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希望のフリントロック  作者: 猫丸 玉助
第3章 希望への革命
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第35話 祖父の言葉

レンガは、己の無力さを痛感していた。

身体を張って闘うことも出来ず。あまつさえ、自分が提案した作戦で死者を増やしてしまった。そんな自分の不甲斐無さと自責の念に押し潰されそうになる・・・。



くそ・・・。もう、終わりなのか・・・。

そう、思った時。

自分の左手が何かに触れた。


「旦那、まだ、諦めたらダメでさッ! あいは旦那の事を信じてるでさッ! あい達にはあい達にしか出来ない事。旦那には旦那にしか出来ない事がある筈でさッ!! だから・・・最後まで一緒に闘うでさッッ!!」


ドミヤが力強く握ってくれたその手から、強い意思の力を感じた。

そうだ・・・。諦めて、イジケテどうなるッッ!! 

そう自分に渇を入れて、ドミヤに向き直った。


ドミヤの身体は傷だらけだった。

大きな傷こそ無いものの、細かな切り傷が至る所にでき、肩で息をしているその姿は、慢心創痍にしか見えなかった。

こんなに小さい少女がボロボロになっても・・・まだ、頑張っているというのに。俺が、先に心を折られてどうすんだッ!!

もう、手は無いのかもしれない・・・。でも、まだ、終わった訳じゃ・・・負けた訳じゃないッ!

本当に負ける時は、俺の心が負けを認めてしまった、その時。

今・・・俺は、俺に出来る事をするッッ!!


そして、俺は少女の小さな手を、彼女がしてくれた様に、力強く握り返した。


「任せろッッ!! すぐに、何か姑息な手でも、閃いてやるッッ!! だから、ヤツの事を頼むッ! ドミヤッ!!」

俺は・・・せめて、彼女が希望を失わずに闘えるように豪快に笑い飛ばして見せた。

それを見たドミヤは、プッっと吹き出した。


「旦那・・・自分で姑息な手って・・・。でも、ありがとうでさ。これで、あいも安心して暴れる事ができるでさよッ! じゃあ旦那、期待してるでさッッ!!」

そう言うとドミヤは、手斧を持ち直し、マンティコアが暴れる戦場へと舞い戻って行く。そして、レンガはその小さな背中に、小さく一言だけ呟いた。


「いつも、ありがとな・・・。」




レンガは気持ちを切り替え、一切の余計な考えを捨てる。今考える事は、最初に戻り、あの邪魔な尻尾を無力化する。その方法だけに、頭を巡らせる。


よく見ると、振り回し続けている尻尾には隙自体は生まれている。それは、時折、刺さったりする。そんな時だ。

だが・・・そこに切り込む程の隙は無い。現に、シーデやエギルさんの攻撃が刀身に直撃しているが、余程丈夫なのか、ビクともしていない。


では、古式銃とグレースの弓矢ならば、どうだ・・・。

いや・・・。とても無理だ。常に不規則に動き回る上に、地面に突き刺すことに規則性など一切無いのだ。当てる事は困難を極める。

それに、もし当たったしても、刀身を破壊する事は出来ないだろう。

ならば、どうする・・・。


そんな事に考えていると、マンティコアの尻尾が瓦礫を粉砕し、激しく叩き付けられた。その瓦礫の破片達は少し離れた場所に居た、レンガの身体を激しく打ち付ける。


「ぐッッ!」

身体に飛散してきた砂利を受けて、レンガは顔を歪めた。


「大丈夫ですかッ!? レンガ様ッッ!!」

それに気が付いたグレースが、レンガの元へ駆け寄る。だが、レンガはその事に気が付かず、無言でその場に立ち尽くしていた。

今・・・一つの考えが彼の脳裏には浮かんでいた。

それは昔、祖父と共に、家の裏にある山に来ていた時の事だった・・・。




今日は、折角の日曜だと言うのに・・・祖父に山へ連れ出され、半ば強引に古式銃の手ほどきを受けていた。

祖父の言い分は、自分を守る力があるというのは、いつかきっと何かの役に立つとのことだった。しかし、レンガは今一、乗り気ではなかった。

どうせならば、こんな化石みたいな銃じゃなくて、現代の銃を教えてくれよと、考えていたからだ。


「お前は何もわかってないな・・・。確かに、これは古臭い銃かもしれん。だが、この銃にしか出来ないことも沢山あるんじゃッ!!」

祖父は孫の態度に少し、ムキになりながら、いつもの熱弁を始める。レンガはまたか、と思い溜め息を漏らした。


「まず、この銃の良い所は弾が簡単にーー」

「精製出来てるところだろ? もうそれは、耳にタコが出来る程聞いたよ・・・。」

「そうだったか?」


最近、祖父は少しボケが始まっているんじゃ無いかと思う時がある・・・。同じことを何度も言う。そんな事がよくある気がしてなら無い。


「それから、まだあるぞ。もし、弾が尽きても、この銃身から何でも発射する事が出来るんじゃ。どうだ、スゴいじゃろッ!!」

「本当かよ・・・。でも、それが何かの役に立つのかよ・・・。」

「立つに決まっておるじゃろッ! それに、過去の例では、野菜を詰めて撃ち出した、なんて話もあるんじゃぞ」


野菜を発射して、どうすんだ・・・。野菜アレルギー持ちとでも闘うってのかよ。


「じゃあ、ニンジンが嫌いな俺は、精々、ニンジンの弾丸には気を付けないとな・・・。」

レンガはそんな憎まれ口を叩きながら、まだ熱く語り続ける。祖父に付き合い続けた・・・。






そうだ・・・。あの時、祖父はそう言っていた。何でも撃ち出す事が出来るって・・・。それに、確か、祖父の残したマニュアルで見た構造から考えても、弾の形は何でもいい。そんな感じだった。

それならば・・・。

そう思って、レンガは辺りを見回した。目当ての物を探し、広場中を見渡す。

これだッッ!!

そして、目当てのモノ見つけた。それからようやく、心配な表情で自分に語りかけるグレースの存在に気が付く。


「大丈夫なんですか? レンガ様ッ!」

「ああ、ごめん・・・。大丈夫だ。それより、グレース・・・。今から言う事をよく聞いてほしい。もしかしたら、あの尻尾・・・。どうにか出来るかもしれないッ!」


そう言うと、グレースは驚きに目を見開く。そして、レンガの言葉に耳を傾けた。


それから、レンガは目当てのモノ場所に滑り込んだ。そこは、瓦礫の残骸跡。目の前には、細かく砕かれた岩の山だった。

直ぐ様、それを空になった古式銃に詰めていく。そして、撃鉄を起こすと、激しく動き回る、マンティコアの尻尾の先端に見る。その刀身をしっかりと縫い付けている縄を!


準備を終えると、レンガは再度、応戦を続けている皆に叫んだ。


「みんなッ!! もう一度だけ、聞いてくれッ!! これから俺が・・・尻尾を無力化するッ! 前衛の皆は一度、攻撃を中断して、その場から離れてくれッッ!!」

その場の誰しもが、再び声を上げたレンガのその提案に、驚いた。しかし・・・それは無理も無かった。今度は、レンガが自分一人で行うと言うのだから・・・。


「旦那ッ!! 何を言ってるんでさッ!! 正気でさかッッ!?」

「そうっすよッ! 自棄になったらダメっすよ、レンガさんッ!!」


そして、その言葉に驚いたのは、ドミヤとシーデも同じだった。自分の仲間が突然、言い出した事に耳を疑った様に吠えた。


「ドミヤ、シーデ・・・。俺を、信じてくれ・・・。」

その懇願するような様子に、二人は小さく唸りを上げた。


「わかったでさ・・・。でも、旦那・・・。無茶だけは、するなでさ。それは、あいは許さないでさよ・・・。」

「ありがとう。一応・・・肝に命じておくよ。」


そう言うと、二人は攻撃を止め、戦線から離脱した。そして、今度はエギルさんを見る。


「レンガ君・・・本当に、大丈夫なのか?」

「はい・・・。今度は、いける筈ですッ!!」


エギルは自信に満ちたその目を見ると。再び仲間達を促す様に言い放つ。


「全員ッ!! 一度、引けッッ!!」

エギルの掛け声と共に、解放軍兵達も次々と戦線から離れ始める。それを見たレンガは、グレースに呼び掛けた。


「グレースッッ!! 頼むッ!!!」


「はいッ!! レンガ様、どうかお気を付けて・・・。」

彼女は、そう呟くと、マンティコアに一歩近づき、その顔に向かって両手を突き出した。すると、身体の発光と同時に開かれた掌から、激しく土を放射する。

その土のつぶては、マンティコアの顔面に直撃して、一時的、その視界を遮った。


アアアァァァァァァ!!!

突然、視界を奪われたマンティコアは大きく叫び、パニックを起こす。激しく暴れながら、尻尾をめちゃくちゃに振り回し続ける。

レンガは、その尻尾の範囲ギリギリに立ち、その時が訪れるのは只、待った。


尚も激しく振り回す尻尾が、何度も空を切る。

まだなのか・・・。

そう思った時。


ガスッッ!!


振り回していた尻尾が、勢いよく地面に突き立った。レンガは、この時を待っていたのだ!

すかさず、尻尾の先端。その刀剣が括り付けられている部位、目掛けて引き金を引いた。


シュッダン!!!

爆発音と共に、その銃身からは、無数の石のつぶてが、まるで散弾の様に撃ち出された。


バキッ!!!!

その石の弾丸は、激しい音を立て、刀剣の根元部分に直撃する。そして、そのつぶてによって、尻尾に固く巻かれた縄が次々に引き裂かれ、千切れていく。


やがて、地面から引き抜かれたその反動で、刀剣は尻尾から完全に外れ、大きく宙を舞い、再び地面に突き刺さった!

それを見た、皆から大きく歓声が上がった。


「さっすがッッ!! 旦那でさぁッ!!」

「素敵っすッッ!! レンガさんッ!!」


ドミヤとシーデも腕を上げて歓喜の声を上げていた。


「自分に出来るのは、ここまでですッ!! 後を・・・宜しくお願いしますッ!!」

そう宣言すると、レンガと入れ替わる様に、指揮を取り戻した解放軍兵がマンティコアに突撃して行く。

そして、ドミヤとレンガがすれ違う時。二人はその手を掲げ合い、叩いた。


これで、少しは時間が稼げる筈だ・・・。もしかしたら、このまま押しきれるかもしれない。


現に、尻尾の殺傷能力が激減した事で、かなり踏み込みやすくなった様子だ。皆が繰り出す攻撃がマンティコアの身体に次々と傷を付けていた。


レンガは、先程撃った古式銃に弾丸を装填しながら、考えていた・・・。今は無き祖父の事を・・・。


じいちゃん、ありがとう・・・。じいちゃんの言った通り、古式銃は只の、古臭い銃なんかじゃなかったよッ!!




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