第40話 鍛冶師タバサ
40話~
ロレットとルアがドワーフファクトリアの奥の方へと脚を踏み入れると、だんだん人影も少なくなってきてどこか寂れているような雰囲気が漂い始めた。
「こ、ここにロレットさんの剣を打ってくれる人がいるんですか?」
「あぁ、一見この辺の街並みは寂れているように見えるだろうが……ドワーフファクトリアにおいてこの付近はドワーフの中でも飛び抜けた鍛冶師達が店を開いているんだ。」
ほとんどの店のシャッターがしまっていて、決してそんな風には見えないが……ロレットの言うことなのだから間違いないのだろう。
そしてふと、ロレットはシャッターの閉まっている店の前で歩みを止めた。
「ここだ。」
「ここもシャッター閉まっちゃってますけど……。」
「これはな、この店の店主が客を選別するために常に閉まっている。」
「選別するため……ってじゃあどうやって中に入るんですか?」
「フフフッ、こうやるのだ。」
にやりと笑い、ロレットが手に力を込めた時だった……。
「あー!!まてまてまて、常連はぶっ壊さなくていいって何度も言ってんだろ!!」
中から止めるように声が聞こえたかと思うと、ガラガラと音を立ててシャッターが開き、その向こう側にはドワーフが立っていた。
「久しいなタバサ。」
「1年ぶりか?ロレット嬢。まぁウチを訪ねてくるってことは、用件は決まってる。中で話を聞くぜ、入りな。」
タバサというドワーフに促されるがまま、二人は店の中へと入る。すると、和室のような場所へと案内され、タバサが熱いお茶を持ってきた。
「ところで気になってたんだが……そっちの嬢ちゃんは新しい従者か?」
「あぁ。」
タバサが出してくれたお茶を啜りながら、ロレットはコクリと頷いた。
「ほぉ~?お前さんが従者を連れて歩くなんざ珍しいこって、自分より弱ぇやつに従者なんて任せらんねぇってあれだけ言ってたのにな。」
タバサは興味深そうにルアの顔をジロジロと眺める。
「嬢ちゃん名前は?」
「あ、る、ルアです。」
「可愛い名前じゃねぇか。歳は……まだ10にもなってねぇようだが、ロレット嬢に気に入られるなんてやるじゃねぇか。」
「あ、ありがとうございます。」
そしていよいよタバサは本題をロレットに問いかけた。
「ほんで?今日はどうしたんだ?前打ったミスリルの剣が刃こぼれでもしたか?」
「いや、前打ってもらったやつは……こうなってしまった。」
ちゃぶ台の上にロレットは柄だけになってしまった、元はミスリルの剣だったものを置いた。
すると、タバサは驚いた表情を浮かべる。
「おまっ……純ミスリルだぞ!?しかも、オレが打った剣だぞ!?どうやったらこんな柄だけになっちまうってんだよ!!」
「ある強者に挑んだらこの様だ。」
「はぁーーー…………マジか。オレが打ったミスリルの剣をここまで砕けるやつなんて、よっぽど強ぇやつだったんだろうな。」
ロレットから事情を聞いたタバサは思わず頭を抱えた。
「ちなみにこの子だぞ?」
ポンとロレットがルアの頭に手を置くと、再びタバサは驚いた表情を浮かべる。
「ウソ……だろ?」
「我は意味のない嘘はつかん。」
「こ、こんな子供がいったいどうやったらミスリルの剣をぶっ壊せるってんだ!?」
「こうやって刃の部分を握られたら砕け散ったのだ。」
「もう驚きすぎて言葉もでねぇよ。」
「フフフ、そうだろう?我も最初は信じられなかったさ。」
大きなため息を吐き出したタバサは、再びルアのことをじっと見つめた。
「……どう見ても、そんなに強そうには見えねぇんだけどなぁ~。腕も細ぇし、魔力もそんなに多くはねぇ。」
タバサはルアのことをじっと観察すると、ふぅ……と一つ息を吐き出してロレットの方を向いた。
「まぁ一先ずこの嬢ちゃんがとんでもなく強ぇって話は置いといて……だ。ロレット嬢、こいつに代わる武器が欲しいって話で間違いねぇな?」
「うむ。」
「素材は?またミスリルでやるか?」
「いや、これで頼む。」
ロレットはカバンから金色で透き通った、まるで宝石のような石を取り出してタバサの前に置いた。
「……オリハルコンか。」
「意外と驚かないのだな。」
「まぁな、予想はしてたし……てか逆にいいのか?一応国宝だろ?」
「形を剣に変えるだけだ。何も問題はない。」
「ハッ、モノは言い様ってか。そういう考えは好きだぜ。」
「受けてくれるか?」
「あたりめぇだ。伝説の金属オリハルコンだぜ?腕がなるってもんだぜ。」
タバサはロレットの依頼を受けてくれたようだ。
「どのぐらいでできそうだ?」
「そうだな、オリハルコンはとんでもなく硬ぇし変形させにくいから……だいたい短く見積もっても丸一月ってとこか?」
「おぉ!!意外と早くできそうだな。」
「バカ言え、今日から出来上がるまで丸一月は徹夜だ。まったく忙しくなるぜ。」
やれやれとしながらタバサは言ったが、どこか嬉しそうだ。
「後で良い酒を買ってこよう。それで手打ちにしてくれ。」
「とびっきり酒精の強ぇやつにしてくれよ?1発でブッ飛べるやつがいいな。」
「フッ、わかった。じゃあ頼んだぞ?」
「おう!!任せとけ。」
そしてお茶を飲み干したルアとロレットの二人は、タバサの店を後にしたのだった。
それではまた明日のこの時間にお会いしましょ~




