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希望のフリントロック  作者: 猫丸 玉助
第2章 騒乱の王国
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第25話 野生の大蛇

今日も収穫は良好だった。やはり、4人でやるのが功を奏したのか、連日いい成果を続けていた。

先程、珍しくドミヤが木陰で大人しくしていたのが、少し心配になった。しかし、今はいつも通り、シーデと騒いでいる。

只、疲れただけだったのだろうか・・・。


「今日は少し早いけど、引き上げるか?」

「そうですね。今日も、いっぱい取れましたし」

「いいっすねー! たまには、ゆっくりしたいっすよッ!」

「早く帰って、飯にするでさッ!」


互いの主張はそれぞれであったが、一応、盤上一致という事で良さそうだ。



身支度を整え、帰り道を歩いていると。


ドォーーーーン!!!

何か、大きな物が倒れる音と微かに男の怒号が聞こえて来た。


「なんだッ!?」

「レンガさんッ、あっちの方角っすッ!!」


シーデが音のした方を指し示した。

直ぐ様、音の方角へと、様子を見に行く為、駆け出した。


草原にそびえる小高い丘を越えて、身を伏せて様子を伺う。すると、そこには優に10メートルはありそうな巨大な大蛇が首を上げて鎮座していた。そこの正面に、剣を構える男と、彼を庇う様に丸腰の獣人の少年が対峙していた。


「襲われているのか・・・。」

「そうみたいっすね。あれは、かなり不味い雰囲気っすね・・・。」


俺はその光景を前に考える。

救援に入るべきか・・・。どうするべきか・・・。

すると、少し後ろにいたドミヤが口を開いた。


「・・・旦那、あれは、やめた方がいいでさ。今のうちに、こっちも逃げた方がいいでさ・・・。」


確かの、そうだ・・・。

幸い、まだ、此方には気が付いていない。彼らには悪いが、ここは安全策を取るのが最善かもしれない。

でも・・・。


俺は、イヴァの村でも事を思い出した。

自分だけが逃げた結果の惨状を・・・。また、俺は同じことを繰り返すのか・・・。


俺は、古式銃を抜いて、立ち上がった。


「旦那ッ! 本気でさか!?」

「ああ。加勢すれば、逃げる事くらいは出来るかもしれない・・・。」


「無茶でさよッ! 何でわざわざ、危険に飛び込む事をするんでさかッ?」

「前から少し引っ掛かってる事があってな・・・。単なる俺のワガママだ。お前らは、先に正門まで戻っていていい。」


そして、歩を進めようとすると、ドミヤに肩を掴まれた。


「わかったでさ・・・。あいも行くでさ。ホントに旦那は、トラブルメーカーでさよ・・・。」

「レンガ様を置いて、私だけ戻るなんて出来ません・・・。」

「まぁ、仕方ないっすね。」


皆も、そう言うと各々の武器を取り出した。俺は、皆の心遣いに心から感謝した。


「ありがとう・・・。じゃあ、行くぞッ」


そして、救援に向かうべく、丘を駆け降りていった。



「大丈夫ですかッ!」


俺は、にらみ合いをを続ける二人の脇に駆け寄る。


「ありがてぇッ! 助太刀、助かるぜ! 兄ちゃんッ!」


男がチラッと、此方に視線を向けると、そう言い放った。

幾つもの木々を倒してながら、這いずる大蛇の胴体は、果てしなく続いている。

また、とんでもない生物がいるものだ・・・。


まず、牽制で大蛇に銃口を向けると、大蛇はサッと、凄まじい速さでその上体をくねらせた。

その速さは、想像以上だ。もし、食らいついてでも来たら、反応する事も難しい程だった。

その動きに圧倒され、思わず一歩後退してしまう。


「こいつ・・・。相当に速いぞッ! 迂闊に近づいたらダメだッ!!」


その場にいる全員に、警戒を促す。


「そうだな・・・。それに、こいつ、さっきからやたら慎重で、距離を詰めて来るばかりで、逃げるに逃げられないんだ。」


男は渋い表情で、弱音を吐いた。でも、それも仕方が無いのかもしれない。こんなものを前にして、気丈に振る舞える方がどうかしている。


蛇の狩りは、やたら慎重で狙った獲物は逃がさないと聞く。

だが、あっちの世界の蛇と習性が同じならば、弱点はある。


確か、弱点はあの口だ。

蛇は舌の辺りで匂いを嗅ぎ、獲物の場所を把握している。ならば、あそこに強い匂いを付着させてしまえば、奴のセンサーを絶つ事が出来る筈。


「グレースッ!! 今日の収穫に、サンの実はあるかッ?」


サンの実とは、主に香辛料の代わり等に使われる刺激臭が強い果実の事だ。それを付着させれば、器官を麻痺させる事が出来る。


「はいッ! あります!!」

「なら、それを矢の先端に付けて、大蛇の頭を射る事は出来そうか!?」

「出来るとは思いますが・・・。この距離では、少し厳しいです・・・。」


そうなると、どうにかして、グレースが懐に入り込む為、引き付ける必要がある。だが、あの動きだ。迂闊に近づけば、一瞬で食らいつかれてしまう・・・。


もう一つ何か無いか・・・。

そう思い、大蛇のハ虫類独特の瞳を睨み付ける。火竜もそうだったが、瞳の形状は対峙した者を萎縮させる効果がある。嫌なものだ・・・。


その時、思い出した事がある。

そうだッ!! ハ虫類の目は退化しており、あまり見えていないかった筈だ。

確か、匂いの他は、自らで体温調節が出来ない蛇は、熱源を関知する能力がある。その習性から、より温度の高いものを優先的に狙う。これだッ!!


大蛇はもう、今にも飛び掛って来そうな雰囲気だ。多少、強引だが、やるしかない。


「皆、聞いてくれーー」



簡潔に説明を終えた自分に、ドミヤが溜め息を漏らした。


「また、偉い悪知恵が働くでさね。旦那は・・・。」


これは、誉められているのか、貶されているか、微妙なところだな・・・。


「でも・・・。それでは、レンガ様が・・・。」


そう、グレース言う通り、自分の役は相当に危険なものだ。しかし、各々の武器を見ても、この役をこなせるのは自分しかいないのが事実。

このまま、たたらを踏んでいても、いずれ、誰かが襲われる事は明白。ならば、今は行動に移すべき時だ。


「大丈夫だ、グレース。ドミヤは俺の援護を頼むッ!」


そうは言ったものの、大丈夫などという保証などは何処にも無かった。でも、それでグレースも納得してくれた様子だった。


「わかりました・・・。レンガ様、お気をつけて下さい・・・。」


レンガはグレースに静かに頷くと、単身、大蛇の左側へと走り出した。

そして、走りながら、大蛇の胴体目掛け、照準を絞り、引き金を引く。


ダンッッ!!

着火した火薬に押し出された弾丸は、大蛇の胴体を掠める。

そして、大蛇は勢い良く、レンガの方を向くと、古式銃の熱源を目掛けて、巨大な口を開き、飛び掛って来る。


「だァッッ!!」


大きな掛け声と共に放たれたドミヤの斧が、大蛇の反対の胴体に直撃する。しかし、その強靭な鱗は、斧を表面で弾き、傷を負った様子は無い。

そして、直ぐ様、自らを強襲したドミヤへと向き直った。


俺は、撹乱に成功した事を確認すると、間髪入れずにもう一度、引き金を引いた。


ダンッ!!! グチャッッ!!

再び、放たれた鉛の弾は、大蛇の首元に深く突き刺さった。大蛇は首を伸ばし、激痛に大きく怯んだ。


「今だッッ!!」

「了解っすッ!!」


四足歩行姿勢で地面に立っていたシーデは、グレースを背中に乗せてたまま、その合図を待っていた。

そして、シーデは返事を返すと、助走をつけると、その勢いのまま、大蛇の顔面目掛けて、高く跳躍する。

シーデの背中で、弓を構えていたグレースは、目の前に迫った大蛇の鼻に狙いを絞り、放った。


シュッッ! ビチャッ!!

グレースが放った、サンの実付きの矢は、大蛇の鼻先に当たると、弾けた。それと同時に、独特の異臭が辺りに立ち込めた。

大蛇は突然の、強烈な刺激臭に激しく顔を振り回し、大きく怯む。


「シーデッ!! おっさんッ!!」


その合図と同時に、グレースを降ろしたシーデは、先程よりも遥かに高く跳躍する。そして、最頂点で鉤爪を構えると、落下のスピードと共に大蛇の胴体を激しく切り裂いた。


更に、レンガも続けて、もう一つの古式銃の引き金を引く。


ダンッッ!!

弾丸は再び、大蛇の胴体へ突き刺さり、激痛に大蛇が更に怯む。


しかし、すぐに体勢を立て直すと、狙いをレンガに絞った。サンの実で、鼻が利かなくなった大蛇は、もはや、熱源を感じる以外事しか出来ない。

こうなってしまえば、後は波状攻撃で撃破出来るッ!!


しかし、次の瞬間、予想外の事態が起きた。


シュボッッッ!!

男の剣、術具から炎が発せられたのだ。


不味いッ!! あのおっさん、火の術具かッ!?

男の刃からは、クリストと同じ様に炎が発せられていたのだ。

だが、それに気が付いた時には、既に遅かった。更なる熱源を関知した大蛇は、男の方向へ狙いを変えた。


「おっさんッ!! 下がれッッ!!」


そう言ったのと、ほぼ同時に、獣人の少年が男の目の前に飛び出した。


「うああァァァァッッ!!」


少年の叫び声と共に、大蛇はその身体を天高く連れ去った。そして、大量に降り注ぐ鮮血が大地を紅く染めていく。


「くっそォッ!!」


そんな凄惨な光景を目にした、レンガは叫んだ。

しかし、そんなレンガとは対照的に、男は炎翔剣を手に大蛇へ突撃する。そして、その胴体に燃える刃が突き立てると、激しく全身を焼き始めた。


ジャァーーー!!

大蛇は断末魔の叫びを上げると、地面に大きく倒れ、その牙から少年は解放された。


「グレースッッ!!」

「はいッ!!」


グレースは声に応じると、獣人の少年に駆け寄り、治療を始める。俺も少年に駆け寄ると、その傷の具合を確認する。

腹と胸の辺りに、大きな穴が2つ、ポッカリと開いている。その傷口からは、まるで蛇口の様に次々と血が溢れ続けていた。

このままでは、出血死してしまうッ!


「グレースッ!! 傷は塞がらないのかッ!?」

「くッ!! まだ、わかりませんッ!」


グレースは、携帯している水を大量に使って、傷の治療にあたるが、その空洞は一向に塞がる気配が無い。

俺とグレースの足元の真っ赤な血溜まりは、更に広がっていく。


「うぅ・・・。」


すると、突然、少年が意識を取り戻した。


「今、治療してるから、がんばれッッ!!」


少年の命を引き留める為、その小さな肩に手を置く。


「うぅ・・・。旦、那様・・・は?」

「大丈夫だッ! お前のお陰で無事だッ! だから、もう少しがんばれッッ!!」


そして、俺は男を見る。すると、男はどういうつもりなのか、死に絶えた大蛇の身体を見て回っていた。

あの男は、こんな時に何をやっているんだッ!?


「そ、れなら・・・よ、かった・・・。」

「オイッッ!!」


俺は少年に叫んだが、もう何の返答も帰って来なかった。

そして、彼はその動きを完全に止めていた・・・。



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