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第5話 喧騒

皆さん、お越しいただきありがとうございます。少しでも楽しんでいただければ幸いです。

「……頑固だな、お前さんも」


 結局、サリアはシリウスの隣で眠ってしまった。

 そんな彼女をシリウスは抱き上げ、ベッドに寝かせ毛布をかける。


「さて、厄介な人間が近づいてきているな」


 シリウスはサリアを起こさないように静かに部屋を出る。

 部屋を出ると廊下に三人の人間がこちらに向かって歩いてきてる所であった。


「よおぉ、スカシ野朗……今迎えに行ってやろうと思っていたんだが丁度いい」


 体中に細かい傷を付けたゴルゴアが脇に二人の男を引き連れてシリウスを睨む。


「へっへっへ……」

「こいつがゴルゴアをねぇ……」


 一人は背が低く気味の悪い笑みを浮かべている、もう一人は長身で細身だ。


「お前たちのような馬鹿は今までいくらでも相手してきたが……お前たちほど品のないのも中々お目にかかったことはないな」


 シリウスは自身の髪に触れる、輝く金の髪は黒い長い髪へと変化する。


「な、なんだてめぇ」

「いいぞ、相手してやる……が、ここじゃ騒がしい。せっかくだから外で相手してやろう」

「おういいぜ、こんな狭いところじゃ、俺達も戦い辛いからなぁ」


 ゴルゴアは、シリウスがわざわざ自分達が有利になるようにしてくれたことに心の底から笑みを浮かべていた。先ほどは油断したが、今度は身包みを全部這いでやるとゴルゴアは拳に力を込めた。




「いいぞ、掛かって来い」


 酒場から出るなり、シリウスはゴルゴア達を挑発する。


「ふん! 馬鹿が……トウサ!」


 ゴルゴアが名前を呼ぶと、長身の男……トウサが投げナイフをすばやく投げつける。

 シリウスはそれを器用に指で挟み、後ろに放ると、後ろからすばやく近づいてきていた背の低い男の頭上にナイフが降ってくる。


「は?」


 背の低い男は、間一髪でナイフを避ける。


「大丈夫か、セイセン! この野朗っ!」


 ゴルゴアがすばやく間合いを詰めて、シリウスに殴りかかるがその拳をシリウスは軽くしかたら拳でつつくと、ゴルゴアの体は一回転して、その場に背中から倒れる。


「ハアアアアアアア!」


 ゴルゴアの巨体に隠れて、トウサがナイフで切りかかる。

 それに合わせて、後ろから背の低い男……セイセンがシリウスの足元にナイフを振るう。

 普通の人間であれば絶対に回避が難しい、コンビネーション攻撃。


 しかし、シリウスは表情一つ変える事無く、両足を持ち上げて迫り来るトウサの顎を蹴り飛ばす。

 それと同時に両腕をセイセンの頭に上に置き、体重をかけて踏み台にする。

 前のめりだったセイセンはそのまま顎を地面にぶつけて、気を失う。

 トウサも振るった勢いのまま気を失い、前のめりに倒れた。


「い、今何が起こったんだ?」


 幾人かいた観戦者が全員、今目の前で起こったことを理解出来ずにいた。

 ただ、黒髪の奴が一瞬にして三人の男を気絶させたという結果だけが残っている。


「おい、あれさっきの金髪の兄ちゃんだよな……」

「髪型も髪色も違うけど……背格好は同じだし」

「いや、そんなことよりもここじゃ一番強い、ゴルゴア、トウサ、セイセンが一瞬で倒されたぞ」

「あいつ何もんなんだよ……」


 シリウスは涼しい顔をしながらゴルゴアに近づく。


「おい、起きろ」

「……うっわ、おいおいおいおい、お前何者なんだよ!」

「少し静かにしてくれ、騒がしいのは嫌いなんだ」

「す、すまねえ……いや、喧嘩売った俺が言うのもなんだが……お前、すごい強いな……」

「そんなことはどうでもいい。これで気が済んだか?」

「あ、ああ……」

「それじゃ、今後は大人しくしてくれ。少なくとも俺達には関わらないでくれ」

「ああ……分かった」

「よし」


 シリウスはゴルゴアを片手で簡単に起こすと、他の気絶した二人を持ち上げる。


「すまんな。お前たちの動きが予想以上に良かったから手加減できなかった。早いうちに二人は医者に見せたほうがいい」


 そう言ってシリウスはゴルゴアに男達を渡す。


「お、おう……その、ありがとう……」

「……人間は、こんな時にも礼を言うんだな」


 ゴルゴアは不思議な顔をしていた。


「ああ、なんでもない。とにかく、医者だ」

「分かった……おーいマスター!」


 二人を受け取ったゴルゴアは酒場の中へ大声を出しながら入っていった。


「ふむ……やはり加減が難しいな……」


 ゴルゴア達もいなくなり、観戦者も散り散りになった。

 そんな頃合を狙ったかのように一人の男がシリウスに近づいてくる。


「よお、兄ちゃん。あんためちゃくちゃ強いな。もしかして騎士団出身か?」

「誰だ、あんたは」

「おおっと悪りい、俺の名はロン。よろしくな」


 ロンはシリウスに握手を求める。


「悪いが、素性の分からない奴と仲良くする気はないんだ」


 と言って差し出された手を無視する。


「なるほど、だいぶ用心深いね……いいさ、兄ちゃんとはまた会いそうな気がする」


 そう言ってロンは暗くなった町の外へと歩き出した。

 真っ赤なマフターをなびかせて……。




「ありゃりゃ……こいつは酷いね」


 シリウスが酒場に戻ると、繋げた机の上にトウサとセイセンが寝かされていた。

 そしてその二人を診察するかのように一人の恰幅のいい女性が忙しなく動いている。


「おいあんた! 早く、縛るもんと木板を持って来ておくれ!」


 女性はカウンターの奥に向けて大声で叫ぶ。

 シリウスはそんな様子を尻目に階段で上に向かおうとする。

 すると、女性がシリウスを見つけるなり、大声で。


「おいおい、あんたかい? この二人の顎を綺麗に割ってくれたのは……いやー見事だね。こんなことできる人間は中々いないよ! あんた武道家かなんかかい?」


 とシリウスに話しかけてくるが、シリウスはそれを無視する。


「なんだいつれないね」


 そこへ奥から酒場のマスターが色々と道具を盛ってやってくる。


「こ、こんな所で大丈夫か? リリア」

「ああ、大丈夫だよ」


 そうしてリリアは手馴れた手つきで、トウサとセイセンの顎を固定する。


「ほうら! ゴルゴア、これでしばらく安静にしとけば大丈夫だよ! これにこれたら、他の客に悪がらみするんじゃないよ!」

「おう……もうやめるよ……ありがとうな」

「礼ならそこのイケメンの兄ちゃんにいいな、こんな綺麗に割ってくれて。あの兄ちゃんが本気だったら、あんたら死んでるよ」


 リリアがそう言うと周りの視線が一斉にシリウスのほうへ向く。


「本当にすまなかった……」

 

 ゴルゴアも、その場で頭を下げている。


「済んだことだ、気にするな。俺のほうこそ加減がうまく出来なかった、すまない」


 するといつの間にか近づいてきたリリアがシリウスの腕を掴む。


「よーし! 今夜はゴルゴアの奢りで全員飲むよ!」


「「うおおおおおおおおおおおお!」」


 リリアの声に酒場にいた全員が歓喜の雄叫びを上げる。


「よし! 兄ちゃんも一緒に飲むよ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺は……」

「いいじゃねぇか、奢ってくれるんだから一杯飲もうぜ!」

「そうだぜ、これも兄ちゃんのお陰なんだからよ」

「そうだそうだ」


 客の熱気に押され、シリウスはなんだか断るのが面倒になった。


「仕方がない、一杯だけ付き合うか」


 その言葉に更に酒場が熱気を増す。

 もちろん、熱気が増した酒場の勢いに飲まれ、シリウスは結局朝まで付き合わされることになった。

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