であい
処女作です!
少しずつ更新していきます。
よろしくお願いします。
「ようやく終わった……」
誰もいない深夜のオフィス。
時計の針が、時を刻む音だけが響く。
「終電……は、まだあるか……」
ため息をついてデスクの上を片付ける。
今日は最悪な1日だった。
自販機で試しに選んだコーヒーはとてもまずくて
ふらっと立ち寄った給湯室からは後輩たちの噂話が聞こえ、
その中で私は「結婚せず仕事ばかりしてる残念な人」だと笑われていた。
極めつけは……上司に仕事を押しつけられ、残業。
時計が今日の終わりを告げそうになった今、ようやく仕事が落ち着いた。
「コーヒーはこりごりだし……紅茶でも飲んでから帰るか。」
どうせ家に帰ったところで誰もいない。
シャワーを浴びて眠ったら、また出勤。
代わり映えのない日常は無機質だけど、それでいて私にとっては唯一無二な日常なのだ。
それが彼女たちにとっては「残念」なのだろうか。
あまりピンとこない。
20代の頃はがむしゃらに仕事をして、28歳頃を境に責任のあるプロジェクトを任されるようになった。
仕事がどんどん面白くなり、脇目も振らず35歳になった今まで仕事一筋で生きてきた。
確かに、20代と30代のはざまで一度転機はあった。
「君は……1人で生きていける。きっと、僕は必要じゃない。」
頭の中にずっと忘れていた言葉がよぎる。
その瞬間、ひどい頭痛とめまいがした。
「本格的に疲れているな……さっさと帰ろうかな。」
給湯室へと向きかけていた足を再びオフィスの方へ戻し、
ふと目線をあげると、目の前にあった掛け時計が目に入った。
無機質で真っ白なオフィスのかべに、違和感のある金色の時計。
時刻は11:50をさしている。
「ん……?針が動いていない??」
なんとなく引き寄せられるように、私はこの違和感の正体がつかめないまま時計に手を伸ばした。
壁から外し、ひっくり返してみても、電池を入れるところはない。
電波時計?だとしたら壊れている?
「しっかし、こんな時計、前からあったかなあ……。全く見覚えがない。」
謎の解明を諦め、壁にかけようとしたとき、あることに気づいた。
「あれ……?12:00ちょうど……?」
いつの間にか時計が動いている。
これは一体……。
「この時計……動いて……うわっ。」
私の言葉を遮るかのように、突如白い光は周りの景色ごと私を飲み込んだのだった。