クラーラが壊れちゃった/ええ、わたくし、壊れてしまったようです
長者屋敷の屋上に着地した二人が対峙しているのは、現実とは思えない巨体を引きずりながら迫るヤマタノオロチ。
中身のない張りぼてだとは言っても、植物で形作られていると思われるその巨体が轟音を響かせて迫る様は、山が迫っていると言っても過言ではありません。
ただ、不自然な点が一つ。
巨体を引きずっているのは、実際に迫っている巨体と音から判断できるのですが、後ろに跡ができていません。あんな巨体が動けば木々は倒れ、地面は抉られるはずなのに、その跡が全くないのです。
「ねえ、クラーラ。とりあえず、ぶん殴ったんで良いかな?」
「体力の無駄遣いなのでおやめなさい。あんな張りぼて、燃やせばいいのです」
「いやいや、それじゃあ、周りの木も燃えちゃうでしょ? 山火事になっちゃうよ」
「わたくしはべつに、かまいませんが?」
「絶対に駄目。だってクラーラ、ソドる気満々じゃない。山火事どころか更地になっちゃうから、別の方法を考えて」
「ツシマ以来、ソドってないのだから良いじゃないですか。わたくしのストレス発散のためにも、ソドらせてください」
ソドるって何よ。
おっと、ついつい、誰にともなくツッコンでしまいました。申し訳ありません。
クラリスはクラーラにソドムを使わせないためか、「駄目ったら駄目」と、言いながら体一つ分横に移動しました。
どうあっても使わせる気がないと諦めたクラーラは……。
「では、目には目を、木には木をと言うことで……」
クラーラはヤマタノオロチへモーニングスターを向け、上級魔術相当の魔力を、ヤマタノオロチの周りの木々へと放出しました。
そして、十分に行き渡ると……。
「貫け。木槍魔術」
何十本もの木々を槍へと変えて、ヤマタノオロチを貫きました。
ですが、体が木でできているからか、それとも本体に届いていないのか、身動きは取れなくなったものの悲鳴すら上げません。
「効いてないっぽくない?」
「ダメージはないようですね。ですが、わたくしが放ったウッドスピアーはヤマタノオロチの体に根を張り、しかも干渉を受けませんので、あれから抜け出すには本体が出て来るしかありません。ほら、そう言っている間にも、出てきまし……」
草をかき分けるように出てきたヤマタノオロチの本体を見た途端、クラーラは言葉を失いました。
いえ、言葉を失っただけではありません。
唇が小刻みに震え、それが徐々に、全身に伝播しています。
「な、何ですか? この気持ちは、」
ヤマタノオロチから這い出て来たのは、一見すると尖った耳を持つ、少女と見紛わんばかりに可憐な容姿をした亜人の少年でした。
なのに何故、一目で少年だとわかったかと言うと、彼が全裸だったから。
這い出てすぐに、蔓と葉っぱで陰部は隠しましたが、クラリスはもちろん、クラーラも見逃さなかったのでございます。
「クラーラ? どうかしたの? って言うか、興奮してない?」
頬は紅潮して不自然な内股。
さらに、大きな胸を持ち上げるように自身の体を抱きしめるクラーラは、誰の目にも性的に興奮しているように見えるでしょう。
なのでクラリスは、からかってやろうと先の質問をしたのですが……。
「ええ、わたくし、興奮しています」
「いやいや、誤魔化したって……ええっ!? どうしちゃったのクラーラ!」
まさかの肯定。
しかも、それが引き金になったのか、クラーラはフラフラと屋上の淵まで歩き、着くなり少年へ両手を向けて……。
「さあ! わたくしをお姉ちゃんと呼んでください! ママでも可!」
と、叫びました。
その叫びを聞いて、クラーラの欲望を向けられた少年は「ひっ……!」と、短い悲鳴を上げて後ずさり、クラリスは驚きすぎて怖くなり、歯の根が合わなくなっています。
それでも何か言わなければと変な義務感が湧いたクラリスは、目尻に涙を浮かべながら……。
「クラーラが……。クラーラが壊れちゃった」
と、言葉を絞り出しました。
普段のクラーラなら、クラリスに「壊れてるのはあなたです」とか、「おかしなことを言うとぶっ殺しますよ?」などと切り返すのですが、聖女にしか興味がないと豪語するクラーラの信仰を揺るがすほど、少年の外見は好みだったらしく……。
「ええ、わたくし、壊れてしまったようです」
と、クラーラが言ったとは思えないセリフを、口走りました。
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