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第66話 お説教

66話~少し短いですが、切りがよいので切りました。

 その日の夜……みんなが寝静まったころ、中庭に一人の人影があった。


龍神の一閃(ドラグーンスラスト)ッ!!」


 そう必殺技の名前を叫ぶ……その人影の正体はロレットだった。東雲に教えられた練習方法通り、魔力が尽きても手を止めずに必殺技を打ち続けていた。


 ロレットはどんどん自分を置いて成長を続ける由良と、圧倒的実力を持つ東雲、そしてメタモルフォーゼによって魔物の力を身につけ、大幅に自身の力を引き上げることができるルア。

 自分よりも強い三人に囲まれてロレットは陰ながら少しばかり負い目を感じていた。


 未完成な必殺技、進化したてで馴染んでいない体、そして未熟な心、精神。


 そのどれもがロレットの焦燥感を掻き立てていた。


龍神の一閃(ドラグーンスラスト)ォォォォッ!!ーーーーーっハァッ……ハァッ……。」


 魔力がすっからかんになり、脱力状態になってしまったロレットは剣を握る手に力が入らなくなってしまいだらりと剣を握ったまま手を垂れさせてしまう。

 朝から無理に剣を振り続けていたせいで彼女の剣を握る手には血豆ができ、それが痛んでまた彼女のことを苦しめていた。


「ぐ……こんなもの……この程度で我は止まれぬのだッ!!」


 血がにじんでいる手で再び剣を振り上げようとしたロレットの手を誰かが止めた。


「なっ……!!」


「まったく、体に無茶をさせるのもその辺にしておくのだな。」


 ロレットの手を止めたのは人の姿に化けた東雲だった。


「東雲ッ!!止めてくれるな、我は強くならねばならんのだ!!」


「はぁ、大バカ者め。」


 呆れたように東雲はぼそりと呟くと、ロレットの頭に勢いよく拳骨を振り下ろした。


 ゴンッ!!


「ぐぅっ!?」


「年長者の言うことは聞くものだぞ小娘。」


 拳骨を落とされた頭を抱えているロレットに東雲は歩み寄ると強引に彼女の手を引っ張り、手のひらを覗き込んだ。そしてやはりかと呟きながら東雲は大きなため息を吐いた。


「一度死を味わったものとしての助言だが、己の体は大切にするものだぞ。なにせ今世に一つしか存在しないかけがえのないものなのだからな。」


「う、うむぅ……。」


 あまりに説得力にあふれていたその言葉にロレットは思わずうなずくしかなかった。


「強さを求めるのはわかる。妾とて前世では誰よりも強さを求めていたからな。だが、強くなるのにも健全で健康な体というのは必ず必要だ。体が壊れれば壊れるほど強くなるなんてそんな阿保な理屈なんぞ存在しない。覚えておけ。」


「わ、わかった。」


 東雲はロレットに教えを説きながら彼女の掌にできた血豆を回復魔法で治療する。そして彼女の手が元通りになると東雲は手を離し、くるりと踵を返した。


「今日はもう夜が深くなった……その汗を流してとっとと寝腐るがよい。」


「……すまない、感謝する。」


 東雲の後姿に向かってそうお礼を告げたロレットに、東雲は手をひらひらとさせながら城の中へと戻っていった。


 そして一人中庭に取り残されたロレットは、雲一つなく、星が輝く夜空に向かってポツリと呟いた。


「お婆様……()はあなたに追いつくことができるのでしょうか。今の()は……親友の由良にも追い越されてしまいました。()はこれからいったいどうすればいいのでしょうか……。」


 そう夜空に向かって問いかけた彼女の一人称は、いつものように自信ありげな()……ではなく()に変わっていた。そして口調も、弱々しく普段ルアたちが見ているロレットとはまるで別人のようだった。


 それから少しの間夜空を眺めていたロレットは、気持ちの整理がついたのか、ゆったりとした足取りで城の中へと戻り、修練によってかいた汗を浴場で流し眠りにつくのだった。





 彼女がふと見せたあの弱気な一面……アレが本当の彼女だったのだろうか。その真相は今のところ誰にもわからない。


 ルア達が夜の国へと出発するのは明日……。夜の国を支配しているという原初の吸血鬼とは一体何者なのか。

 そして彼女が天使の軍団を一人で殲滅したという噂は本当なのか……。


 ルア達は原初の吸血鬼を仲間に引き入れるため、明日……砂漠を越え、オアシスへと向かう。

それではまた明日のこの時間にお会いしましょ~

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