冒険者ギルドとその周辺
前回までのあらすじ
テベンマの街まで無事に護衛を務めたタナカは、商人バウマンから多額の謝礼を受け取った後、
Bランク冒険者グレッグたちの案内で冒険者ギルドへ向かったのだった。
そのまま街の中を少し歩いたところ盾と剣のマークが書かれた”いかにも”な建物が見えてきた。
あれが冒険者ギルドの建物らしい。普通の体育館程の大きさだった、周囲よりひときわ大きく異彩を放っている。
中へ入って周囲を見回すと酒臭く、飲んだくれて机に倒れかかって者、仲間同士で会話している者、何やら言い合いをしている者。
雑多に混ざり合い、喧騒を作り出していた。
並ぶこともなくカウンターに向かうと、受付嬢がこちらに気づき声をかけてきた。
栗色のロングヘヤーで若いかわいらしい顔立ち、胸が大きく、くびれもしっかりあるスタイルの良い女性だった。
一流企業の受付嬢を連想するが、こちらの方が断然上である。
「あら!グレッグさんお疲れ様です。今回は護衛の依頼でしたよね?達成手続きはこちらにお願いしますね。」
「護衛は達成証はこれだ。ただ、今回は森の浅いところにヘルハウンドがでた。他にも異常がないか調べた方がいいかもしれねぇ。
ここにいるタナカが助けてくれなかったら、俺たちは今頃死んでただろう。あと、こいつの登録も頼む。俺より強いからスキップしてくれ。」
「わかりました。後ほど詳細をお聞きしたいので、お時間を頂けたら助かります。そちらのタナカさんはご登録ですね?
初回の登録は無料です。グレッグさんよりお強いとのことですが、スキップ申請をなさいますか?」
「スキップ申請とは何ですかね?」
「失礼しました、スキップ申請はBランク以上の冒険者さんが推薦した場合に限ってDランクから開始できるシステムです!
試験はBランク以上の冒険者との模擬戦がありますが、グレッグさんよりお強いとのことですので試験免除でDランクとして登録させて頂くことになります。」
「あーなるほど。でしたらそのスキップ申請をお願いします。」
「かしこまりました!それでは、まずこちらに名前をご記入ください。文字が書けない場合は、代筆を承りますがどうなさいますか?」
「多分大丈夫です・・・これで大丈夫ですか?」
「はい、確認させて頂きました。大丈夫です。それではギルド証を作ってきますので、少々お待ちください!」
少し待っていると先ほどの受付嬢が戻ってきた。
「お待たせしました!こちらがギルド証です。カードを手で握っていただければ、認証が完了します。
もし無くしてしまった場合でも、銀貨5枚で再発行できますが、少し高いですからお気をつけくださいね。」
「ありがとうございます。」
受け取ってみるとただのカードのようだ。握ってみると白い電子回路状の線が走り、名前とDというランクを示す文字だけが表示された。
裏面は冒険者ギルドについて書かれているようだ。
「はい、これで登録が完了しました!詳しい説明はご希望ですか?」
「ああ、大丈夫です。グレッグさんから大体お聞きしましたので。」
「わかりました、ではこれで完了とさせていただきます!私はエリーゼと申します、タナカさんこれからよろしくお願いしますね!」
よろしくお願いしますと返答をすると、エリーゼさんは後ろで待っていたグレッグさんたちに声をかけ、奥の部屋へ入っていった。
さて、お金はバウマンさんからもらったものが沢山あるし、宿でゆっくり休もうと思う。
ギルドランクについては急いで上げる必要はないだろう。
今は生活資金分だけ適当に稼げればそれで良い。
ヘルハウンドの素材はお金に困っていないので後まわしにしておいた。それより休みたいのである。
一応、ギルドの規定では依頼分以外については商人に直接卸しても良いことになっているようなので、どこかで換金しようと思う。
宿屋へ向かう前にせめて依頼書だけは見ておこうと、掲示板に近づいてみた。
しかし、薬草採取や常時受け付け中になっている討伐依頼くらいしかない。
討伐対象は「ゴブリン」「オーク」「ハウンド」「ハニービー」「ラージマウス」「ホーンラビット」など、
どれも【エルダーファンタジー】でおなじみのモンスターだった。
冒険者ギルドでは前日に受け取った依頼を、翌朝に一括で張り出す方式をとっているとのことだったので、
現在は依頼が少ないのは今は夕方だからだろう。
さて。冒険者ギルドの外に出たものの、宿の場所がわからない。
ギルドで宿の場所を聞いておけばよかった・・・。
「そういえば、テンプレにも会いませんでしたねぇ。体験してみたいことの一つだったのですが・・・。」
おっと、人前で独り言はマズイか。やめておこう。
それに既に冒険者ギルドを出てしまった手前、もう一度戻りたくない。
そんな理由で徒歩で宿を探すことにした。