたいのです! ええ、それはもう隅から隅まで念入りに撫で回し、舐め回し、上の世話から下の世話まで全てやってあげてわたくしに依存しきらせたいのです!」

「倒錯しすぎだよ! って言うか、下の世話はわかるけど上の世話って何よ!?」

「食事に決まっているでしょう! もちろん、与えるのは三食、わたくしの母乳です!」

「出ないでしょ! いや、出ないよね? 魔術でどうにかするとか、そういうことは言わないよね?」

「魔術に頼らずとも、母乳を出すくらい余裕です。自慢ではありませんが、わたくしは聖女様への想いが強すぎて、定期的に想像妊娠していますから」

「嘘でしょ!? クラーラって、あたし以上の変態じゃない!」


 ちなみにですが、妊娠していなくても、想像妊娠していたり、母性が強すぎると母乳が出るそうです。

 いえ、けっしてクラーラの変態っぷりから目をそらしたくて、余談に逃げたわけではございません。

 本当ですよ?


「ちょっと少年! これって君のギフトなんじゃないの!? そうなんだったら早く解いて!」

「ギフト? ええ、確かに彼は、日頃あなたの悪逆非道に身も心も疲れさせているわたくしに、天が与えたもうたギフ……」

「キャラ崩壊させてるド阿呆は黙ってて! で、どうなの? クラーラがこうなっちゃったのって、君のギフトのせいなの!?」

「え、違……。僕のギフトは、生き物の生命力を活性化させたり、逆に奪ったりするモノで……」

「クラリス! ボク君が怖がってますので、そんな剣幕で詰問しないでください!」

「クラーラに恐怖してんのよ!」

「ああ、すっかり怯えてしまって可哀想に……。すぐにお姉ちゃんが、そこのまな板暴飲暴食性欲魔人をぶっ殺してあげますからね」

「上等よ! やれるもんならやって……!」


 みろ。と、クラリスは続けて、ボンレスハム状態のクラーラを殴って正気に戻させようとしましたが、そのさらに後ろ、長者屋敷の玄関から出てきたクシナダの格好と行動を見るなり、クシナダとクラーラの間に立って両手の平のクシナダへと向けました。

 そして……。


「心意六道! 波紋平傘(はもんひらかさ)! 五枚!」


 手の平を向けた方向へ傘状の障壁を張る波紋平傘を、五枚出しました。

 この技は、一枚でも上級魔術の直撃に耐えられる強度を持つのですが、全身を青いラインが走る紺色のピッチリスーツ姿になったクシナダが、筒状に変形させた右手に妙な恐怖感を覚えたので、クラリスは過剰なほど障壁を張ったのでございます。

 その判断は正しく……。


「よ、四枚も貫通……。嘘でしょ?」


 クシナダの右手から放たれた魔力の塊は、障壁を四枚も貫通し、五枚目に達したとろこで大爆発を起こしました。

 その事実にクラリスは目を真ん丸に見開いて驚愕していますが、吊るされたまま器用にクシナダの方を向いたクラーラは冷静そのものです。

 

「魔力を収束して放出……ですか。威力は伝説級相当ですが、使用された魔力は精々中級魔術程度。クラリスの使い方よりも効率が良いですね」

「分析する余裕があるなら、とっとと降りてきなさいよ。彼女、あたしと似たようなことができるんだよ? 守る余裕なんかないからね」

「仕方ありませんね……」


 クラリスに言われたからではないですが、クラーラは『土斧魔術(アースアックス)』で蔦を切り払って降りました。

 そして、わかりやすい驚異であるクシナダではなく、その後ろの長者屋敷へと……。


「燃やせ。貫け。灰塵となせ。炎大槍魔術(フレイム・ランス)


 上級に区分されている魔術を放ちました。

 しかもクラーラにしては珍しく、火属性の魔術を。

 しかし放たれた炎の槍は、屋敷を包むように発生した光の壁によって、まるで初めからなかったかのように跡形もなく消えてしまいました。


「ふむふむ。対魔術用と言うよりは、対魔力用の障壁ですね。フレイム・ランスの術式を無効化したのではなく、込められた魔力自体を霧散させたのでしょう。ではもう一つ。集え。塊となり、圧し潰せ。塵塊投擲魔術(ダスト・ブレット)


 さらにクラーラは、空気中の埃や塵を集めて巨大な塊をいくつも作って対象へ射出する上級魔術、塵塊投擲魔術(ダスト・ブレット)を使用しました。

 しかし塵の塊は、屋敷のあちこちから飛び出したいくつもの筒から放たれた魔力弾によって撃ち落されました。


「なるほど、あの筒……大きさは違いますが、何年か前にポートガールで採用された、マスケットと呼ばれている武器と似ているあの迎撃用兵装の威力と命中率は脅威ですね。まさか、アレが全て撃ち落されるとは思いませんでした」

「あのさ。あたしまだ、魔力が回復しきってないんだから、検証で上級魔術をぶっ放さないでよ」

「はいはい、わかりました。わかりましたから……」


 あの人形の相手をしてくれ。と、クラーラは続けようとしましたが、視界の端に映ったクシナダによってそれが出来なくなってしまいました。

 代わりにクラーラは、クラリスが割って入ると信じて、クシナダの分析を始めました。

 移動速度が速すぎる。もしかするとクラリス以上。左手が剣に変わっている。わたくしを刺す気? でも、どうしてわたくしを? いえ、そもそも、どうして味方であるはずのわたくしたちを、クシナダは攻撃した? 射線上にわたくしたちがいたから? いいえ、違う。クシナダの狙いはわたくし。

 わたくしを狙って、クラリスの隙を生み、捕えるつもりなのでしょう。

 と、一秒にも満たない時間で仮説を立てたクラーラは……。


「クラリス!」


 クラリスの名前を呼びました。

 何の説明もせず、防御も回避も考えずに、クラリスを呼びました。

 ただそれだけで、クラリスは……。


「言われなくたってぇぇぇぇ!」


 ゴールデン・クラリスを発動し、クラーラを刺そうとしたクシナダを殴り飛ばしました。

 実を言いますと、クラリスはクラーラが何をしてほしかったのか、わかっていません。

 クシナダが目にも止まらぬ速さで移動し、クラーラを刺そうとしたのを察したクラリスは、それを阻止しようと動いただけなのでございます。


「とりあえず、敵ってことで良いのよね?」


 人が発しているとは思えない、ギギギギという怪音を関節から鳴らして、これまた人には不可能な方向へ手足を曲げながら起き上がるクシナダから目を離さずに、クラリスはクラーラに問いました。


「ええ、アレは魔力で動く人形。心も魂もない、ただの操り人形なので容赦なく、ぶっ壊してください」


 クラリスの問いに、クラーラは嬉しそうに頬を歪めて返しました。

 敵対されたのだから、遠慮なく解体できる。

 あの人形に内臓されているという、霊子力バッテリーとやらを取り出せる。

 それが嬉しくて、クラーラは全身を震わせました。

 その選択が、間違いだとは欠片も考えずに。

 

読んでいただけるだけで光栄なのですが、もし「面白い!」「続き読みたい!」など思って頂けたらぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ