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希望のフリントロック  作者: 猫丸 玉助
第2章 騒乱の王国
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第27話 もう一つの選択

男の意図の見えない問いに少し口篭った。


「どう思ってるって言われても・・・。特に、何も思ってないですが・・・。」


率直なところこれが本心だ。普通に接して、普通に一緒にいる。それに尽きる。

勿論、この男の質問の意図は、もっと別な事だろう。しかし、まだ、この男の素性がわからない以上、迂闊な事は言えない。


「そうか・・・。ところで、君は、この王国で生まれ育った、わけでは無いね?」


男の意図がわからないまま、唐突に話の路線が変更された。

更に、その言葉は自分が王国の人間では無いと、ある種の確信を持っている口ぶりだ。

この男は、一体、何を知っているというのか・・・。


「はい・・・。別のところで、生まれ育ちました。王国に来たのは、ごく最近です。」


勿論、詳しい事は伏せたまま、答える。


「なるほど・・・。やはり、そうか。」


男はその問いを、予期していたかの様に頷いた。

こいつは、まさか・・・王国勤めの人間か。ならば、差し詰めクリストの一件を知っている人間。そんなところか・・・。


「あなたは・・・何者なんですか?」


少し迷ったが、確信に踏み込んでみる。それと、同時に古式銃に手を掛ける。


「ああ、そうだったね。紹介が遅れて申し訳ない。私は、亜人種の解放、保護をするべく行動をしている者だ・・・。わけ合って、まだ素性を明かす事は出来ないんだ。下手に情報が漏れると、私のみならず、仲間も危険に晒す事になってしまうからね・・・。」


亜人の解放と保護をする者・・・。この世界にも、そんな人達がいたのか。

彼の様子は嘘を言っている様には見えない。寧ろ、こんな嘘を吐く意味なんて無い。


「君は、この王国の、亜人とヒトの関係性に疑問を感じている。そうだろう?」

「何故・・・そう思うのですか?」


男の確信付いた物言いに、質問で返す。


「君の目だ・・・。その目は、この王国の人間達と何かが違うと感じた。そして改めて、近くで見て、それは確信に変わったよ。」


目が違うか・・・。でも、それは当然の事だろう。自分は実際、こことは全く異なる世界の住人なのだから。

すると、男はこちらの返答を待たずに、更に続けた。


「君は、この世界の歴史と現状を、どのくらい知っているかね?」

「いえ・・・。あまり、知りません。」


それは、少し迂闊な返答ではあった。しかし、これはこの世界の、王国の事を知るいい機会かもしれない。

人である彼なら、ドミヤ達の知らない知識を持っている可能性が高い。


「では、少し話させて貰ってもいいかね?」

「はい。是非、お願いします」


そう言うと、男は話し始めた。この世界、この王国の事についてを。

俺は、その話に耳を傾ける。


「この王国が、出来上がったのは、今から100年程、前だ。それから、王国は発展を遂げ、今の文化と秩序を形成していったんだ」


王国が設立されるまでの歳月、それは思っていた程、昔の話では無かった。しかし、そこで、新たな疑問も沸き上がってくる。


「では・・・この王国が出来る前までは、どんな世界だったんですか?」

「この王国が出来る前までは、ヒト種と亜人種が争う紛争が長き渡って、続いていた。そして、数で圧倒的に勝るヒト種が、勝利を納めたというわけだ。その結果、生まれたのが、今の、この秩序なんだ」


なるほど・・・。そういった歴史があったのか。

ならば、この王国が強いている亜人への対応は、所謂、敗戦国に強いているものに近いというわけか。

でも、それだとしても・・・。


「今一つ、納得がいっていないという顔だね・・・。そう、だとしても、この亜人に対する徹底的な管理、扱いは少し異常だと感じているのだろう? 君は、この背景に何があると思うかね?」


そう言われてみると、一つ思い当たる事があった。それは、亜人種、彼らの様々な能力だ。

術に特化したエルフ。筋力、器用さが飛び抜けるドワーフ。驚異的な身体能力を持つ獣人。

そのどの種族もが、人間には無い、特殊な能力の所持している。

それが意味するものは・・・。


「そう、彼らに対する恐れだ・・・。この規律を作った先駆者達は、彼らと戦争をしていた。今の我々よりも、彼らの驚異的な能力の数々について熟知していた筈だ。その結果、出来上がったのが、この世界なんだ・・・。」


そう考えれば、今の王国のあり方もわからなくも無い。

自分達を守る為に、生まれた秩序。それがこれなのか・・・。


「だが、ここのところ。王国には、行き過ぎている傾向があるんだ・・・。君は術具の開発の仮定については、どこまで知っているかね?」


ドミヤから、術具の開発仮定については聞いていた。


「エルフなどの、術適正のある種族の協力を受けて、開発をする。って事しか、知りません。」


すると、男はその目を細めた。


「そうか・・・。でも、それは間違いだ。エルフ達に求めているものは協力では無い・・・。犠牲なんだ・・・。」


男ははっきりと告げた。訂正した。

術具の開発に本当に必要なものは、協力では無く。犠牲なのだと。


「ッ!! ドミヤはッ・・・。アイツは、そんな事は一言もッッ!?」

「恐らく、君の仲間は、言えなかったんだな・・・。寧ろ、言いたくなかったのかもしれない・・・。」


でも、それは当然の事なのだろう。

俺たちの中には、エルフのグレースだっているのだ。彼女がその事を知っているのかは、わからないが・・・。

少なくとも俺が、ドミヤの立場なら、話したくは無いと思う筈だ・・・。


「くッ・・・。」

「術具の数だけ、エルフが犠牲になっている・・・。そして、その数は増え続けている。それが、今のこの王国の現状なんだ。」


なんて事だ・・・。そんな非人道的な事を、王国を上げて行っているというのか・・・。

そして、その話から、もう一つの事に気が付く。それは、ヒト種が亜人種に見せる態度の理由。


それは、自分達が行っている、非人道的な行動から目を背けさせる。罪悪感に目を瞑る。そんな効果もあるのだと・・・。

対象を人間扱いしなければ、自分達と同等に見なければ、罪悪感は薄れる。そういった理由が・・・。

それこそは、人間のエゴだ。


「だが、それと同時に、問題も起き始めている・・・。ここ最近、亜人種に反乱の兆しが見え始めているのだ。」


確かに、そうなる事もまた、必然の筈だ。

押し付けすぎたゴムボールは、いつの日か跳ね返る。その締め付けが強ければ強い程に、跳ね返る力もまた、大きくなっていくのが当然だ。


「そこで、我々は、これから起こり得る、紛争を防ぐ為に活動しているという事なんだ。」


そういう事か・・・。

亜人達が完全な反旗を翻す前に、共存の道を探る、という事なのだろう。


「よくわかりました。でも、あなたは、何故、自分にワザワザ、そんな話を持ち掛けたんですか?」


それは、もはや、聞かずともわかっている事ではあった。王国に真っ向から対立している様な活動を自分に教えたのだ。それが、意味するものは、一つしか無いだろう。


「端的に言うと、私達に協力してくれないか? 君ならば、我々と思想を共に出来る筈だ。」


確かに、男の言っている事には頷ける。だが、これは、おいそれと決められる簡単な話では無い。

これは、この活動に参加するという事は、自分の世界の用語で表すならば、所謂、テロ行為に参加するという事なのだ。


「・・・。」

「まぁ、悩むのは当然の事だよ・・・。私達の行為は、結果がどうであれ、同胞に弓を引く行為に他ならない。当然、王国とは対立する事になるだろう。それが、どんな綺麗事を並べたとしてもね・・・。」


「そこで、一つ提案があるんだ。我々は、今、王国の外に一つの村を構えている。そこで、君と仲間達が生活するというのはどうだろうか? こんな事は過去に前例は無いのだが、亜人達とあそこまで、上手くやっている君ならば、信用出来る。」


それは、悪い話では無かった。

まだ、日は浅かったが、自分は、この王国の空気に参りつつあった・・・。更に、昨日の件がとどめとなっていた。


だが、それと同時に、今の生活を壊してまで、するべきかかという悩みも生まれてくる。

自分の心境はどうであれ、グレース達は今の生活を満喫している様子であった。

俺の勝手な判断で、その平穏を壊す事に、躊躇を覚える。


「少し・・・。考えさせて下さい・・・。」

「そうだね。それが、いいよ・・・。簡単な話では無いからな。よく仲間達と、相談してみてくれ。すっかり長話しになってしまったね・・・。私は仲間達に怒られない内に、退散させて貰うとするよ。」


そう言って、男はベンチから腰を上げた。


「はい。色々お話しを聞かせて貰ってありがとうございました。」

「此方こそ、老人の戯言に付き合って貰って感謝してるよ。では、私は、一足先に失礼する。あ・・・。もし、断る方向に話が行っても、我々の事は内密で頼むよ。もし、通報でもされたら、私の首が危ないからね。それとこれを・・・。」


男は少しおどけて見せると、最後に一枚の紙切れを自分に渡して、去って行った。

その紙を見てみると、そこに書かれていたのは、宿の名前と部屋の番号だった。恐らく、彼が滞在している宿なのだろう。

その紙をポケットにしまうと、満点の星が輝く夜空に目を向けた。


亜人種の解放を目指す村か・・・。



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