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2、夢じゃなかったです


「本当に厄介な事に…。僕はレオナルドです、レオで良いですよ。皆そう呼びますから。」


レオ君の家はマンションで図書館から10分程歩いた所だと話してくれた。図書館の外は真っ白な壁の家ばかりで真っ白な服の人ばかりだった。なので私は目立って仕方なかった。

レオ君のマンションは階段の隣に屋上までの吹き抜けがあってそこに入ったら体が浮いた。最初何が起こったのか分からなくてびっくりしたがレオ君が手を引いてくれて部屋がある6階で降りる事ができた。浮き上がるタイプのエレベーターとか怖い。

玄関を開けるとリビングで、中には暖炉がありその前にゆったりとした大きめの1人がけの茶色の革のソファーが、その隣に小さなテーブルが置いてある。部屋の奥はキッチンで窓枠のアイアン調に合わせているのかダイニングテーブルや椅子も同じようにアイアン調のものだ。

私が玄関に立ち尽くしていると暖炉の前のソファ座るように手招きされたので会釈して座る。


「すみません。えっとレオ君ありがとうございます。本当に迷惑をおかけして申し訳ないです。」


と立って頭を下げる。私も少し落ち着いてきてやっと相手をしっかりと見ることができてきた。

レオ君は水色がかった銀髪で目にかかる前髪を左目の上で分けている。男性の髪型に詳しくないので名前は分からないが、前髪と同じ長さで横の髪も切り揃えていて後ろは刈り上げっぽい感じ。瞳は緑色で肌は透き通るように白く唇は燃えるように赤い。目は細い垂れ目で鼻筋は通っていて薄い唇。身長は180センチ位だろう。

多分、いや絶対に私より若い気がする。


「あんたが謝る必要はありませんよ。勝手に知らない世界に連れてこられて見知らぬ男の家なんて、泣いてもいいくらいです。館長も3回目の結婚なんだから新婚とか…女性が一緒の方がいいでしょうが。とにかくあんたはソファで。うちには綺麗なシーツも布団も僕が使ってる分しかないんです。毛布はおろしたのを貸しますから。」


呆れたように言う彼はあのおじさんの言う通り優しい。というかあのおじさんは館長さんなんだ。


「ありがとうございます。」


「とにかく何か食べますか?」


「い、いいえ。今日は大丈夫です。すみません。」


正直、食欲はない。


「じゃあシャワーどうぞ服は…。まあ適当に出しますから。準備するんで座って待っててください。」


「はい、お願いします。本当にすみません。」


彼は私を1番に見つけただけなのに本当に申し訳なくてもう一度頭を下げる。


「もう謝らなくていいから。言っても無理だろうけどちょっと肩の力を抜いてください。ほら水飲んで。」


と魔法で水が入ったコップを出した。手渡されてどっから見ても普通の水だけど、どこから出したのか分からないからかどうしても怖くて飲めない。


「あ、ああ。すみません。」


じっと見られて居心地が悪く結局謝ってしまう。レオ君は私とコップを見ることを止めてキッチンの横の2つある扉の手前の扉に入っていった。


「はあ。」


大きく溜息を吐いてソファに座る。コップの水をじっと見て少し考えて飲まずに小さなテーブルに置いた。


「準備できましたシャワーの使い方を教えるのできてください。」


「はい。」


さっき入っていった扉に一緒に入ると洗面所で、そのまた奥にある扉は浴室のようだ。レオ君が浴室に入って実際にシャワーの出し方を教えてくれる。どうやら水道と電気は私の世界と一緒のようだ。って記憶もないのに。


「分かりました?」


「はい、すみません。」


「じゃあ着替えはここに。」


「はい、ありがとうございます。」


「まあゆっくりどうぞ。」


レオ君が扉を閉めて出て行く。真っ黒のワンピースを脱ぐとコトンと何かが床に落ちた。色んな事があり過ぎて気が付かなかったけどポケットに腕時計が入っていたようだ。革のベルトも文字盤も茶色で金属の部分はピンクゴールドで文字は白、12の場所にダイヤっぽい石が入っている。


「これは。」


腕時計を拾った瞬間、記憶が一瞬蘇った。



「……の誕生日おめでとう。……も来年から……だろう。これは…のお祝いだ。ダイバーズウォッチだから……も好きだった……感じていてほしい。」



「誕生日プレゼント?」


相手の顔にモヤがかかり記憶もところどころ抜けていて不完全だけどこの腕時計が大事な物だという事は分かった。


「お願い助けて。」


私は腕時計を縋るように握ったが記憶も戻らないし帰る事もできなかった。



「すみませんお先です。」


レオ君が用意してくれた服は白のロングワンピースと上下揃ったスポーツタイプの白の下着でどちらも全く使用感がない物だった。


「はい、じゃあ暖炉つけたんでもう寝てください。僕もシャワー終わったら寝るんで。」


「はい、ありがとうございます。」


とお礼を言っている途中で洗面所へ行ってしまった。ソファの上に置いてあった毛布を肩までかけてとにかく目を閉じた。これが夢であるようにと念じながら目を閉じた。



「ほら起きてください。朝食は食べますか?」


夢じゃない。魔法の世界のままで記憶もないまま。でも一応昨日の記憶はある。


「大丈夫です。すみません。」


「分かりました。」


とレオ君はマグカップから何かを飲んでいる。コーヒーの香りがしているからコーヒーかもしれない。


「ありがとうございます。」


私はレオ君が朝食を食べ終えるまでもうすっかり消えている暖炉を見ていた。



「おはようございます。お2人じゃあ行きましょうか城兼研究所へ。」


「「はい。」」


館長さんと図書館の前で会ったので3人で小さな川に沿って歩いて行くと城へ着いた。城は想像していたものとは違ってさっき館長さんが言った研究所という名称に相応しい姿だった。



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