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希望のフリントロック  作者: 猫丸 玉助
第3章 希望への革命
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第32話 示された決意

エギルはレンガの返答に一瞬、驚いた様子を見せたが、すぐに喜びの表情を浮かべた。


「そうかッ! 手伝ってくれるかッ! これはありがたいッ!」

そう言うと、何度も頷いて見せる。そして、そのまま、グレース達の方をグルっ見回した。


「・・・彼女達も、手伝ってくれるのかな?」

「・・・いやーー」


レンガはそう言い掛けたが、グレースがその言葉を遮った。


「はいッ! あまりお役には立てないかもしれませんが・・・よろしくお願いしますッ!」

彼女の力強い言葉は、こちらに反論する余地を与えない。そんな感じにも思えた・・・。


「いや・・・。今回は、グレースには闘う意味もないから。安全な所に居て大丈夫だよ・・・。」

そう、今回の事は自分の勝手な行動から始まっている事なのだ。出来れば、巻き込みたくはない。

そう考えたが・・・。


「ダメですッ! レンガ様は放って置くと危ないことしかしないですから・・・。それに、私と同じエルフのことでもあるんです。だから、私も闘います。」

はっきりとそう告げるその言葉には、引く意思など微塵も感じられない。


「旦那は、頭がちょっと切れるだけで闘いはてんでヨワヨワなんでさから、黙ってるでさよッ! あいもよろしくでさッ!」

続いて、ドミヤも毒を巻き散らしつつ、参加を表明する。


「おいおい・・・。お前ら、ちょっと待てって・・・。」

自分の言葉など、聞かずにドンドン話を進める彼女達に詰め寄る。しかし・・・。


「あい達だって、自分の事は自分で決・め・る・で・さ。・・・文句はないでさね。」

「・・・はい・・・。わかりました・・・。」


俺は、それ以上、何も言えなかった・・・。


「じゃあ、あたしも行くっすッ! 待ってるのって、苦手っすから。これで、レンガさんは安心して、隠れていてもダイジョブっすよー。」

そして、シーデも続いた。


・・・コイツら、言いたい放題に言いやがって・・・。

実際、戦闘能力では彼女たちの足元にも及ばないのはよくわかっている。しかし、こうも何度も言われると少し悔しい・・・。


こうして、結局、全員が参加する事になってしまった・・・。


「彼女達の戦闘力は一度、見てるから参加してくれて嬉しく思うよ。それにしても、レンガ君は慕われてるんだな。」

エギルさんは腰に手を当てて、上機嫌に笑う。

しかし、その言葉から少し思う所があった。これは、もしかしたら・・・自分なんかは、おまけ程度におもわれているんじゃないか・・・。


「な、なんか・・・悪いな。ありがと・・・。」

少し複雑な気分ではあったが、彼女達にお礼を告げる。


「大丈夫ですよ。レンガ様はいつも、私の為に闘ってくれたんですから・・・。たまには恩返しさせてください。」

グレースはこちらの心中も知らずに、笑顔で答えた。

まぁ、仕方ない。今回も、彼女達に行為に甘えさせて貰うか・・・。



暫く、そんな和やかな雰囲気で談笑が続いた。

やがて、エギルさんの言葉を口火に作戦の概要の説明が始まった。


「今回の作戦は、亜人にもっとも非道な扱いを繰り返している養殖場のエルフを解放する。その事が目的だ。このような大規模な行動は、我々としても初めての試みなのだが・・・。今回の養殖場は、比較的小規模なモノだ。 そこまで難しい作戦では無いので、その点は安心して欲しい。」


「初めてという事は・・・。今まに、こういった作戦はなかったのですか?」


今一、自分はまだ、彼等の活動を把握しきれていない。そこで、この機会に質問を重ねる事にした。


「そうなんだ。今までは、辺境の村に赴いたりするくらいだったからね。王国に対して何かしらの行動を起こす事自体、今回が初めてなんだ。だから、我々としても、今回の作戦に向けては、かなり慎重に進めていたんだ。」


自分達も含め、王国を相手にするのは初めていうことか・・・。

いや、思い返して見れば、クリスト達と一度やり合っているから、初めてではないのか・・・。


「それで、その概要なのだが、明日の夕刻に数台の馬車で王国を出て、外に身を潜めている一団と合流して現地に向かうことになる。なお、今回の作戦には彼女たち以外の亜人は一切参加していない。王国での初の作戦ということで、ある程度、戦闘になれたヒトだけで編成してある。人数は君たちを含めて、22人。戦闘の際の役割を振り分けたいから、各々の武器を教えてもらえるか?」


エギルの呼びかけに応じて、皆それぞれの武器と戦闘方法を告げていく。

そこで、俺は少し迷いながらも、彼に古式銃を見せた。


「ほう・・・。これは、珍しい術具だね・・・。初めて見る形状だな・・・。」

彼はそう言うと、自分の手にしている古式銃を興味深々で眺める。

さぁ・・・どう、誤魔化すか・・・。

まさか、彼に本当の事を話すわけにもいかない。一歩間違えれば、頭のおかしい奴だと思われかねない。そんな事で、折角、まとまった話をこんがらせるのだけは、避けなくては・・・。


「こ、これはーー」

そう言い掛けた時。


「これは、あいが旦那に合わせて造った特注の術具なんでさよッ! その試作品の第一号なんでさッ! あいは、こう見えても、元王国工房の一流技師なんでさッ!」

割って入ったドミヤが、上手いフォローを入れてくれる。これは、何ともありがたい。


「そ、そうなんです。だから、詳しい構造とかは、企業秘密という事でお願いします。」

そして、そのまま、彼女に上手く口裏を合わせて、この場を切り抜けようと試し見る。


「そうなのか・・・。では、是非いつか、詳しい話を聞かせて貰いたいものだな・・・。」

エギルさんはそう言うと、もう一度、古式銃を視線を落としてから、こちらに向き直った。

よかった・・・。何とか上手く切り抜けられたみたいだ・・・。



「では、ドミヤさんとシーデさんは前衛。レンガ君とグレースさんは後衛。一応、全員、私の部隊に編成しおく。それで問題は無いかな?」

彼の言葉に全員、無言で頷く。


「それから王国の外、他の仲間と合流した後は、少し離れた位置から養殖場を4台の馬車にて、村を囲むように包囲して日が落ちるまで待機。そして、日が落ちきったタイミングで、我々の部隊を口火に養殖場に踏み込む。これが大まかな流れだ。」


そして、エギルさんは、そのまま突入後の概要を説明した。

その大体の流れはこうだ。


自分達を含めたエギルさんの小隊が村へ強襲。外に出ている警備兵を、速やかに排除。その後、救助を目的とした残りの馬車が村へ突入し、エルフを達を乗せ、村を離れる。そんなところだ。

自分達が前衛を勤める理由は、救助の方をより円滑に進める為との事。この作戦の一番の肝は、救助の円滑さにかかっている。そこで、より慣れた者達に、そちらを任せるといった方針のようだ。

救助を行っている際、自分達は、後から現れる衛兵達を、排除する事に徹しきるとの事だ。



「そこで一つ注意なのだが、前衛は無理な切り込みは極力避ける様にしてくれ。これは、安全性を考慮しての事もあるが・・・。出来れば、無用な殺傷は避けたい。今後の王国との、関係もあるからな・・・。しかし、同時に捕虜も取れない手前、しっかり再起不能にする事にも、心がけて欲しい。難しい提案だが、宜しくお願いする。」


それと、逃亡兵については見逃しても問題は無いとの事。王国までの距離はかなりある為、増援については、殆ど問題ないらしい。


そんな話をしていると、自分の中に、一つの思いが浮かび上がってくる。

これから、自分はまた・・・人をこの手にかけるという現実味だ・・・。

ふと、クリストを刺した感触が掌にが蘇る。


あの時は、怒りの激しい感情の中で、闘っていた。だが、今回は違う・・・。

何の感情も抱いていない相手達との闘いなのだ。

怒りや憎しみ、そういった感情もない。所謂、冷静な感情のまま殺り合う事になる。

そんな考えから、不安が頭をよぎりそうになる・・・。


しかし、当然、向こうは死に物狂いでかかって来る筈。迷っている暇なんか、ありはしない。

殺らなければ殺られるのは、自分なのだ。そう、考えると自分の気持ちは、一気に落ち着きを取り戻し始める。


いつも間にかこうやって、割り切れる様になってしまっている事が、少し恐ろしくも感じた。

それは、戦争などで人を殺めても、すぐに慣れるっていう事実を、身を持って知ってしまった。そんな気がした・・・。



「ちなみに、先日に保護したエルフには、養殖場のエルフ達を説得して貰うのに協力して貰う手筈になっている。これで、救出の方もかなり迅速に行えるだろう。以上が今回の作戦の概要だ。何か質問はあるかね?」


そうか・・・。前のエルフ達も協力してくれるのか。あれから、どうしているのか、少し気になっていたから、無事である事がわかって、安心した。

そして、短く息を吐いてから、エギルさんに尋ねる。


「はい。ちなみになんですが・・・おおよその衛兵の数。それとその時間を選んだ理由はなんですが・・・。」


自分がそう言うと、エギルさんは顎に手を置いて、小さく頷く。


「そうだな・・・。数は恐らく、10人前後と言ったところだ。時間を選んだ理由は、外の警備が、その時間ならば2~3人という事を事前に確認している。それが理由だね。」 


「その根拠は?」


「丁度、その時間が彼等の晩飯の時間らしくてな。だから、その時間は見張りは最低人数。他の全員は村の中央の屋敷にて、食事をしている。恐らく・・・我々の突入で中の連中もすぐに、異変には気が付く筈だ。しかし、その前に外の警備を鎮圧化出来ていれば、屋敷の入り口にて、残りの敵は一網打尽に出来る。そんなところだね。」


なるほど・・・。流石に彼が言った通り、作戦は年密に練られている。

確かに、その通りに事が運べば、こちらの被害は最小で乗りきる事が出来そうだ。


そして、エギルは質問はないかもう一度、尋ねてくる。だが、レンガ達は皆、それ以上何もないと意思を表明した。


「では、私はこれから、他の部隊の編成を考え直さなければならない。今日はこれで解散とさせてくれ。明日の正午過ぎに、またここで落ち合うとしよう。君達は、それまでゆっくりと身体を休めて置いてくれたまえ。」

その言葉を受けると、レンガ達は部屋を後にしようと、立ち上がった。

そして、部屋を後にする時、最後にエギルは言った。


「今回の作戦への、参加。心より感謝する。明日の作戦、しっかりと成功させよう・・・。」

レンガ達を見送る背中にそう、声を掛けた。





エギルさんの元を後にしたレンガ達は、夕焼けに染まりつつある街を歩いていた。

すると、シーデが大きく伸びをしながら、口を開いた。


「なんか、大変なことになっちゃったっすね~。」

どこか遠くを見る様な素振りで、ポツリとそう漏らした。

その表情には、どこかいつもとは少し違った様子が感じられた。

今まで自由気ままに暮らしていたシーデには、今回のような闘いは、どこか現実味が無いのかもしれない。


でも、それは自分も同じであった。いきなり、こんな事に参加するなんて予想もしていなかった・・・。


ふと、街に紅みを注いでいる、夕日に目を向ける。その夕日は自分のいた世界のモノと、何も変わらない気がする・・・。


ほんの数ヶ月前までは、日本で平和な毎日を送っていた。でも・・・それはもう、遠い昔の事のようにも思えた。

この世界に来てから・・・色々あった。

火竜と闘い。騎士団と殺し合い。大蛇に襲われることもあった。そんな常識では考える事の出来ない体験を何度もした。

今までは、只、そんな現実に振り回されて、生きる事だけで精一杯だった。

でも、今は違う・・・。初めて自分で行動を起こそうと、一歩を踏み出したのだ。

それは、期待と希望に沸き上がる反面、失敗する事への恐怖とまだ見えぬ明日への不安も掻き立てていた。


自分がこの世界に来てしまったのは何故なのか・・・。自分には一体、何が出来るのか・・・。

それは、わからない。

でも、一つだけわかる事もあった。


自分は今、この世界に来た事で、変われている。前に進めている気がする。

前の生活の、ただ塞ぎこんで全てが終息していた自分の殻を破り、歩く事が出来ている。そんな気がしている。

それは、単なる思い込みなのかもしれない・・・。でも、今は、それでもいいと思える。


自分の前を歩いている三人の少女達を見る。楽しそうに笑いながら談笑している少女達。彼女達もまた、人種も生い立ちも異なる人間だ・・・。そんな彼女達が見せる暖かな光景。そんな素晴らしい光景。

いつの日か、この世界の皆が、こういった姿を見せてくれるといいと、思う。


それは、そんなに簡単な話では無い。でも・・・彼女達が自分に見せてくれた、教えてくれたこの事が、一人でも多くの人間にわかって貰える日。そんな時がくる事を、俺は心から願った・・・。



すると、一人後ろで神妙な面持ちで歩くレンガにドミヤは気が付く。


「旦那ッ! また、湿気た顔してるでさよッ! 今日は王国、最後の夜でさッ! こんな日はみんなでパーッと豪遊するでさよッッ!!」

そう言うと、レンガの背中をバンッと叩いた。


「いてッッ! お前は・・・いい加減に少しは力の加減を考えろよな・・・。」

ドミヤの想像以上に強い平手に、自分の腰を擦った。

でも、まぁ・・・そうだな。今は出来ることはそれしかないよな・・・。


「よしッ! 今日は上手いもの、いっぱい食い溜めするかッ!!」

そんな自分の提案に、皆、盛大に歓喜の声を上げた。


そして、じゃれ合う四人は街の人ごみの中へと消えて行った・・・。




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