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十二の獣と刻限と  作者: ファイル
金局の章
17/50

辰の刻 対決岩鎧鳥


「クワァアアッッ!」


ロックバードはズシリズシリと重い足音を立てながら私たちに突進してきた


ひび割れた岩が剥がれ落ちる様子はなく、当たれば粉砕といった勢いだ


左右にバラけて各々距離をとる


遠い上に隠れているシア姉達はターゲットにもされて無さそうだ


突撃が弱った直後にユウキとケインが攻撃を仕掛ける


しかし体の岩に弾かれ手応えは無さそうだ



近づいたユウキにロックバードは羽をまるで腕のように使い殴る


ユウキは剣で受けれたようだが体を大きく弾かれている


さらに流れるようにケインを啄もうと迫っている



どこもかしこも岩で包まれておりろくな反撃が成功しない


「『万象遣わす伝令…炎帝よ、かの敵を討つ力をさずけたまえ…アクセプト!』」


私の詠唱魔法は火の玉となってロックバードに襲いかかる


動きながらの詠唱は危うく噛むところだったし、狙いも定めづらい



「『万象遣わす伝令!炎帝よ!敵を穿つ火矢となれ!アクセプト!』」



マウネの詠唱魔法は炎の矢となってロックバードに襲いかかる


私のよりも速く、そして鋭い


…魔法のセンスあるなぁ



岩のヒビが大きくなるにつれてロックバードの攻撃も激しさを増していく


唐突にユウキが私の方に吹き飛ばされてきた


「うおっ!?」

「ひっ!?」


何とかバックステップでユウキを躱すが足がもつれてその場に転ぶ



「クワァア!」


地面に転がるユウキと尻もちを着いた私たちに向けてロックバードが猛進してきた


「すぐに立て!」


ずさぁっとケインが横からロックバードの直線上にはいり剣を構える


ダンっ


私が立ち上がろうと四つん這いになったところでロックバードの姿が消えた


「…ほ?」

「んなっ!?」


「ククル!すぐにそこから退けろ!潰されるぞ!」


灰色の空で決して明るいとはいえない空から影が指す


…潰される!?


急いで立ち去ろうとして移動しはじめて足がもつれる


ズドンッ!



前転で転がりながらも後ろからの衝撃でさらに吹き飛ぶ


「おわっ」


背中に衝撃を受けながら浮いた体を持ち直す


「『…アクセプト!』」


地面に亀裂が入りながらもマウネによる魔法が後ろで炸裂していくのが分かる


よろめきながらも前進し、反転してロックバードを確認する



ロックバードを中心にクレーターができており中央ではロックバードが鎮座している


巻き込まれていたらぺちゃんこだ



「…ユウキっ!?」

クレーターの斜めに抉れた所を背に、周りに血が飛び散っている姿が見える


ロックバードも確認したのか狙いを定めるようにユウキを見る



ドクンと血が騒ぐような胸の高鳴りがした



「痺れ玉!」


後方から声と共にボフンとロックバードの頭上で軽い爆発が起こる

同時に薄黄色な煙が立ち込める


後ろを振り返るとシア姉が間近まで来ていた


「ククル!詠唱準備!」

「でも!」

「早く!」


そういうと私を追い抜かしてシア姉はケインの元に、煙の中に走っていく



驚きながらも私は言葉を紡ぎ始める


「『万象遣わす伝令…』」


薄黄色な煙が晴れ始めると共にシア姉がユウキを背負ってクレーターを登ってきた


同時にケインが「撃て!」と叫ぶ


「『…アクセプト!』」

「『エクスプロージョン!』」


一瞬こちらを睨んでいたロックバードと目が合った気がした


ロックバードには痺れが効いたようでその場から動いてない



クレーターに二度の衝撃が起こる


衝撃が止む前にすぐにケインの声が届く


「詠唱準備!」


「…っ!『万象遣わす伝令!』」



立て続けに爆発の詠唱魔法を三度撃ち込む


打ち込みながらも気がつく

痺れる薬は私の事前準備した物だ、その煙の中でシア姉が動けたのはシア姉による魔法の加護のおかげと



「動いている気配がする!油断するな!」


黒煙でクレーターの様子は伺えない


ゴリゴリと石が削れる音がする


…どこから来る?


「『アクセプト!』」


後ろから風が吹き抜ける


シア姉の声だ


風で黒煙が晴れるがうっすらとした煙の中にロックバードが確認できない


「…上だ!」


ばっと見上げると

ゴリゴリと音を立てながらもロックバードが羽ばたいていた


胸部の青い光が強くなっているのがよく分かる



ロックバードはそのまま火山の奥地へと向かっていった



クレーターの底ではひび割れた地面が赤くなっている


「…溶岩の流れに当たってるかも!吹き出す可能性もある!」


「すぐに立ち去るぞ!」


「乗って!」


ケインが立ち去る判断をするとすぐさま後ろからシア姉の声が響く


荷車にユウキとイヴを乗せて既に立ち去る準備がされていた





火山の奥に向かう方面に向かい過ぎない、ひとまずの安全を確保できた場所で立ち止まる


ユウキは衝撃で背中をうち怪我をしたようで直接のダメージではないようだ


イヴの回復魔法で既に回復し終えている



「ククル、落ち着いて」


「…落ち着いてる」


シア姉が心配そうに私を見る


詠唱魔法で魔力削減はされているとはいえ普通に撃てば馬鹿にならない魔力消費を伴う魔法を連続で打ったのだ


魔力の回復薬を飲みながら息を整えている


…どうしてシア姉は私の心のざわめきに気がつくのだろう


姉だからかな?



確かに報告にない攻撃方法で焦り、血が騒いだが一瞬のことだ


…痺れ玉の援護がなければ果敢に攻めていたかもしれないが



「…最後の姿でヤツの岩の鎧はボロボロだった

刃が通り始めるかもしれない、同時にヤツも身軽になり体を浮かせれるようになったと思う、報告書に記載された以外の攻撃方法がされるかもしれない、同時に素早くもなるだろう、見極めるタイミングだ、無茶も無理もするな」


ケインがみんなを見ながら話す


…準備が足りなかっただろうか


「加護をかけ直すよ、そしたら奥に向かう」


シア姉が詠唱を開始する


みんなの顔が引き締まった

奥に逃げられました、体制を整えて直ぐに追います


詠唱は言葉の短さよりも時間がかかってます、紡げば放てる、というものでは無いです

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