巳の刻 剥がれ落ちる鎧
地面が赤茶けており、視界が熱さで揺らめく
火山の奥地へと着く
冷感を保つスッキリとした飲み物を飲んだがジリジリと焼かれるような感覚は拭えない
辺りはマグマが川のように流れており視界的にも暑苦しい
シア姉が水魔法の加護をかけてくれたが属性の相性的に長く効果は持ちそうにない
ボロボロの岩の塊が青い光を漏らしながら鎮座している
「わかりやすいね」
「…ここだと爆発の魔法は最初だけの方がいいかもしれない、以前の報告に大型魔物の攻撃で簡単に地形が変わったってある」
「分かった…いい?」
「うん」
「「『万象遣わす伝令!』」」
詠唱を始めると同時にロックバードが動き始める
しかしその動きに合わせてシア姉が痺れ玉を投げる
痺れ玉は本来の用途としては大型の魔物だ
小型、中型の魔物には効果が薄い
同時に大型の魔物にも決めてにはならない
だから緊急で逃げるようのものだ
加えて魔物は耐性が付きやすい
今回の痺れ玉も効力は少しだけだろう
逃げる時には使えない
ほんの少しの痺れの隙に私たちは詠唱を紡ぎ終える
爆発が響き同時にケイン達が攻めにいく
砕けた岩の鎧には刃が通るらしく防戦一方だ
ロックバードによる反撃も軽くいなしながら押し続けるとロックバードがマグマに落ちた
多くの魔物はマグマに落ちれば討伐終了と判断されてもおかしくない
火山にいる魔物でもマグマに耐性のあるのはほんのひと握りなのだ
しかし皆息を飲む
マグマに落ちたと同時に鎧代わりだろう岩が浮かび上がり燃え溶けて、赤い光が立ち上ったのだ
異常だ
ケインとユウキが浮かび上がってこないロックバードに注意を向けながらその距離を詰めていく
辺りを異様な静けさが包む
「…っ!離れろ!」
不意にケインが叫ぶ
同時にケインとユウキがその場から後ずさる
ロックバードが落ちたところからマグマが吹き上がり、姿を表す
岩を纏っていた姿からは想像できない細身の姿で
炎ではなく、マグマを帯のように纏っていた
「コグルゥァア…」
「…不死鳥か?」
ユウキが呟く
…不死鳥の特徴とはあまり一致しない
そもそもマグマを纏う性質自体私の知っている限り初めてだ
それにサイズは中型のままで特大型に分類される不死鳥とは別だろう
「…あの機械だ」
胸部の機械が赤い光を強く発している
さらに機械を中心に魔力の帯が見える
まるでマグマを支えているような漂い方だ
…今は類似する魔物、出来損ない不死鳥のファイヤーバードと仮称する
危険度はこちらが断然上だが
ファイヤーバードはマグマを散らしながらサマーソルトを繰り出す
浮いた体が着地してもマグマが飛び散るため危険極まりない
ケインとユウキに降りかかった分はその度に半透明の青い球体が弾く
シア姉の魔法の加護だが失われるのも時間の問題だろう
何よりもロックバード時と比べてあまりにも身軽すぎる
「『アクセプト!』」
マウネによる火球も軽々と避けていく
「『万象遣わす伝令、水帝よ我に力を、アクセプト!』」
なるべく当たるように死角から水の魔法を撃ち込む
当たった場所は羽でその部分のマグマが黒くなる
すぐに周りのマグマに呑まれて戻る上に、水球は届くまでに蒸発して小さくなる
効率的に攻めれているとは言えない
ユウキが襲われ咄嗟に剣でガードする
弾かれて後ずさり距離をとることが出来たが
剣は一瞬で赤くなり剣として使うには危ういだろう状態になる
ユウキの水の加護が弾けたのが見えた
ファイヤーバードの視線が私たちよりも後方に向いた
「……!?」
私が後ろを振り向くと既にファイヤーバードは飛び立っていた
「シア姉!」
岩陰で姿は見えていないはずだが隠れるならあそこ、という場所に向けて
ファイヤーバードはマグマを槍先のように纏わせながらその岩陰に向けて突っ込んだ
私は駆けていた
シア姉の元に
マグマの槍先が岩を貫き地面を抉る
シア姉の球状の加護が弾けるのが見えた
シア姉が弾かれ、宙に浮く
そのまま地面へと力なく落ちた
「はっ…はっ…」
駆けていた足が止まっていた
視界が赤く染まっていく
「はっ……はっ……」
ドクンと胸が高鳴る
全身の血が荒ぶるようだ
「はっ………はっ………」
アイツは、やらなきゃならない
「『万象遣わす伝令…炎帝よ、私に力を貸せ…アンガー』」
抜いた短剣が赤く染る
全身が燃えるように熱くなる
全身に力が漲る
視界がますます赤く染まっていく中
一瞬にして視界が流れ、接敵して短剣を振るう
振るった剣はマグマを裂きながらその奥の体にも傷をつけた
鳥の周りを素早く動き回り手当たり次第に切り裂いていく
宙に飛び急制動、空気を蹴るように動き回る
地面に足をつけた時に鳥が鳴いた
纏うマグマが燃え盛る
私はその様子に口の端を上げた
紡ぐ言葉は一応法則性を組んでます
ククルに火がつきました