戌の刻 龍の構え
11 龍の構え
消える飛竜は早々に耳が遠くなるような状態を作ってきた
自分の声しか聞こえず、その声も違和感がある
その目で目視しないといけないくせに飛竜は時折消え去り別の場所から襲いかかってくるのだ
キャラバンの荷車は少しだけ離れているため被害は受けづらいだろうが腰ほどまでに枯れ草があり、剣士さんとイヴさんと背中を預けあっての対応は絶望的な状況だ
意外だったのはイヴの杖での対応が様になっていたことだ
流石に全身を使ってくるタックルは避けざるをえないが
飛びながら足で襲ってくる分には掴まれないように対応できている
しかしジリ貧だ
突如襲いかかってくる飛竜に対して私たちは身構えっぱなしだ
その分疲弊が加速する
私はこの体であっても耐久力は優れている、遊撃さんまで持ちこたえることができるだろう、しかし剣士さんもイヴも持ちそうにない
その時飛竜は荷車の方に襲いにかかった
荷車の方からはよろよろとマウネが出てくる、飛竜は一瞬躊躇うように警戒したが再び襲うのを再開した
マウネはやはり詠唱できないようで杖を構えるだけ
剣士さんが後ろから斬りかかるが殻のような鱗で弾かれてしまった
逃げる気がない飛竜に加えて攻めることが出来ない
私は切り札を切る事に決めた
探索者は調査が主だ、一人でフィールドワークをすることも想定していた
むしろ、この切り札は一人でいる時に使う予定だった
…人には確実に恐れられるからだ
キャラバンとの縁はここまでかもしれない
かと言って躊躇っていては手遅れになるかもしれない
私は独特の構えを取る
龍の構え
ミシミシと体が軋む
魔力が溢れて冷気が霧のように漏れる
人の体が突き破られる感覚に陥る
同時に古い皮を脱ぎ捨てる感覚を覚える
しかし途中で背中がズキリと痛み、それらの感覚に詰まる
トゲだ、先程の飛竜の攻撃に尻尾からの攻撃でトゲをもらっている
中途半端に龍化しそうだがそれでも魔力の高まりは充分だ
イヴが私を見て驚いている
剣士さんが地面に転がされながらこちらを見て固まっている
マウネが私を視界に入れて口を抑えた
…少しだけ後悔が生まれた
飛竜が振り向いて私から距離を取ろうとする
私が咆える
光が視界を包み込む、感覚でわかるのは光の中で氷が放射状に襲っていく事だ
地面から氷のトゲが生まれながら周囲を凍らせていく
バキバキと凍らせる範囲はどんどんと広がり逃げようと飛び始めた飛竜も捉える
キャラバンの荷車まで飲み込んで凍らせて私は前のめりに倒れる
急に全身に力が入らない、何かしらの毒だろう
飛竜のトゲには毒があったとみる
毒が全身に回るのを抑えるために人の姿をとろうとして、気を失った
◇
遊撃さん呼びされているユウキと団長は雷の街から応援を呼んできた
団長はキャラバンの依頼もあり街の門の前に置いてきた
その代わり冒険者では名が馳せている人を連れてくることが出来た
「ノルディスシュミーさん、助かります」
「いえいえ、これも何かの縁です」
金髪の長く、サラサラとした髪をなびかせて、白いシスターローブを着ている
聖女の妹と呼ばれ早馬に跨るノルディスシュミーさんはその服装からは想像できない身軽さで手筈を整えてくれた
後ろに数人の仲間も着いているのでこれなら飛竜もなんとかなるだろう
雷の街の門の前でどうやら門が閉まっている間に到着したと思われる一向に警戒されながらも話を聞いて貰えたのは本当に運がいい
彼女らの有名どころな話だとノルディスシュミーさんは大型の魔物を少人数で何度も討伐しているという
空が白み始め目標とした場所に近づいてきた
ノルディスシュミーさんは息があれば回復魔法で必ず回復させれるという
ケインが残っているから引き際は間違えないはずだ
近づくにつれて冷気が漂う
少し小高い丘を登ると接敵場所がみえる
そこにキャラバンの荷車はあり
仲間の姿も確認できた
同時に飛竜も存在しているのが確認できた
全て氷の塊の中に
「…は?」
「あら」
慌てて近づき氷の中を覗き込む
恐ろしい程の透明度の氷で中のケイン達はまるで石像のように動かない
無事ではないと思うが、シアは氷の中で倒れている
背中に短剣ほどの大きさはあるトゲが刺さっている
「こちらを持って」
ノルディスシュミーさんが渡してきたのは採掘用のピッケルだ
一緒に着いてきた仲間方が炎の魔法を使ってこの氷を溶かそうとしてくれている
まずは救出だ
消化不良な締まり方ですがぼんやりとでも伝わると…いや、無理か…
龍人化とでも言うんですかね?そういうことにしますが、不完全な変体からの暴走
そのような流れです
ちょっと構成にヒビが入りました…
見直してきます…