第69話 ガイド
69話~
エレナ率いるラミアの盗賊に襲われたルア達だったが……。
「ふむ、まぁこんなものか。」
剣を鞘へとしまい、手をパンパンと叩いたロレットの周りには、ラミア達が乗っていた巨大な蠍の魔物と、頭に大きなたんこぶを作ったラミア達が地面に横たわっていた。
「なんじゃ……わしまで出番が回ってこなかったのぉ~。」
ロレットの後ろに立っていた由良が残念そうに呟いた。
「ボクは戦わなくてホッとしたけど……。(この服、激しく動いたら大事なところが見えちゃいそうだし……。)」
「ルア、お前というやつは……そこは残念がるところだぞ?せっかくこやつらで昨日の修練の成果を試せたというのに……。」
ルアの頭の上で東雲は少し飽きれながらぼそりと言った。
「まぁ、今回に限ってはロレットのやつが真っ先に全員蹴散らしてしまった故……あまり咎めないでおこう。次のチャンスは逃してはいかんぞ?」
「わかりましたぁ~っ……。」
東雲のその言葉にルアは少し面倒くさそうに答えた。
二人がそんな会話をしている最中、ロレットはエレナと呼ばれていたラミアに歩み寄り彼女の体を持ち上げた。
「むぎゅぅ~…………ごめんなさい降参です~。許してください……。」
エレナは殺されると思ったのか、それとももっと痛めつけられると思ったのか、泣きながら必死にロレットに許しを乞い始めた。
そこにさっきまでラミアたちを束ねていた彼女の威厳というものは一切存在せず、ただただ泣きじゃくる一人のラミアの少女がそこにはいた。
そんな彼女に、ロレットはあることを問いかける。
「……ここからオアシスまでの道のりを知っているか?」
「は、はひっ!?お、オアシスですか?」
「うむ、我らはオアシスを目指して歩いていたのだが……生憎方位がわからなくなってしまってな。」
ロレットが事の経緯を説明していると、それに助かる術を見出したエレナは必死にそれに縋り付き始めた。
「あ、あたし知ってます!!何なら案内しますから!!い、命だけは……。」
「貴重なガイドを殺すわけがないだろう。」
「ほ、本当ですかッ!?」
「あぁもちろんだ。……ただ、変な気を起こしたりしなければ……だがな。」
「も、もちろんですよ~。」
ロレットの威圧にエレナは怯えながらそう答えた。そして彼女は他のラミアたちを起こし、根城へと帰らせると、人数分残した蠍の魔物に乗るようにルアたちに促した。
「これに乗ればいいのか?」
「はいっ!!徒歩よりも断然早いですよ。」
促されるがままロレットは蠍の魔物の背中にまたがった。この魔物は普段からラミアたちに調教されているようで、人が乗っても暴れたりはしないようだ。
「ふむ、少し硬いが……贅沢は言えんな。」
ロレットが乗り心地を確かめていると、その横で蠍の魔物を見つめながら由良がため息交じりに口を開いた。
「まさか虫に乗ることになるとは……あまり気が進まんが仕方がないのぉ~。」
「フフフ、そういえば由良は虫が苦手だったな。」
「本来ならば虫は見かければ即……焼却処分するところじゃが…………。」
じろりとした由良の視線に殺気を感じたのか、由良が乗る予定だった蠍の魔物がびくりと震え、懇願するような視線を由良へと向けてきた。
「…………野宿よりはマシじゃ。」
そうぼそりと呟くと、由良は嫌がりながらも蠍の魔物の上へとまたがった。心なしか、蠍の魔物もほっとしたような表情を浮かべているようにも見える。
そして二人がまたがったのを見て、ルアの頭の上に居座る東雲が彼を催促する。
「ほれ、お前も早く乗るのだ。」
「わかりました……よっと!!」
体が小さいルアにとっては、この蠍の魔物にまたがるのも一苦労だ。なんとか背中にまたがると、彼は意外にもひんやりとしている座り心地に驚いていた。
「い、意外と冷たい……。」
そして全員が蠍の魔物にまたがったのを確認すると、エレナが声を上げた。
「それじゃああたしが先導するので……皆さんは振り落とされないようにしっかりしがみついててください。……よし、行けっ!!」
エレナの号令とともに彼女を乗せた蠍の魔物は走り出し、その後に続くようにルアたちが乗っている蠍の魔物も走り始めた。
しばらく蠍の魔物を走らせていた時、ふと前を走るエレナにロレットが問いかける。
「ちなみにオアシスまではどのぐらいかかる?」
「あともう少しで見えてくると思いますよ。今日はちょっと砂が舞ってて視界が悪いから見えないんですけど、いつもならこの辺で見えてくるんです。」
「ほぅ……そうか。我はそろそろ尻が痛くなってきたのだが……。」
「右に同じくじゃ。」
「ボクもです。」
「す、すみません……もう少し我慢してください。」
生きるため必死にロレットたちのご機嫌を伺いながらエレナは一行をオアシスへと導くのだった。
それではまた明日のこの時間にお会いしましょ~




