2/6
秋扇
『夕闇に耳そばだてる秋扇』
夏の終わり。秋の始まり。
太陽の光には、まだ夏の暑さの名残があるのに……。
一日の終り。夜の始まり。
山の端に日が隠れれば、野を渡る風は途端に涼やかさを増していく。
季節と季節の境目で、窓辺に取り残された扇子が一本。
騒々しい夏が過ぎ、今はその静けさが、心地よい。
目を閉じて、耳を傾けてごらん。
ほら、聞こえてきたのは野原の音楽会。
虫たちの奏でる楽の調べ。
◇
日が落ちて、私はビール片手に縁側へ。
室内はまだじっとりと暑かったので、扇を一本手にして、腰を下ろす。
クイッとグラスを傾けると、喉を通り過ぎていく苦味が心地よい。
扇子を開こうとしたけれど、庭からそよぐ風が涼しくて……。
パチン。パチン。
扇を閉じたり開いたり。
ああ、夏が過ぎていく。