第61話 次の協力者
61話~
東雲流の耳かきを両耳とも施され、ルアが東雲の膝の上で少しぐったりとしているとがらりと家の扉を開けて少し服が乱れた由良と、ほぼ無傷の真琴が入ってきた。
そんな二人にくすくすと笑いながら東雲は問いかけた。
「どうだった二人とも?」
「うん、まだまだ東雲はんには及ばんけど……ぼちぼちって感じかね~。まぁまだ仙孤になって日が浅いんやし、こんなもんやないの?」
ぽりぽりと頬をかきながら、真琴は由良のことをそう評価した。
「由良はどうだった?真琴の力を前にして手も足も出なかったか?」
「正直、鼻っ柱を折られた気分ですじゃ。確かにわしは仙狐になってまだ日は浅い……それでも十分すぎる力をつけたつもりじゃったのですが……。」
ペタン……と耳と尻尾を垂れさせ、落ち込みながら由良は言った。
「くくくくく、まだまだお前は仙狐の頂にたどり着けておらぬだけのことよ。己の力に満足せずこれからも精進を続けるのだな。」
「はい……。……それで一つ東雲様に質問があるのですが。」
「ん?どうした。」
「どうしてルアが東雲様の膝枕で寝ておるのですかな?」
「なぁに、ちとルアの耳に垢が溜まっておるようだったからな。耳掃除をしてやっていたのだ。」
「…………ホントにそれだけですじゃ?」
「安心しろ、少なくともお前の目がある前では大胆なことはせぬよ。くくくくく…………。」
「わしの目がないところでもダメですじゃ!!」
からかう東雲にムキになって由良は言った。
「くくくくく、ではしっかりとルアのことには気を配っておくのだな。」
「もちろんですじゃ!!」
「っと、さて……二人の力比べも終わったことだ。そろそろ次の強者に目星でもつけておこうか。二人ともまぁ座れ。」
東雲の前に由良と真琴は座った。
「ほんで、東雲はん達は天使をいてこませるような人をさがしよるんよね?」
「そうだ。今のところ集まったのはこの由良とルアの他に龍族のロレット……そして真琴、この三人だけだ。まだまだ足りぬ。」
「ロレット……。その人ってもしかして、きょーびの女王さんよね?コレットはんのお孫さんの……。」
「うむ、あやつも由良に負けず劣らずの強者だ。実は麓までは着いてきていたのだが……どうやら下戸らしくてな。酒の気に当てられて酔っ払ってしまったよ。」
「さよですか~。下戸ならしかたあらへんね~。」
少し残念そうに真琴は言った。
「まぁ、後で紹介はしてやる。それまで楽しみにしておれ。コレットそっくりで驚くぞ?」
くつくつと東雲は笑うと、彼女は話を戻した。
「少し話が脱線したが、先程も話した通り、我らにはまだ仲間が足りん。そこで二人に質問だ。天使にも通用しうる実力を持つ強者に心当たりはないか?」
「東雲様は他に心当たりはないのですか?」
「生憎生前妾が面識があったのはコレットと真琴のみ。他の者は知らん。」
「東雲はんはずっと修行しとったんよ~。あてらが訪ねたときだけ手を止めてお酒を飲んだりしてたんよ。」
「まぁそういうことだ。」
東雲の過去を聞いて、思わず唖然とする由良。そして彼女は納得する。仙狐となった自分と、遥か昔から仙狐だった東雲との力の差が全く埋まらないことを。
「ということで、お前達二人の知識を借りたい。」
「う~ん、そうやねぇ~……あてもそんなに表にでとったわけやないからなぁ~……。由良ちゃん、誰か知らん?」
「…………一人だけ心当たりが。」
「おぉ!!本当か、それでそやつは一体化どこのどいつなのだ?」
「わしも実際に会ったことはなくて、噂話を耳に挟んだ程度なのですが……夜の国には原初の吸血鬼がおる……と。」
由良の話を聞いた途端に東雲は好奇心に満ちた表情を浮かべた。
「ほぅ!!原初の吸血鬼とな。吸血鬼と言えばもともと強い種族ではあるが、その中でも原初の者とな……。それは気になるな。」
「ですが、なにぶん場所が場所なもので……。」
好奇心に満ちた表情を浮かべた東雲の傍らで、由良だけは少し気まずそうな表情を浮かべていた。
というのも……。
「夜の国と言えばサキュバス達の根城。そんな場所にルアをも連れていくのは少しばかり…………。」
「良いではないか、少し早めの社会勉強というやつだ。」
「そうやよ~由良ちゃん。可愛い子には旅をさせろ~って、ことわざにもあるやろ?」
「うむむむ……ですが、ルアがサキュバスたちの淫気に耐えられるかどうか…………。」
「その辺は妾がどうにかしてやる。安心せい。さぁ!!話はここで終わりだ。次の行き先は夜の国に決定だ。」
(ううぅ……本当に大丈夫かのぉ~。)
強引に話を打ち切った東雲に、一縷の不安を抱える由良だった。
それではまた明日のこの時間にお会いしましょ~




