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希望のフリントロック  作者: 猫丸 玉助
第3章 希望への革命
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第31話 新天地への道のり

朝、目覚めると、皆に大事な話があると伝え、宿の一室で4人、顔を見合わせていた。

誰もが、レンガの只ならぬ雰囲気を察して、口を開こうとはしなかった。


そして、レンガはそんな皆の顔を見渡してから、話し始める。


「率直に言うと、俺はこの王国を出ようかと考えているんだ。」

俺は、回りくどい話は抜きに、一気に本題を持ちかけた。

しかし、みんな別段、驚いた様子は見せなかった。そんな中、グレースがポツリと口を開いた。


「・・・何か、理由があってのことなんですよね?」

もう、隠しても仕方がないので、昨日ドミヤに話した事。ここにいる事で自分が感じていた想いを話す。そして、そのまま、亜人とヒトとの共存を目指している村がある事も説明する。


「・・・と言うことなんだ。かなり、自分勝手だとはわかっている・・・。でも、もし、俺がここを離れることになる場合。みんながどうするかを聞いてみたいんだ。」

流石にこれだけは、しっかりとして置かなければならない。これは、同情などでない。

彼女達を、ここまで連れて来たのは、他の誰でもない、自分なのだから。


俺は、そう告げると、まずはグレースを見た。

彼女は、目が合ったことで、意見を求められていると察して、ゆっくりと口を開いた。



「私は・・・前にも言いましたけど・・・。レンガ様が宜しければ、この先もお供させてもらいたいです。レンガ様が、そこへ行くと言うならば私も行きます」

グレースは、レンガの顔色を伺う様に、そう答えた。

それは、レンガに取って嬉しい反応だった反面、少し複雑な心境でもあった。


自惚れではなく、グレースがレンガに向ける強い信頼は彼にも薄々に感じていた。

頼られる・・・その事は、彼に喜びを感じさせるのと同時に、少しの重圧にもなっていた。

彼はまだ、その事には気が付いてはいない。

しかし、それは、確実に、着実に彼の心に降り積もっていた・・・。


「じゃあ、グレースは一緒に村に行くって事でいいんだな。ドミヤはどうだ?」

続いて、ベッドに座っているドミヤに尋ねる。

ドミヤは昨日の夜に、話した事で答えは出ていた。しかし、念の為、再確認をしてみる。

お互い目が合うと、昨晩の事を思いだし、思わず気恥ずかしい気持ちになる。


「あいも、その村に行くでさ。どんな所か、少し、興味もあるでさし・・・。」

ドミヤはあっさり肯定をするものの、何やら、少しモジモジしたような様子だった。


ドミヤ・・・そういう反応はよしてくれ・・・。お前のキャラじゃないだろ・・・。

そんな不気味な彼女から目を逸らすと、最後に椅子に胡座をかいているシーデに向き直る。


「あたしは・・・どうするっすかね~。」

シーデは天井に視線を外すと、尻尾を振りながら呟いた。

彼女はどうするつもりなのか、それは一番、予測が出来なかった。グレースの出す結論はある程度、予測はしていた。

それは、いくら鈍感野郎と言われ続けた自分でも、わかっていた。しかし、シーデに関しては全くわからない。

そしてそれは、普段から時折、感じていた。彼女が、何を考えているか、どう動くのか、わからない事が多々あった。

彼女とはまだ、そこまで付き合いが長いわけでは、ないからそれは普通の事なのかもしれない。

しかし・・・時折、感じていた。明るく振る舞う彼女から見え隠れする、違和感の様なものを・・・。

それは、只の自分の思い違いかもしれないが・・・。



「もし、あれなら・・・王国を離れるまで一緒に来て、禁止区域外で別れる、でもいいぞ。」

未だ、フラフラと頭を振りながら、悩んでいる彼女に、一つの助け船を出す。

元々、彼女は森で単独で生きていた様なので、安全な所まで行ってから、またその生活に戻るのもありなのだろうと考えたからだ。


「うーん。じゃあ、村までは一緒に行って、それから考えるっていうのでもいいっすか?」

すると、ぱっとこちらに向き直ると、いつもの明るい笑顔で持ち掛けてきた。

構わないぞ、と返答すると、じゃあ、それで~。と笑いながら返してくる。

彼女の出した、この自由気ままな結論は、実に彼女らしいとも思う。



しかし、これで一通り、みんなに確認する事ができた。

自分の悩みとは裏腹に、拍子抜けする程、あっさり終った事に多少の驚きはあった。

だが、これでまた、一つ自分の悩みが減った事に、そっと胸を撫で下ろす。


そんな時、ドミヤの自分を見る目に気が付く。その目は、明らかに、そら見たかと語っている。

俺は、そんな憎たらしい表情に少し、ムッとする。



暫くして、最後に皆にどうしても聞きたいことがあった為、俺は再び口を開く。


「みんなは・・・本当にここを出るってことに不満とか無いのか?・・・それなりに、快適な暮らしをしてはいたと思うんだけども・・・。」

もう一通り話も済み、個々に談笑していた、みんなの間を割って尋ねる。

今の安定した暮らしを投げ捨てる決断にしてはあまりにも簡単に進み過ぎて、どうしても腑に落ちずいたからだ。


「また、違う土地にいけば、そこにはそこの楽しみがあるはずでさよー」

「そうですね・・・。ここでの生活も楽しかったけど、また他にも楽しい事はきっと、ありますね」

「あたしは、どこだって楽しくやってく自信はあるっすから~。問題ナッシングっすッ!」


三人の何処までも前向きな姿勢に、自分がいかに臆病になっていたかを痛感する。

決して考える込む事は、悪いことではない。でも、もしかしたら・・・自分は考える事で、常に悪い方向へと考え、自分の人生をつまらないものにしていたのかもしれない・・・。

彼女達の純粋な笑顔を見ていると、そう感じる。


「レンガ様?」

いつの間にか、自嘲の笑みを浮かべていた自分に、グレースが心配そうに声を掛けてくる。


「何でもないよ・・・。じゃあ、これから昨日の男の元へ、話を聞きに行くとするか」

俺は、彼女に感謝の気持ちを伝える様に、微笑み返した。





レンガは、メモに記された宿の一室をノックした。

ここは、王国の宿場区の外れにある、小さなコテージの様な小屋。

そして、そのノック音に呼応して、中からは若い男の声が聞こえてくる。

やがて、扉が開くと、一人の青年が扉の隙間から顔を覗かせた。


「・・・どなたですか?」


それは見たことのない青年だった。

一瞬、部屋を間違えたのかと思い、謝罪しようかと思った時。白髪の男が後ろから顔を覗かせた。


「あー君か。大丈夫だ・・・。私の知り合いだ」

白髪の男は、自分の姿を確認すると、青年に言った。そして、白髪の男は再び、こちらに向き直る。


「少し話を聞きたくて・・・。今、時間は大丈夫ですか?」

「ああ・・・。大丈夫だよ。とりあえず中へ、どうぞ」


そう言うと、扉が大きく開放される。

レンガ達は、その誘いを受けて、部屋の中へと足を進める。

中は、広い部屋が一室あるだけのシンプルな部屋だった。ベッドが3つ備え付けられており、壁沿いに置かれた机には、何冊の本と書類の束が乱雑に積み上げられている。


後から来た白髪の男は、部屋の入り口で青年と何やら話をすると、青年は部屋から出て行った。

そして、部屋内には、自分達と白髪の男だけが残る。


「まぁ、その辺に適当に座ってくれ。」

レンガ達は、男に言われると、それぞれ適当な所へと腰を降ろした。

そして、全員、腰を掛けたのを確認すると、男は口を開く。


「慌しくしてすまないね。それで、話というのは、この前の返事の事でいいのかね?」

レンガは、はいと返してから、続けて言葉を繋げる。


「それで、すごく身勝手なお願いかもしれないんですが・・・解放軍への参加は、まず、その村に滞在して決めたいんですが・・・。大丈夫でしょうか?」

これは、かなり勝手な願いであった。しかし、自分はまだ、この世界の事はわからない事だらけある。まずは、自分の目で色々と確認して見たかった。

それに、軍に参加するなんて事は、今までの人生では考えられない事。おいそれと簡単に決められる訳がない。


男はそんな言葉を受けると、腕を組んで悩んだ。


「本来は・・・ヒト種はそういう受け入れはしてないんだ。どこから、王国の者が侵入するかわからないからね・・・。」

まぁ・・・それはそうだろう・・・。王国側だって、馬鹿では無い。彼等の活動については、勿論ある程度の警戒はしている筈だ。

王国側の刺客である可能性は常に付きまとうのだろう。

やはり、この提案は、少し虫が良すぎるか・・・。


「でもまぁ・・・君に関してその心配は無さそうだ。今回は特例として許そう。既に、亜人の方々も四人連れてるわけだしな」

俺は男から続いて飛び出した意外な返答に、驚きを隠せなかった。


「え・・・。いいんですか?」

思わず、間抜けな声を上げてしまう。


「君の行動や話している感じから、利益の為に動いている人間では無いと、わかるからね。」

男は、少し強持てな顔に似合わない笑顔でうんうんと頷く。

一瞬、こんな簡単でいいのか、とも思ったが、今は自分の提案が受け入れられた事を喜ぶ事にする。


「そういえば、お互い自己紹介がまだだったな。私は、この解放軍を指揮しているエギルだ。これから宜しくな」

そう言われて、まだ自己紹介すらしていなかった事を思い出す・・・。

そして、こちらもそれに習い、各々自己紹介は重ねた。

しかし、先程の仲間たちとのやり取りからして、なかなかの地位の人だとは思ったが、まさかこの人が指揮官だったのか・・・。


「それで、早速で悪いんだが、この前話した通り。我々のスケジュールに変更があってしまってな・・・。王国を出るのは、明日になってしまったんだ。かなり、急な話で申し訳ないのだが・・・。」

確か、あの時、エルフを助けた後にそんな事を言っていた気がする。


「それはどういった用、なんですか?」

「君はこの前のエルフは、養殖場から来たことは知っているな?」

俺は、エギルの問いに静かに頷く。


「我々は今回、その養殖場のエルフを解放する作戦の為、王国に来ている。それで、あの時、その周囲の地理等を視察していたんだ。そうしたら、君達が暴れている音が聞こえて来たわけなんだがね・・・。」

「何か、すみません・・・。邪魔をしてしまって・・・。」


「いやいや、いいんだよ。成り行きはどうであれ、あれで数人のエルフ達を救い出す事も出来たわけなのだから。おかげで、そのエルフ達から、更に有力な地理の情報も得る事ができたしな。」


しかし、そういう事で、彼等はあそこに居合わせたのか。それで、養殖場が警戒される前に、スケジュールを前倒しにした。そういう事か・・・。

すると、恐らくまだ、あの事件は王国側は気が付いていないという事か・・・。


「そこで、提案なんだが・・・。君達も養殖場の開放を手伝ってはくれないだろうか。本来、色々根回ししてから攻め込むつもりだったんだが、それができなくなってしまってね・・・。少しでも戦力が欲しい。そんな状況なんだ・・・。勿論、無理強いはしないが。どうだろうか・・・。」

エギルは打って変わって、真剣な眼差しで、こちらを見た。

その突然の提案に戸惑う・・・。


「とても、自分なんかが、役に立つとは思えませんが・・・。」

レンガはこの世界に来て、既に幾度となく闘いを経験して来ていた。それに、古式銃という強力な武器の恩恵も大きいが・・・。

ともあれ、闘いをするという事にも慣れて来ている自分もいる。

しかし、それは、あくまでも個人のイサカイから起きた、小さな闘いという枠の中だけの話だ。所謂、喧嘩の様なものに限定される。

統率された軍の戦闘に、素人の自分なんかがいたら、返って邪魔になってしまうだろう・・・。

それに、この前など、たった数本の矢で倒れてしまったくらいだ・・・。大きな戦場で闘えるとはとても思えない・・・。


「いやいや、君は大蛇や衛兵達に、正面から立ち向かうくらいだ。問題はないと思うがね・・・。」

そう言うと、男はハハハ、と豪快に笑って見せる。


それだけ聞くと、すごく勇敢な風にも聞こえる・・・。しかし、実際は只、何も考えていなかっただけなのだが・・・。


ともあれ、その言葉を受けて、もう一度考える。

昨日の悲痛の叫びを上げるエルフ達の姿が脳裏に浮かぶ。あのエルフ達が来た所か・・・。

それから、横に座るグレースの顔を横目に見る。彼女は、何か思い詰めた顔で、視線を落としていた。

そして、暫く、無言で考えると、やがて、決心を固めた口を開いた。


「わかりました・・・。自分で良ければ、お手伝いします。」

レンガは真剣な眼差しで、エギルを真っ直ぐに見ると、はっきりとそう言い放った。



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