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鵙日和
『にぎりめし笑い声高く鵙日和』
「お弁当持って、お出かけしてくれるって言ったのにー」
「そうだそうだ!」
幼い双子の声が山間にある小さな田んぼに響いてる。
「んだから、ちゃんとおにぎりこさえて、お出かけしてっぺな!」
父ちゃんは田んぼの畦にひいたシートの上にどっかりと腰を下ろした。
母ちゃんが、朝から張り切ってこしらえたごちそうが、シートの上に並べられた。
「お出かけじゃないよう」
「ただの稲刈りじゃんか!」
あはははは。
周囲から、笑い声が上がった。
都会に暮らす父ちゃんの弟夫婦も、今日の稲刈りを手伝いに来ているのだ。
「都会の人はな、わざわざ金払って稲刈り体験したりするんだぞー」
「俺達、都会の人じゃないもん」
子どもたちが膨れると、またもやどっと笑い声。
「わかったわかった、次の休みにゃ、遊園地でも水族館でもつれてってやから……」
金銀財宝、大判小判。
そんな物は持ってないけれど、目の前には束になった稲がハサに干されている。
澄んだ空に高く鵙がなく。
うまい握り飯があり、家族がいる。
そんな、秋の一日だ。